異世界召喚!?ゲーム気分で目指すはスローライフ~加減知らずと幼馴染の異世界生活~

梅谷シウア

6-3面倒事の予感

 ユウトのプロポーズから早一週間、ユウトたちは屋敷でくつろいでいた。
「ご主人、だらだらしすぎ。」
「いいじゃん、ちょっとくらい。ここ一ヶ月まともに休めてなかったんだし。ミーシャが休めないからって俺に当たるなよ。」
「そこまでわかってるなら、ご主人権限で休み増やしてよ。」
 ソファーで伸び切っているユウトをつつきながら、ミーシャはうだうだ文句を言う。
「こら、ミーシャ。休みは振り当ててるのに何言ってるんですか。」
「だってさー、休んでる人見てると休みたくなるじゃん。」
 ユウトは、ソファーで寝ころびながら魔導書を読んだり、キッチンにいるマイカを眺めたりしてここ四、五日過ごしてる。
「まあ分らんでもないけど、休んでるわけじゃないぞ。苦手な料理を頑張るマイカを見て癒されながら、調べ物をしてるんだよ。」
 ふーん、なるほど。休んでるわけじゃないんだ。とミーシャは一瞬納得したように頷くが、少し遅れてただ休んでるだけだと気づく。
「って結局休んでるじゃん。のろけまで混ぜて。」
「ミーシャなら引っかかると思ったんだけどな。」
 というか一瞬引っかかってたし。
「楽しそうだね~。はい、ユウくん味見してみて、あ~ん。」
 マイカはキッチンで作っていたグラタンパイを切ってすこしだけ持ってくる。
「うん、うまいな。でもなんで料理なんて始めたんだ?」
「まあ、私の覚悟だね~。ユウくんのお嫁さんに、なるのに料理の一つもできないのは嫌だし。」
 照れながら、そうか。と言うユウトと、喜んで続きを食べさせようとするマイカ、二人のイチャイチャに耐えられなくなってミーシャは仕事に戻った。
 それからユウトは、女神エミルに教会に来るように言われていたのを思い出し、教会に向かう。
 教会に行くまでにユウトは、かなりの人の目を集めていた。ユウトが王城を荒らしまわったことは、スぺレイヤーの領民は知っていて、領主を助けた英雄だと思われている。
「こんにちは。礼拝? に来ました。」
「えっ、あの、ユウトさんですよね。こんなちっぽけな教会なんかに来たんですか。いえ、自由なんですけどなぜこんな場所に。」
 そんなことを言われても、近場にはここしかないからな。
「近いですし、こういうところでゆっくり礼拝する方が自分の身にあってますから。」
「そっ、そうですか。ではごゆっくり。」
 教会のシスターに挨拶をしたユウトは礼拝堂に向かう。礼拝堂に着いたユウトは呼びつけられたとはいえ、持ってきた供え物を嫌な顔をしながら供える。すると、意識は真っ白な空間にあった。
「やぁ、久しぶりだね。今日はお願いがあって来てもらったんだよ。」
 呼びつけたのにも関わらず、いつものように女神エミルは重力を無視して空中に座り、供え物を食べながら話を切り出す。
「お願いですか? 面倒なのはやめてくださいよ。」
 女神エミルは冷や汗を書きながら要件を告げる。
「実は僕の管轄の天使が地上に行っちゃってね、見つけたら報告してくれないかな。」
「分かりました。けど、悪魔の次は天使ですか。」
「なっ、なんのことかな。僕にはさっぱりだよ。」
 ユウトは、信じる様子も見せずに適当に返す。女神であるエミルが悪魔を逃がしてしまったのを、ユウトはメニューの機能の一つヘルプで知っていたからだ。
「君の力はずるいな。悪魔が作った疑似恩恵とは思えないよ。」
「確かに便利ですよ。」
「まあ、今回は君たちに害はないと思うから頼むよ。」
 白い光が目を覆い、ユウトの意識は教会に戻って来た。
「絶対面倒事になるだろうな。天界から逃げ出した天使探しって。」
 ユウトはシスターに用が済んだことを告げ、少ないけどと、一ヶ月は豪勢な生活が出来るであろう金額を寄付する。シスターは受け取ることを拒んだが、ユウトは無理やり渡して屋敷に戻っていった。
「お帰り~ユウくん。なんか疲れてるけど大丈夫?」
「ただいま、マイカ。疲れてるのは女神に面倒事を頼まれたから。」
 ユウトはリビングに戻ると溜め息をつき、頼まれたことを大まかに説明する。
「やっぱりあの女神様好きになれないな~。」
「なんでだ?ろくでもない女神だとは思うけど。」
「なんでだろ~ね~。」
「まあいいや。見つけたら教えてくれ。天使っていうより妖精みたいな感じらしい。」
 ユウトはいまいち想像できない、天使の姿を何とか伝えようとする。
「なにそれ、すっごく可愛いのかな~。」
「分からないな。妖精すらあんまり想像できないし。」
「一応探してはみるよ。どんな天使なのか気になるし。」
「そうか、助かる。」
 こうして女神エミルから逃げ出した天使探しが始まることになった。

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