魔術がない世界で魔術を使って世界最強

海月13

愛の証明

ビルファとの試合が終わり疲れ切った弥一がセナに癒されているとセナの試合の準備が完了したらしく弥一とビルファが試合をした訓練場とは別の訓練場に案内された。弥一とビルファの試合のせいで地面が抉れ壁もボロボロになったせいでここの訓練場は大規模修理が必要なためだ。案内された訓練場に入るとそこにはビルファと受付嬢に魔法使いの格好をした女性がいた。

「二人とも来たね。それじゃあセナくんの冒険者登録のための試合をしよう。試合の相手は第八階梯の魔法師であるクルスだ」

そう紹介された女性ーークルスは胸元が大きく開いた大胆なローブを身に着けており豊満な胸に大きくくびれた腰など男を魅了する要素が多い。クルスは豊満な胸の下で腕を組み訝しげな目でセナを見ている。

「この子が私の相手?ふ~ん。本当にこんな子で私の相手を務められるのかしら」

「セナくんの魔法の腕は相当だよ。僕が保障しよう」

「へぇ~そうなの。でも私はこんな子より彼と相手してみたいわ。なんでもあの組合長を倒したんですって?強い男は好きよ」

そういってセナの横に立つ弥一を見つめる。組んだ腕で豊満な胸を持ち上げ弥一を誘惑する。大人の色香に当てられた弥一は思わず動揺する。すると弥一の前にセナが静かに出てきてクルスと対峙する。

「弥一は私の。誰にも渡さない。かかってこい」

「ふ~ん。いい度胸じゃない」

セナは静かに怒気を燃やしお互いにバチバチと火花を散らせながら試合が開幕する。

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「これよりセナくん対クルスの試合を始める。両者準備はいいかい?」

「ええ」
「うん」

弥一とビルファ、受付嬢は観客席に移動しクルスとセナは訓練場の端と端で対峙する。ビルファが確認をとると両者は頷き二人の合図を受け試合開始を宣言する。

「それでは始め!!」

「《踊れ水・氷結となり・散弾となりて・撃ちすえよ》!!」

開幕とともにクルスは詠唱を始める。周囲に浮遊していた水が瞬時に氷結、砕けた破片が散弾となりセナを襲う。氷結の散弾が迫るなかセナは唱える。

「【炎層壁】」

氷結とセナの間に炎の壁がせり上がる。高温の炎の壁が氷結をすべて溶かし攻撃を阻む。その光景を見て攻撃を阻まれたことよりも詠唱もなしに魔法を展開したセナにクルスは驚愕する。

「あんたいったいなにしたの!?」

「炎の壁を作っただけ」

「そんなことはわかってんのよ!あんた今詠唱もなしに魔法を発動させたのかい!?」

「そうだけど?」

「そ、そんな馬鹿な・・・!?【無詠唱】だって!?そんなの第十階梯の魔法師でもできないのに!」

セナが無詠唱で魔法を展開したことでクルスはセナの認識を改める。自分では相手にならないと、そう悟った。ルクスはやけくそ気味に魔法を放ってくる。

「《ひ、氷結の槍・疾く凍てつき・刺し貫け》!!」

「【炎豪】」

クルスが放った氷の槍がセナの放つ炎により相殺され消失する。その後もクルスが魔法を放つがすべてセナの魔法によって阻まれる。クルスが放つ魔法の威力は確かに強力だがセナの魔法はその遥か上をいく。

