魔術がない世界で魔術を使って世界最強

海月13

エルネからの旅立ち

朝日が差し込みその眩しさに弥一は目を覚ます。薄ぼんやりとした視界の中右腕に暖かく柔らかい感触を感じ、横を向く。

そこには弥一と同じく生まれたままの姿で弥一の腕を抱き枕にして眠りにつくセナがいた。

可愛い寝顔で規則正しい寝息をしながら眠りにつくセナを見ていると自然と視線がその柔らかな唇に吸い寄せられる。

弥一はそのままセナを抱き寄せその唇に軽いキスを落とす。するとその感触で目を覚ましたのかセナも目を開ける。

目の前にある弥一の顔と唇に残る感触で状況を確認したセナは眠たげに発する。

「・・・やり直し」

「第一声がそれか」

そんなことを言いつつももう一度セナにキスをする。今度は少し長めのキスをして離すと、セナが逃すまいと首に手を回し抱き締めてくる。

「朝からこれ以上やると歯止めが効かなくなるんだが」

「じゃあもう一回キスして。そうしたら起きれるから」

「本当にセナはキスが好きだな」

「大好き、キスならいつでもできて弥一を感じれるから。それにそれ以上だと出来る時間は限られるし」

「そんな理由か。まぁ俺もキスは大好きだがな」

もう一度リクエストにお答えしてキスをする。そして二人は朝の挨拶をする。

「おはよう弥一」

「おはようセナ」

朝からイチャイチャの二人はそうして見つめ合う。これが二人の朝だ。

「・・・ねぇ弥一もう少しだけ、キス、ダメ?」

「可愛くても、これ以上してたらユノが起きてくるぞ」

「う、そうだね」

少しだけ寂しそうな表情をするセナ。そんなセナを見て、しょうがないな、と思いながらセナの頭を引き寄せ耳元で囁く。

「・・・続きは夜にたっぷり、な?」

「・・・!!」

そんな言葉にセナは顔を赤く染め恥ずかしくなるとシーツを引き寄せ顔を埋める。そんな朝から二人が激甘な世界を作っていると、廊下から足音が聞こえ、次の瞬間にはドアが開く。

「・・・パパ、ママおはよ〜」

目をショボショボさせながら手には枕を持って現れたユノはそのままフラフラとした足取りでベットまで来ると二人に倒れこむ。

「おはようユノ」

「おはようユノちゃん」

二人はそのままユノを抱きしめた後おでこにキスをする。眠たげにしぼめられた目も徐々にはっきりと開いていき、完全に意識が起きるとユノが明るい笑顔で抱きついてくる。そしてそんな明るい笑顔でーーーー

「パパとママ、どうして裸なの?」

触れてはいけないところをドついてくる。

不意打ちの右ストレートは見事二人にクリーンヒットし、思わず咳き込む。

ユノはそんな二人を見て頭に"?"を浮かべて、二人の答えを待つ。

「ユ、ユノ、それは大人の事情ってヤツだ、ユノは当分知らなくていいこと・・・いや一生関わっちゃいけないことなんだ」

「でもユノは早くこどもじゃなくておとなになりたい」

「そうなれば俺はその相手に【約束された運命エクスカリバー】をぶちこまなければならなくな」

真面目な表情で阿呆な事を言う弥一。娘に近ずく害虫は容赦なく駆除だあ!、とばかりの勢いだ。

ユノは将来相当な美人になる事は間違いない。いずれは恋人や結婚相手が出来るだろう、とそんな事を思うと寂しくなると同時にその相手に【約束された運命エクスカリバー】を放つか真剣に考えなければならない。

弥一が真剣に阿呆な事を考える。

そんな弥一の心情を察してかセナは少しジト目で見た後、せっせと服を着ていく。着替え終わった時に弥一もようやく現実世界に戻って来て着替える。

着替えが終った後ユノの着替えを取りに行こうとした瞬間、ドアがノックされエルがユノの着替えを持ってきた。

完璧なタイミングでの訪問にさすがメイド、と思う。

それから四人はビルファから連絡があったため冒険者組合に向かう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

