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第十五章 囮作戦

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 グラフ大森林
グラフ王国北に位置する森林地帯、グラフ領内で最も難易度が高く
この森林のボスを倒せば駆け出しから熟練者と認められる   適正Lv7-9
                                 グラフ幻想譚
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 今回グレイさんが受けたクエストは、フォレストビー10匹、フォレストウッド1匹の討伐である
フォレストビーは適正Lv7、攻撃力は低いが麻痺を持ち、フォレストウッドの中に巣をつくっている
フォレストウッドは適正レベル9、速度は遅いが高い耐久力を持つ

「軽く受けたは良いけど・・・適正Lvに届いてないモンスターの討伐か・・・大丈夫かな」
「大丈夫だって!俺なんかLv13だぜ?持前のHPの高さで敵の攻撃を全部引き受けるからその間にぱぱっと魔法で倒してくれよ!」
「Lv13って・・・それと魔法じゃなくて精霊術なので」
「あっはっは、そうだったそうだった」

逆に不安になるくらい豪快に笑っているイケメン
だが確かにLv13というのは大きい
ここはこのイケメンを頼るとしよう

雑談をしながら道無き道を歩いていると緑色の狼が前に立ちふさがる
緑の毛皮に大量の苔が付いており、目を黄色く光らせこちらを見ている
狼型のモンスター、フォレストウルフ

隠密と自然調和で一時的に姿を消してから精霊術で回りを見る、風精霊少量、地精霊中量、木属性大量
戦力の確認を行っているとグレイさんが髪をたなびかせながら笑顔で狼の前に躍り出る

「どうやら!俺の出番のようだな!」

そう叫びながらフォレストウルフに突進していった
フォレストウルフは難なく避けてグレイさんの足に噛みつく
グレイさんはそんな事全く気にせず即座にフォレストウルフに組み付く、その間噛まれ続けているのだが

「すごい・・・HP全然減ってない」

さすがLv13、これならしばらく大丈夫そうだ
一人と一匹の戦いに隠密で近づき見切りでフォレストウルフの弱点を探す
どうやらこのフォレストウルフは首が弱点らしい
少し距離とってから杖を構える、流石にノーダメージとはいかないようでグレイさんのHPゲージが少し減っている

「いきますよ!グレイさん!離れてください!」

グレイさんが離れようとするがフォレストウルフが離れない、グレイさんは良い笑顔で叫ぶ

「構わん!俺事撃てー!」
「っく・・・ごめんなさい!」

地精霊で槍状の石を4本作り風精霊で射出、名付けてロックランス!
フォレストウルフに3本、グレイさんに1本当たる
フォレストウルフはキャインとHPの半分が削れ、グレイさんはほぼノーダメージ

「これなら・・・いけそうだ」

大ダメージを与えた事によりフォレストウルフがこちらに駆け出してくる
ブルーラットとはくらべものにならない変則移動で腕を噛みにくる
激痛と共に㏋が半分減るが即座に自然調和で姿を消す

フォレストウルフが辺りを見回している所をグレイさんが組み付く
二回以上の攻撃は無理だな・・・しかしこのダメージをほぼノーダメージとは・・・さすが高Lv冒険者だ
グレイが組み付く、俺が攻撃する
このコンボなら大丈夫そうだ

距離を取り杖を構える、瞬間フォレストウルフがこちらに駆け出す
すぐさま自然調和で消して距離をとる・・・が・・・

「やばい、こっちにヘイトが固定されてる」

姿を現せば攻撃が飛んでくるので攻撃が間に合わない
グレイさんにPTチャットでヘイトを稼いでもらうようにお願いする

[すみません!こっちにヘイトが固定されて動けません!ヘイト稼いでください!]
[いや、俺そんなスキル持ってないし無理かな]

・・・ん?

[じゃあそいつ倒して下さい!]
[いや、耐久力には自信あるけど他のステータスは無いから削れないかな!]

・・・あれ?

