異世界召喚!?ゲーム気分で目指すはスローライフ~加減知らずと幼馴染の異世界生活~

梅谷シウア

6-7同盟とソルバニア連合

「ユウくん起きて」
「パパ起きて」
 ユウトは体を揺さぶられ、2人の声で目を覚ます。
「おはよう、マイカ。リーティス。今何時だ?」
「もう8時だよ。おはよう、ユウくん」
「パパ、おはよーございます」
 2人に起こされたユウトは、顔を洗うと用意された朝食を食べきる。
「2人とも荷物は俺に渡してくれ。無限倉庫ストレージボックスに入れておくから」
 先日買った服に身を包んだマイカとリーティスは、ユウトに荷物を渡すと早く行こうとせかしながら、ユウトを引っ張り外に出る。
「じゃあ、行ってくるわ」
「行ってきまーす」
「行ってくるね~」
「行ってらっしゃいませ。無事帰ってきてくださいよ」
 朝早いというのに、見送ってくれたニカにユウトは留守を任せると、先を行く2人を追いかけた。
 ユウトは何時だかの証明書を更新し、王妃になったミレナのサインの入った証明書を使い、ソルバニア連合にやって来た。
 マイカとリーティスは、ユウトといったん別れ街の散策を始めた。
「さて、一仕事頑張りますか」
 ユウトはゆっくりと息を吐き呼吸を整えると、連合本部の扉を開けた。
「おや、ユウトではないか。どうしたんだ?」
「実はですね——」
 ユウトは時間をかけてゆっくりと事の顛末を話し、同盟の話を切り出す。
「それでですね、同盟を組みたいなと思いまして」
「ふむ、同盟とな。メルクス王国の使者としてここに来たんだな」
「ええ、その通りです」
 ソルバニア連合の代表は深く考え込む。そこでユウトはメルクス王国の政策について少しばかりの話を始める。
「メルクス王国では、奴隷制度の撤廃や、亜人差別の処罰などを進め、ミレナ・メルクス王妃の指導の下、亜人、人族共同商業国を目指していく方針でございます。」
 なるほど、と1つ返事をした連合代表は秘書を呼び寄せ種族代表を集めるように言う。
「交渉は受けてくれるんですね。助かります」
「言ってくが、ほかの種族代表はちっとばかし厄介だぞ」
「まあ、考えがないわけでもないので」
 ユウトは交渉のテーブルにつけたことに安堵の息を漏らす。するとものすごい勢いでドアが開けられる。ユウトは他の種族の代表が来たのかと、反射的に背筋を伸ばしたが、ドアを開け放ったのはユウトの予想もしない人物だった。
「お久し振りですユウトさん。元気にしてましたか?」
「レラ、今日は大事な交渉だからここに来るなとあれほど言ったのに」
 ユウトは助けた時とは、イメージの全く違う登場をしたレラに一瞬目を丸くしたが、すぐに正気に戻る。
「お久し振りですね。元気にしてたと思いますよ。何度かぶっ倒れて何日も目を覚まさなかったこともあったらしいですが。そちらこそ元気にしていましたか?」
「ええ。元気に過ごしてましたよ。けど、ユウトさんは本当に大丈夫なんですか?」
 ユウトは、災厄竜の件や王城での件を思い出しながら言う。
「まあ、幼馴染を庇って腕が飛んだり、竜に侵食されかけたりしただけですよ。その幼馴染ともうまくいってますし、問題もなければ元気ですよ」
 ユウトの言葉に連合代表もレラも言葉を失いかけた。
「そんなに大変だったのかい? 災厄竜の討伐は。だとしたら申し訳ないんだが」
「いえいえ、災厄竜で腕を飛ばしたのは自爆みたいなもんで、竜化しかけたのも、悪魔と戦ってる時に義手に呑まれかけただけですので心配なさらずに」
 その場にいたユウト以外の全員、盗み聞きをしていた他の種族の代表たちもまるで石になったかのように動かなくなってしまった。
「えっ、何か変なことでも言いましたか?」
 そういえば、女神があんまり人に言うなって言ってたっけ。こういうことになるからなのか。まあ、これで同盟が上手くいけばいっか。
 それから正気に戻った、代表とレラ、外にいた種族代表はユウトとともに、席に着き同盟の話を聞く。
「我々メルクス王国は、種族差別のない商業国を目指しているのです。その手始めとして、多くの種族と関係を築き上げたソルバニア連合さんと同盟を結べたらと思いまして。もちろん同盟として商品取り引きも他国よりやすくしますよ。どうでしょうか?」
 ユウトの言葉なんて頭に入らないほど、大きな衝撃を受けていたソルバニア連合の各代表はただ頷くしかできなかった。同盟を断ればウルヴァニラ王国と同じ末路を辿る気がしたからだ。もちろんユウトは実力行使をする気なんて微塵もないのだが。
 ユウトは予想外なまでに早く終わった同盟交渉のお陰で時間が出来たが、マイカとリーティスがどこにいるのか探す気も湧かず町を散策することにした。助けてもらった時のお礼がしたいと言ってやまないレラとともに。
「どこに行くのさ?」
「いいから黙ってついてきてください」
「とは言われてもねぇ」
「穴場のカフェですよ。美味しいケーキが出てくる」
 ユウトはそうかと頷くと、味次第では2人を連れて来ようかなんて考えながら、レラの後ろをついていく。
 それから歩くこと十数分、ようやく着いたカフェはおしゃれな作りで人もちらほら入っていた。
「ユウくん!?」
「パパだー」
「よっ、よお2人とも」
「ユウトさんは娘さんがいたのですね」
「ユウくん? その女の子は誰?」
 ユウトはレラを紹介し、マイカの誤解を解き、レラにマイカとリーティスを紹介した。マイカはユウトとレラが知り合った経緯を聞いて溜め息をつき、レラはマイカがユウトの幼馴染だと知ると、ユウトの話していたことをマイカから聞いていた。初めておとぎ話を聞く子供のような様子で。

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