「《風の息吹・激しく戦き・我が前を切り裂け》!」

「【城土壁】」

凶悪な風の刃が土の城壁に阻まれ霧散する。城壁に傷を刻むが破壊には程遠い。

「《青き流れ・集まりて・水弾となれ》!!」

水弾が城壁に衝突するがそれもビクともしない。水弾が治まるとセナは城壁を解除する。

どんなに強力な魔法を放ってもすべてセナが相殺していく。セナは決してこちらからは攻撃をしていかない、すべての魔法を相殺することで格の差を見せつけているようだ。

魔法が通じないそんな現状にクルスの心は徐々に追い詰められていく。侮って掛かった相手が自分などまるで相手にならないほどの圧倒的強者になすすべなくついには膝を着く。

「な、なんなのさいったい・・・」

「もう終わり?ならこっちからいく」

膝を屈したクルスを見てセナは反撃を開始する。

「【劇炎楼げきえんろう】【劇氷楼げきひょうろう】」

訓練場の地面に炎の柱が這い、氷が這う。訓練場を覆い尽くす氷と炎はお互いに消失することなく協調しあう。氷の柱に纏う炎の光景は幻想的であり凶悪な威力を秘めている。一瞬にして周りの光景がすべて炎と氷に覆われたことにクルスは驚愕し絶望する。クルスの周りは全て炎を纏う氷によってふさがれ逃げ場はない。

セナは静かにクルスに歩み寄る。氷と炎が割れクルスに続く道ができゆっくりと幽鬼のようにゆったりと歩み寄るセナの目には辺りの炎よりも熱く燃える炎が静かに宿っていた。静かに歩み寄るセナをみてクルスは恐怖し少しでも離れようと氷のギリギリまで後ずさる。

歩み寄ったセナは自分に恐怖するクルスを見下して言葉を放つ。

「弥一は渡さない。弥一のパートナーは私。それが人生でも戦いでも同じ。誰にも譲らないし譲る気はない。」

そういってセナは静かに人差し指をクルスの眉間に持ってくる。そして眉間に指を着けーー

「おしまい」

どさっとクルスが倒れる。その眉間には傷一つない。セナからの恐怖と緊張で気絶してしまったのだ。

クルスが気絶すると訓練場を覆っていた氷と炎が砕けるようにして粒子になって消える。勝利したセナは誇らしげな顔で弥一を見るとニッコリとピースサインを送る。弥一はそんな嫁の誇らしげな笑顔を見つつ試合の惨状を見てぎこちない笑顔で手を振ることしかできなかった。

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無事二人とも試験に合格し冒険者として登録することができた。今は冒険者についての説明が行われていた。

「それではご説明いたしますね。冒険者組合は全世界の国々から認可を受けている独立組織です。そのため他国への入国にかかる入国税は免除されています。冒険者として登録されると様々な恩恵を受けることができます。そして冒険者全員に配布される冒険者カードはどこの国でも通用する身分証明証になります」

そういって受付嬢はセナと弥一にそれぞれカードを渡す。カードは金でステータスカードと同じくらいの大きさだ。

「こちらが冒険者カードになります。この冒険者カードには氏名、性別、階梯の三つが記載されています。階級についてですが階級とはその冒険者が冒険者としてどの程度の者であるかを示すものです。階級は一から十まであり階級によって受けられる恩恵も変わっていきます。そしてお二人の階級ですが、それぞれ第十階梯となっています。」

冒険者登録でいきなり冒険者としての最高位の階梯になったことに二人とも驚く。

「い、いきなり第十階梯ですか?」

「はい。弥一様は我が冒険者組合の組合長であり同時に世界に五十人しかいない第十階梯の冒険者の一人である『碧撃の弓神』ビルファ・クライトを倒されたのですから当然です。そしてセナさんも第八階梯のクルスさんを倒しなおかつ、無詠唱という第十階梯でもできるものはいない技術をお持ちですから。お二人の階梯はビルファさんも納得しています」

「へ、へぇ~」

思わぬ好評価に弥一は生半可な言葉を漏らす。冒険者登録していきなりの最高位にどうしていいのやらと反応に困る。だが別に高くて困ることもないので素直に受け取っておく。

「わかりました。ありがとうございます」

「はい。それでは今後のお二人の活躍を期待しております」

こうして弥一とセナの冒険者登録は無事終了した。

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冒険者組合から宿に帰ってきた二人は夕食も済ませ風呂に入った後部屋でくつろいでいた。弥一はベットを背もたれにして床に広げた様々な種類のパーツをいじりながら魔導器のメンテナンスをしている。セナはベットに寝っ転がりながら弥一の作業を見ている。

