現実逃避から始まるメンヘラ狂騒曲

片山樹

4

「あ、あのさ……そろそろ離して貰っていいかな?」

「ん? 嫌だよ。ゆうとぉ、離さないから」
 そう言って俺の腕を掴む力が強まった。
『愛してる』を連呼された後からずっと離してくれない。もう20分ぐらいこの状況が続いている。

「あ、あのさ? ゲームでもしない?」
 よしっ、ナイスだ。俺!

「ん? ゲーム? ゲームなんかよりも悠斗がいい!」

「いやぁ〜ゲームで一緒に遊ぼうと言ってるわけ。勿論、俺も一緒に」

「悠斗は私を見ててくれるの?」
 ん? 俺も一緒に横で私を見ててくれるの?
なんかおかしい気もするがどうでもいい。

「おお、そうだ」

「それならいいよ! ゲームしよ!」
 美穂が嬉しそうに飛び跳ねる。
子供
かよ。本当に顔も幼いし。

「へいへい……じゃあ、行こっか」

 あれ、美穂が動かない。
俺は足を動かしているのに。
美穂の足は動いてない。
後ろを振り向き、尋ねる。

「おい……どうしたんだよ? さっきまで喜んでただろ?」

「おぉ……」

「おぉ?」

「お、おおぉ〜」

「だからどういうわけだよ……」

「おんぶして欲しい……」

 小動物の様な可愛らしいお目々が俺の目を捉えた。
そしてにっこりと微笑む。

「い、嫌だ」

「泣くよ? そしておばさんに言うから、悠斗に酷い目にあったって」

「そ、それだけは勘弁してください!」

「はい、それならどうするの?」

「おんぶさせて下さい。お願いします。美穂様」

「分かればよろしい、へへっ〜」
 彼女がクスッと笑い始め、それに釣られ俺も笑う。
二人で一緒に笑った後、俺の部屋まで美穂をおんぶしようとしたが、途中で恥ずかしくなったのか自分で歩いて部屋まで行った。途中でちょこちょこ後ろを振り返る仕草が小さい子供の様で可愛かった。
 部屋のベッドに座り、ゲームを起動する――

✢✢✢―――――――✢✢✢
 唇が共に重なり合う。初めての感覚だった。
柔らかく、そして熱い。
二人の唾液がお互いの口で絡み合う。
もう止まらなかった。

「ねぇー、ゆうとぉ。私ね、愛の汁がずっと出るよ。もう止められないよぉ」
 確かに俺の腹部には甘い蜜が流れてきている。
生温かった。必死に束縛された手を動かす。
しかし何もできない。それに抵抗した所で足を縛られているので脱出はできないのが関の山だ。
スマホも自分の近くに無いため、誰かに連絡する手段も無いし助けに来てくれる人もいない。
警察に電話をかけようとも子供のイタズラだろうとしか思われないだろう。それに第一彼女の監視から逃れる事は決してないだろう。

 ベッドがギィギィと音を立つ。

「ねぇー、ゆうとぉ。もう入れてもいいよね?」
 彼女が俺のズボンを脱がし始める。


✢✢✢―――――――✢✢✢

「あぁーゲーム楽しかったねぇー。悠斗!」
 ゲームのコントーローラーを片手に持ち、背伸びをする美穂。俺はずっと美穂のゲーム捌きを見ることもできず、ずっと美穂を見ていた。見たくて見ていた訳じゃなく、無理矢理見せられていたのだ。
だが別に悪い気持ちにはならなかった。
美穂の一個一個の表情の変わり様は面白かったし、可愛かった。だから、よしとしよう。
そう思いながらゲームとテレビの電源を落とす。

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