現実逃避から始まるメンヘラ狂騒曲

片山樹

9

 夏休み。
夜、女の子二人が俺の家に居る。おまけに親は仕事で帰ってこないというこんな人生に一度しかない様(現実には絶対にありえない)なラッキーチャンスを無駄にはできない。俺はそう思っていた。

 だけど状況は最悪だった。
女の子二人は今日初めて会ったばかりだというのにもう火花をバチバチと鳴らしているのだ。
だから俺はその二人の間に入って、落ち着いて落ち着いてという自己暗示に似た注意をするハメになっているのだ。しかし二人は「悠斗には関係ない!」「悠斗君には関係ありませんわ!」と何故か俺が怒られる。
もう、本当にどうしたらいいんだか。
だがどうしても案が浮かばない俺は「飲み物持ってきますね」と言って立ち上がり、冷蔵庫を開ける。
そしてコーラを取り出す。グラスに氷を入れ、コーラを注ぎ込む。氷のカランカランという音色を鳴らしながら、お二人さんにグラスを差し出す。
 美穂は遠慮というものを知らないらしく、怒りに身を任せて一杯ググっと飲み干した。
そして先輩にドヤ顔を見せる。
これはコーラを一気飲みできないだろう、バーカバーカという意味が予想できる。
勿論、負けず嫌いの先輩は美穂の手中にハマり、一気飲みしようとグラスに口をつける。
 だが全然量は減らなかった。
それに炭酸が苦手なのか、ビクッと身体を反応させている。可愛らしい。
 美穂が俺を見て睨んでいる。

「何! ニヤニヤしてんのよ!」
 美穂に肩を殴られた。
いつから暴力系女子になってしまったのだろうか。
ファミレスの時は優しかったのに。
先輩が現れてから機嫌が悪い。
それに先輩も機嫌が悪そうだ。

「あ、あのさ。先輩は良い人だよ。美穂」
 美穂に訴えかける様に言うが、美穂は更に怒った。

「何それ? どんな関係なの?」
 明らかに声がいつもと違い怒っているのがすぐに分かる。

「ただの」
先輩だよ。俺はそう言おうと思っていた。
だが、先輩はそうはさせなかった。

「将来を約束した仲です」と俺より先に言い切ったのだ。
 それを聞いた瞬間、美穂の顔は一気に青ざめていた。
そして先輩の顔は勝ち誇った顔になった。

 もう本当にどうすんだよ、これ。

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コメント

  • 西東 北南(さいとう ぼくなん)

    続き待ってます

    1
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