「まさか登録していきなり第十階梯になるとは思わなかったな」

「うん。いきなりでびっくりしたね」

「しかしビルファさんは強かった。あれが武神なのか。てかリカードさんも四天武神のひとりだったとは・・・セナは知ってたのか?」

「いや知らなかった。お父さんはそんなこと教えてくれなかったから」

「そうなのか?」

うんと頷くセナ。そんなふうに話をしながら魔導器をメンテナンスしていると突然セナが弥一の首腕を絡めて耳元に顔を寄せてくる。突然発生した首に暖かく甘いにおいに弥一は驚く。

「せ、セナ?どうし・・・」

「弥一あの女の人の胸見てた。もしかして・・・浮気?」

「・・・」

その言葉にメンテナンス用の工具を落としてしまう。何も言えず体の芯から冷えていく。暖かい温もりを首に感じているが今はただその暖かさの裏に死の極寒を感じてならない。

「いや!そんなことない!!」

「ほんと?」

高速で頷く弥一。【精神寒気】以上の極寒を感て背中にありえないくらいの冷や汗を流しその場から動けないでいる。

すると少し経ちセナが小さく吹き出しクスクスと笑う。へぇ?、と間抜けな返事を漏らし顔だけセナの方を向くと顔の目の前でほほ笑むセナがいた。

「冗談。弥一がそんなことしないってことはよくわかってるから」

「は、はめたな・・・」

「ふふ、ごめんね。でも少し嫉妬したのはほんとだからね?」

そういって笑う可愛らしい嫁の表情になにも言えなくなる。しかしそんな嫁の表情に少しいたずら心がわいてくる。

「俺の嫁はセナだ。そんな浮気なんてするわけないだろ?」

「本当に本当?」

「ああ。だから証明してやるよ」

「え?・・・んっ・・・!」

目の前のセナの顔に顔を近づけ口づけをする。長く唇が触れるだけのキス。弥一はベットに上がるとセナを押し倒し、股座の間に膝を置いて、軽く乗し掛かって身動きを封じる。そして頬に手をあてその深い蒼い目を覗き込む。

「どうだ?これどもまだ疑うか?」

そういってニヤリと笑う。嵌められた仕返しは効果抜群だったようでセナは不意打ちのキスで顔を赤くする。弥一の言葉にセナは顔を赤くしつつも返答する。

「・・・うん、まだ心配。だから・・・安心できるくらいたくさん証明して」

赤く上気した顔に少し息が荒い声でセナは手を広げ甘く媚びた声色でにいう。吐息は熱く、甘くそして艶やかでありそんな言葉に弥一の脳髄に痺れるような感覚が襲う。その言葉からは夫の浮気の可能性など全く心配しておらずただただ純情で無垢な愛が現れている。

最愛の嫁のそんな愛に弥一の心は満たされる。満たされる心がもっと彼女を感じたいと叫ぶ。

「わかった。そんなに心配なら心配する暇のないくらい証明してやる」

優しく慈しむようにその綺麗な蒼髪を撫で短いキスを繰り返す。唇。頬。額に。なんどもなんどもキスを重ねセナへの愛を示す。

セナは小さな手を背中に回し、抱き寄せる。弥一もセナの背に手を回し、抱き寄せる。お互いの体温を共有し暖かい気持ちになる。弥一はセナの可愛らしい小さな耳を甘噛みし、囁く。

「まだまだこんなものじゃないからな」

「うん。もっと・・・んっ・・・んちゅ・・・んんっ・・・」

弥一の唇がセナの唇を少し強引に奪い、そして口内を貪る。甘美なキスはお互いを激しく求め合う。

「・・・んちゅ・・・んぁっ・・・やいち・・・」

「セナ・・・」

息苦しくなった二人は唇を離すが二人の間では透明な糸でつながれていた。愛おしさでとろけた表情でセナは弥一を見上げる。抑えきれないほど狂おしいほどの愛おしさと可愛さが込みあげてくる。
そして弥一の手はセナの衣服に伸びていくーー

火傷しそうなほどの愛情にあふれた夜はこうして過ぎていった。





コメント

  • SIno

    めちゃおもしろいです!! これからも頑張って!

    5
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