冒険者組合に到着すると顔馴染みとなった受付嬢にいつも通りビルファの執務室に案内された。

「弥一君、今日呼び出したのはある情報が入ってきたからなんだ」

「てことはそれは俺に関係することなんですか?」

「ああ、君にとっていい知らせだろう。実は今勇者一同がここから二つ目の【都市メイカイ】にいる事がわかったんだ」

「!!本当ですか!?」

【都市メイカイ】は大きな港がある街で様々な国から多くの物がやってくる。そしてその近くには多くの大小様々な洞窟や迷宮が存在しているため冒険者や探検家なども集まり街の景気などはここエルネより大きい。

「ああ、勇者一同は近くの場所で実践訓練のため二ヶ月ほど停泊しているらしい。弥一君たちの速度なら今から出発しても十分間に合うだろう」

「ええ、ありがとうございます!」

ビルファの報せに弥一は喜ぶ。王都までまだ距離がありクラスメイトに会うのはまだ後かと思っていたのでこの報せは嬉しい。

「そうなるとすぐ出るのかい?」

「明日ですかね。魔術回路の方も少しですけど治りましたし、ユノの方も安定しましたから大丈夫ですし。そろそろ旅立とうと思ってたので丁度いいですから」

「そうかい、寂しくなるねえ」

今日中に食糧や必要品を購入すれば明日には出発出来るだろう、装備品なんかも弥一がいれば作れるのですぐにでも立つ事は出来る。

そんな弥一たちを寂しくなる、と言うビルファはそれと同時に華やかな表情でもあった。弥一たちの事を思っていてくれるのだろう。

「それじゃあクライトさん俺たちは明日の準備があるのでこの辺で」

「旅の健闘を祈るよ」

ビルファと握手を交わした後、弥一たちは冒険者組合を離れ必要品の買い出しに向かう。

「エル買い出しはセナとユノに任せて少し手伝ってくれないか?へカートの整備をしたいんだがサポートがいると助かる。セナとユノはいいか?」

「私はいいよ」
「ユノも!」

「分かりました、マスターのサポート任せてください」

「助かる。それじゃあセナ、ユノまた後でな」

「分かった、それじゃあいってくるね」

「行ってきます!」

そうしてセナとユノは街の中心街の方へ、弥一とエルはへカートの整備をするため施設へ転移した。

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朝日が出始める時間帯に弥一たちとビルファは城門前に来ていた。へカートにリュックを積み準備が完了したところでビルファが声をかけてくる。

「たった一か月くらいだったけど寂しく感じるね」

「本当にいろいろとお世話になりました。ありがとうございました」

「礼には及ばないよ、こちらも随分と助けられたしね。また機会があったらいつでもココへ寄ってくれ」

「ええ、わかりました。また機会があったら寄らせてもらいます」

そういって二人は最後の堅い握手を交わすと弥一は運転席に乗り込む。助手席にはエルが乗り、後部座席にはセナとユノだ。ユノは早い時間帯のせいかセナにもたれかかってうとうとしている。

弥一は窓を開けてビルファに声をかける。

「それじゃあ、行ってきます。いろいろとありがとうございました」

「君たちの旅の健闘を祈るよ。気を付けて」

最後にそう声をかけて弥一はへカートを走らせる。ビルファに見送られ弥一たちは次の街に向けて進み始めた。









のどかな平原をへカートが疾走する。動物などがすごい速さで進むへカートを見て驚いた後、逃げていく。弥一たちはあれから数時間ひたすら同じような道を進んでいた。

「そういえばマスター次の目的地はどこなのですか?」

エルがそう聞いてくる。ここからメイカイまではまだ道のりがある、メイカイまでの道のりの間にはいくつかの街や村がある。

「次の目的地はラッカンだな」

「ラッカン?」

【ラッカン】は【都市メイカイ】の前にある少し大きめの街だ。ここはそれほど多くの人間は住んでいない、そう人間だ。

「ラッカンは亜人が多くいる街なんだ。だから人間の領地には出回らない珍しい鉱石や食材が集まるらしい。珍しい鉱石なんかは新しい魔導器の開発に役立つかもしれないから手に入れておきたいんだ」

