現実逃避から始まるメンヘラ狂騒曲

片山樹

6

――ギィーコ。ギィーコ。ギィーコ。ギィーコ。
チェーンが錆びていたのか奇っ怪な音が鳴る。
そんな錆び錆びの自転車に二人乗り。それも若い男女がというのは恥ずかしい。だけど美穂は後ろで「やっほおぉぉー!」とか「はやぁーい!はやぁーいー!」とか言っているし。
全然恥ずかしくないみたいだ。
良い意味で度胸があると言うかもしれないが悪い意味では世間知らずである。
それに忘れてはならないのは美穂はニートであるということだ。基本的にニートとは学生機関や会社に所属してない者だった気がする。ベットで二人抱きしめあった時に高校を中退したとか言っていたから家に引きこもっている彼女は立派なニートだ。ってか、義務教育の時は学校に行っていたのだろうか。謎である。
それにしても……彼女は何故学校を辞めたのか。
何故あんな可愛い少女が学校を辞めなければならなかったのか。それほど深刻な悩み――いじめ、とか?
確かに可愛ければ女子から非難されるのは当然といっちゃ当然で(当然にしてはならないが世の中はそんな風になっている)彼女はそれに悩まされていた。
そういうことにしとこう。
それにしてもスピードがでないな。
やはりこの町が平坦な道が多いからか。
おまけに二人乗りなので更に出ないし。
どこかに下り坂でもあれば一気に加速すると思うんだけどな。

「ねぇー悠斗!? ゆうと!? ユウト!?」

「ん? どうした? ミホ?」
 後ろから聞こえてきた声に返事をする。

「わたし、初めて自転車に乗ったよぉ〜!」

美穂が自転車に乗れたとは漕いでいないので言っていいのか微妙なラインだけど今回はよしとしようと脳内会議で決めてから彼女に訊ねた。

「へぇ〜そっか。自転車初めてなのか。意外だな。便利だろ? 自転車?」

「すっごく、便利! それに悠斗の後ろに抱きついていられるから物凄く好きィー!」
 美穂が俺を抱きしめる力が強くなり、身体と身体がくっつく。勿論、俺の背中には彼女の少しだけふっくらとした二つの果実を感じることができた。
本当にちょっとだけだったけどね。

 自転車を走らせて30分――ファミレスに辿り着くことができた。普段身体を動かしていない俺にとっての運動はキツく、少し息が切れる。
店内に入り、店員の喫煙か禁煙かという質問に禁煙と答え、ドリンクバーに近い席を選ぶ。

「よしっ、何食べよっかなぁ〜」
 美穂が嬉しそうにメニュー表とにらめっこ。
俺はその間に財布とにらめっこ。
今回の出費を考えると全て俺の奢りだよな。
まぁ、後から親に請求するから別にいいけどさ。

「ねぇ、ゆうと。お子様ランチって夜に食べたとしてもお子様ランチになるの?」

 素朴な質問が来やがった。

「じゃあー逆に聞くけど夜に食べたら、お子様ディナーになると思ってるのか?」

「う、うん……だけど普通言わないよねって思って。だからなんでかなぁ〜と気になっちゃってさ」

「なるほどな。じゃあ、教えてやるよ。ランチってのは昼食のことを意味しているだけじゃないんだ。実は一皿の盛り合わせ定食のことも意味している。つまり、お子様ランチのランチって言葉は」

「盛り合わせ定食の方を意味しているわけだね!」

 最後まで言わせてほしかった。

「そうだ。それでどれにするか決めたのか?」

「う〜ん。まだ悩み中」
 女の子というのは選ぶのに時間がかかってしまうものなのだろうか。俺は来る前から食べる物を決めていたというのに。(別に怒っているわけではありません)

「悠斗は何にするの?」

「良くぞ聞いてくれたな、美穂! 俺はかつとじ定食だ。これは何よりコスパ。値段の割に多さがあり、カツと卵の絶妙なコラボレーションが楽しめる。それにここで言っておきたいのが――」

「う〜ん。じゃあ、わたしはハンバーグ定食で」

 そのまま美穂が店員を呼ぶボタンを押した。
最後まで人の話は聞いてもらいたいものだ。

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