自然調和で㏋が回復した俺は捨て身でロックランスを放つ
フォレストウルフに二発命中するが削り切れない
そのまま押し倒されるような形で料理人の包丁を取り出しフォレストウルフの牙が首筋に噛み付く前に首を斬りつけHPを削りきる
㏋ゲージが真っ白、尻餅をついた状態の俺にグレイさんが近づいてくる

「いやぁなかなかの強敵だったね!でも余裕だね!」
「グレイさん・・・質問なんですがステータス教えてもらって良いですか?」
「ああ構わないよ、㏋が400で力が1防御が20で俊敏1に運が1だよ」

なるほど木偶の坊か、挙句攻撃スキルもヘイト稼ぎもできない、なるほどなるほど

「おいグレイ、俺はここで帰るから後は一人で頑張れよ」

森の出口に向かって歩き出す

「ちょちょちょ!ここまで来てそれはないよ!っていうか口調が変わってない?」
「最初からこんなもんだよ、後はがんばれ!」

しかし今回ばかりは運が悪かった
フォレストウッドが目の前に立ちふさがった
うわーお・・・

「ふっふっふ!わざわざやられにくるとは!俺が注意を引き付けるから頼むぜ相棒!」

それができたら苦労はしないんだよ!
フォレストウッドがこちらに気づき、フォレストウッドの中にいたフォレストビーが大量に出てくる
戦闘状態ではPTを解散できないゲームの仕様で逃げる事も出来ない

俺は隠密を使用して木精霊でできるだけ頑丈な蔓を作りながらジローを召喚してグレイさんの後ろに立つ
ジローは我が意を得たりとグレイを押し倒し背中に担ぐ
急な出来事で目を白黒しているグレイをジローと蔓で固定する
グレイの大きさはジローの3倍はある、万が一にもジローに攻撃は当たらないだろう

「えっと・・・アズさん?何をしているんだい?」
「何って、この戦況を打開する作戦だよ、ジロー!頼むよ!」

ジローは囮のスキルを発動してグレイを引きずりながら駆け出す
そんなジローに向かって大量のフォレストビーが押し寄せ攻撃を加える・・・背中の肉壁に向かって
距離を取りながらジローに攻撃が当たらず、かつ広範囲にダメージを与えれる技を考える
風精霊で竜巻を作り木精霊で棘のついた花を大量に投入して・・・ハリケーンとバラもどきでバリケーンといった所か
思いついた精霊術をイメージ通りに発射、予想通りの効果に加え継続ダメージも入っている

「あいたたたた!ちょ!?アズさん!?蜂の攻撃も痛いんですけど魔法も痛いんですが!?」

一瞬こちらにフォレストビーがヘイトを向けたが
頼れるジローが囮を発動、肉壁さんを大量の針が襲う

次はバリケーンに小型バーナーの火精霊を追加
第二射撃、発射!

バリケーンが収まった頃には目標のフォレストビー10匹とフォレストウッド討伐完了
ついでにジローに背負われたまま刺し傷だらけの肉壁さん

「さすが肉か・・・グレイ、これだけダメージを受けて㏋がまだ半分以上あるな」
「アズさん?今なんて言いかけ・・・」
「グレイが大活躍して目標の一つをクリアしましたね」
「はっはっは!そうだな!俺にかかれば朝飯前だって!」

知力も1なのだろう
ジローは大丈夫だったかな?ジローに視線を送る

「あれ?なんかジローでかくなった?」

当初グレイの3分の1しかなかったジローが今やグレイと同じぐらいのサイズになっている

<Lv7 (耐久値80%)
<HP56 力12 防御6 俊敏12 運1 
<スキル:囮、サポート、運搬

<運搬>
<物を運ぶ時にスタミナが減らなくなり、攻撃を受けても運搬物を落とさない
<取得条件:自分よりサイズが大きいものを長時間運ぶ

Lvが一定値に上がったからか?サイズはなぜ大きくなったがわからないがこれなら人を乗せたまま走れそうだ!

ちょうどフォレストウルフが湧いてるし!

ジローが任せろと言わんばかりにグレイを背中に乗せる、グレイが逃げれ・・・落ちないようしっかり蔓で固定

「じゃあ肉壁さん!囮任せました!」
「ん?アズさん!?今聞き捨てならない言葉が!」

グレイが言葉を言い終える前にジローが走り出す

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