亜人はエルの古霊種族エルフや獣人族、土妖精ドワーフ、などの種族のこと。【都市メイカイ】にはそんな亜人たちが多く集まるため多種族間の交流の場でもあり、人間領には出回らないようなものが多くある。

弥一はここで魔導器の材料になりそうな物を集めておきたいのだ。

しかし、それ以外に弥一には誰にも言えない理由がある。それはーーーーー

(やっぱり異世界に来たからにはケモミミは見ておかなければ男じゃない!!)

実に欲望丸出しな理由だった。

オタクである弥一にとってケモミミは一度は見ておきたい。ビルファからこの街のことを聞いたとき迷いなく次の目的地をここにした。

もちろんそんなことセナに知られようものなら・・・、言わなくてもわかるだろう?

そんな訳で最もらしい理由をつけたのだが、珍しい物も目当ての一つなのであながち嘘でもない。

そんな弥一の本心知らないセナはユノを膝枕して、本人もうとうととしている。弥一とエルは微笑みつつ、起こさないように静かに会話していると、エルが突然左を向く。

「マスター十一時の方向からモンスターの接近です。数は五。どうします?」

「二人を起こしたくないから、静かに潰す。エル、操縦変わってくれ」

「了解です」

弥一は天井の一部を横にスライドさせへカートの上に登る。

そして左側を見ると遠くの方でこちらに向かってきている角が異常に発達した牛が確認できた。

弥一は別空間から槍を取り出す。

この槍は魔術回路のリハビリのため【錬成魔術】で作ったものだ。

「フッ!」

全身鉄でできた槍を弥一はググッと引絞り、投擲する。

投擲した槍は水平にカッ飛び牛の一頭の頭に命中する。頭に槍が突き刺さり絶命した牛はその場にドサッと倒れ、後ろから来ていた牛に踏まれる。

「うん、身体はなまってないみたいだな」

身体の調子を確認すると今度は別の物を取り出す。

取り出したのはスナイパーライフル。魔導器NO.6電磁加速型スナイパーライフル【ルオー】。これはエルの【グレーク】を参考にして作ったもので、威力は【グレーク】に及ばないが、火薬は最小限にして電磁加速での発射なので静穏性に優れており。また、、【グレーク】とは違い【ルオー】は弾を変えれば様々な状況にオールラウンドに対応できるスナイパーライフルだ。

揺れる車体の上で弥一は【ルオー】を構える。スコープに目をあて、狙いを定める。揺れる車体のせいで狙いがぶれるが、【解析眼】で補正し引き金を引く。

バシュ!と乾いた音が鳴ると針のような弾丸が射出される。針は牛の額に命中する。しかし牛は気にすることもなくこちらに突撃してくる。

すると突然牛がグラッと傾くと、そのまま倒れる。

発射された弾丸には猛毒を吐く魔物の毒が入れてあり、それが刺さることで毒が体内に侵入し、死に至らしめるのだ。

弥一は次々と弾丸を放ち、牛を全滅させる。

全滅を確認すると弥一は車内に戻り助手席に座る。

「どうでしたマスター。新しい武器の性能は?」

「うーん。もう少し改良が必要だな、発射音がもう少し抑えられるはずだ。すまんがエル、このまま運転を任せていいか?」

「はい、マスターはゆっくりしていてください」

「ありがとう。少し【ルオー】をいじってみる」

そういって弥一は【ルオー】をいじり出す。

それから弥一たちを乗せたへカートは、太陽に照らされながら草原を疾走する。















コメント

  • ノベルバユーザー67098

    夏イベントがほしい!!海水浴とか祭りとか

    4
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