魔術がない世界で魔術を使って世界最強

海月13

最終決戦


弥一は現在柱の陰に隠れて、合図を待っていた。

すると弥一の頭の中にセナの声が響く。

『弥一。準備できた』

「了解。カウントダウンを始める。」

契約精霊とはある程度意志の疎通ができ、セナとの場合は念話が可能になる。

セナとの念話で準備が完了したことを確認し弥一はカウントダウンを開始する。

「5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・GO!!」

カウントと同時に柱の陰から【加速魔術】を使用して飛び出す。一歩踏み込むたびに地面を陥没させ超スピードで迫る。

ゴーレムは迫りくる弥一に向け熱レーザーを放つ。レーザーは地面を溶かしながら迫り直撃する寸前、弥一は蒼く輝く障壁が盾のように展開、まともに受ければ障壁が破壊されかねないので障壁に角度を付けレーザーを逸らし流す。

レーザーを逸らしたのに障壁が壊れかけていることに冷や汗を掻きつつさらに一歩踏み込む。

こうしてそろそろ氷結の効果範囲内に入るところまで来ると【身体防御魔術】と【耐火魔術】を発動し効果範囲内に突入する。そう【耐寒魔術】ではなく【耐火魔術】をだ。

効果範囲内に入ると体温が奪われていくのを感じる、しかし弥一はそれでも止まらずむしろ加速する。

そして、体が少しづつ凍っていき行動が鈍り始めたその時。

「今だ!セナ!!」

瞬間弥一の目の前で炎の爆発が発生し、すぐ近くで発生した爆炎を弥一はもろに受ける。こうして弥一を爆炎が包みこんだ。

普通は至近距離で爆炎に包まれれば全身が焼け死んでしまう、しかし弥一はそんな爆炎から先ほどと変わらず飛び出しまた加速をする。

そしてまた弥一の体が凍っていくが、またも爆炎が発生し包み込みそこからまた弥一が飛び出し走り出す。

これが弥一が考えた作戦だ。

作戦自体は体が凍らされる前に爆炎によって全身を焼き、凍らされないようにするというシンプルな強行突破だった。

【身体防御魔術】と【耐火魔術】によって爆炎による耐性を付け、縦穴の上の方で待機していたセナが弥一の合図で目の前に炎の爆炎を魔法が凍らさせられる寸前で爆発させる。
こんな強行突破はお互いに信頼してないとできるような芸当である。

「うぉおおおおおおおおおおおおーーーーーーー!!!!」

腹から声を出して叫び爆炎に呑まれながら弥一は一歩一歩、大地を踏み込み走ってゆく。

ゴーレムはチャージが完了したのか再度柱の熱レーザーを弥一に向かって放つ。

距離が近い上に万全の状態でもギリギリの障壁だったのに、幾度もの爆炎に巻き込まれ【身体防御魔術】と【耐火魔術】を維持し続けたことで体力、魔力ともにすでに限界に近い弥一はこのレーザーを防ぐ手段がない。絶体絶命のピンチ。

でも、弥一はまったくそんなことは思わなかった。なぜなら-----

「《阻め・その力を》!!」

-----最高のパートナーがいるから。

空中に身を躍らせて風の魔術で調節し落下してくるセナが呪符をつかって弥一から教わった障壁を弥一の前に展開。障壁の角度を調節しレーザーを逸らし弥一の横を通り過ぎてゆく。

「いって!!弥一!!!」

弥一は最後の力を振り絞り最後の加速。

たどり着き、跳躍

「これで終わりだぁあああああーーーーーーー!!!!」

【蒼羽】を振り抜き上から一刀両断。

ゴーレムに一本の線が走り、縦に割れゴーレムは完全に停止した。

「お、おわった、のか・・・?」

ゴーレムが完全に停止したことを確認した弥一は【蒼羽】を落とし、ふらついて倒れそうになる。

「弥一!!」

そんな弥一をセナは正面から抱き留め支える。

「弥一!弥一!!」

「あぁ、大丈夫だ、セナ、ただ少し、疲れて・・・」

そうして弥一はセナの暖かさに包まれ、意識をまどろみの中に意識を手放した。

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『弥一。お前は戦う理由が何かわかるか?』

『うーん。わかんない。』

いつの記憶だろうか。とても懐かしく感じる。

『それはな、怖いからだ。』

『?怖いのになんで戦うの?』

そんな言葉に父さんは苦笑いを浮かべ俺の頭を撫でる。

『今はまだわからなくていい。でもいつか守りたいものができたとき、もう一度考えてみろ。そうすればわかるようになる』

『そうなの?』

『ああ、だからいつか・・・』

その時父さんがなんていったか思い出せなかったがでも不思議とわかるような気がした。

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後頭部に柔らかい感触が広がっており、その柔らかさにもう一度意識を沈めたい気持ちを抑え目を開ける。

目を開けると目の前には顔を上から逆さまの状態で覗き込んでくるセナががいて目尻には涙が浮かんでいた。

「弥一!!」

目を開けた弥一の頭をセナは抱きかかえる。

「ん!?んんーー!!」

顔全体に広がる幸せな感触と息ができない苦しさが同時に襲ってきてもがく弥一。

そんな状態の弥一に気づき慌てて頭を解放する。

「弥一大丈夫!?」

「ああ。何とかな。」

そういって上体を起こし体の状態を確認する。

「それでセナ、あれからどれくらいたった?」

「えっと1時間くらい。」

「そんなにか。ゴーレムの方は?」

セナは指を指す。そこのは頭から一刀両断されて崩れ落ちているゴーレムがいた。

そうしてその横には今までの感じの階段とは違う白で装飾された階段が出現していた。

「どうやらあれが、ゴールっぽいな。」

「うん。弥一が気絶してから一応警戒していたけど魔物は現れなかった。」

「よし。じゃあ行ってみるか。」

ふらつきながらもセナに支えられ弥一は階段を下って行く。

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そこは床や壁、天井まで白く天井の照明が照らし、どこか研究所を思わせる雰囲気の場所だった。

水耕栽培をしている部屋やクリーンルームのような部屋などこの世界では考えられないテクノロジーの施設が揃っていたり、かたや、風呂場や寝室など生活感のある部屋などが集まっており、まるでここに人が住んでいたかのようだった。

「本当になんだここは?これは・・・パソコンか?本当になんなんだ?」

「こんなもの見た事ない」

そう言って異世界版パソコンもようなものをしまい、辺りを物色していく。しばらくするとセナが何か見つけたようで、それを弥一に渡す。

「これは鍵か?一体どこの?」

「あれじゃない?」

そうしてセナが指した壁には鍵穴のようなものがあった。

そこに先程の鍵を差し込み回す。

すると鍵穴から枝状に線が伸びある程度の大きさになると壁が人が通れるくらいの長方形型に沈み、両サイドに開き部屋を出現させる。

その部屋の横にはハンガーに掛けられたコートがり、奥には一つの銀のプレートが壁には掛けられ、名前が彫られていた。

それを読むべく弥一は近づきそこに書かれている名前を見て驚愕し、まるで石像のように固まった。

そんな弥一にセナはまだどこか悪いのかと心配になるが、弥一がプレートに驚いているだけだと気づきそのプレートを見て首を傾げる。

「弥一。なんて書いてあるの?」

そんな弥一は声を少し震えさせ、そこに書かれている日本語で書かれた名前を読み上げる。


日伊月ひいづき 甲明こうめい・・・俺の父親だ。」





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