契約

「そういえばセナ。俺に攻撃した時の魔法、発動スピードが魔法にしては早すぎたが、あれはどうしてだ？」

あれから時間が経ち落ち着いたセナに弥一が質問していた。

あの時の発動スピードは魔法ではありえない発動速度だったため、気になっていた弥一はセナに尋ねる。

「私は精霊神を宿していて私も一応精霊だから魔法の構築を自分の中で行える、だから精霊を介して魔法を発動しなくて済む分早く魔法が使えて、精霊に命令する必要がないから詠唱も技名を言うだけで発動できる。」

「そういうことか。てことはセナには魔術回路はあるわけか。」

「魔術回路？」

「魔術回路ってのは魔術を自分の中で構築するためのもので、魔術回路がないと自分で魔術は使えないんだ。」

魔術回路は魔術師が魔力を操作し魔術を発動させるもので、これがないと魔術は使えない。この魔術回路は血統によって発現し、この魔術回路がないと魔力を操作することや魔術式を構築することができないので魔術師になることはできない。

しかし例外は存在する、それは精霊だ。精霊は疑似的な魔術回路のようなものをもっており、精霊を介すことで魔術回路がない人でも魔術を使うことができる。

「つまりこの世界の人は魔術回路がないからこの世界には多く存在する精霊を介して魔術を発動しているってわけだ。確かに俺の世界も昔は精霊をつかった魔術はあったが今は使われていない。精霊の数が減ったのも理由の一つだが、なにより精霊なんかはあくまで魔術を使う際に術式構築の補助をしてもらうもので、精霊事態に魔術の発動すべてを任せるようなことはしない。精霊の魔術回路は人間の魔術回路ほどのレベルではないからな。」

「じゃあ私にはその魔術回路があるってことなの？」

「ああ。セナの場合半分は人間だから魔術回路もそれ相応のレベルで人間の魔術回路とほとんど変わらないはずだ、しかも精霊を宿してる分精霊との親和性が高くて〔属性系魔術〕に関しては俺より上のはずだ。」

〔属性系魔術〕とは火、水、風、土、闇、光の六つの属性を扱うような魔術で、精霊は属性系と相性がとてもよくまた属性も、それぞれに相性がよい精霊が存在する。

こうして一通りの解説を聞き終わったあとセナは一つ弥一に提案する。

「弥一。私と契約して。」

「契約？あぁ、ステータスにある〔契約精霊〕のことか。」

「うん。」

「それは別にいいがどうして急に？」

とくに断る必要はないが気になったので聞いておく

「契約をするとお互いの精霊に対する親和性が向上するから。」

「へぇ～そうなのか。わかった。契約しよう。」

そうして承諾した弥一がどうすればいいか聞いてくる

「そこに座って目をつぶって。」

「？わかった。」

そうして座った弥一にセナは歩み寄り、弥一の頬に両手を揃えその清んだ綺麗な声で唱える。

「『私セナは汝、日伊月弥一とここに、契約を結ぶ』」

そうして弥一の額に唇を落とす。

するとその瞬間弥一とセナを暖かい光が包み、その光は徐々に二人の中に消えてゆきやがて無くなる。

額の柔らかい感触と体の中に流れてきた暖かいものに弥一は驚き目を開けると目の前には顔を真っ赤にしたセナがいた。

「え、ええーっと、そのセナ今のは・・・」

「！！言わせないで！！」

そういって顔を隠すようにぷいっと逸らす。

その反応でさっきの感触の正体に確信を持った弥一は赤くなりカリカリと頬をかく。

「そ、そうだ！ステータスがどうなったか確認しよう！」

無理やり話題を逸らしステータスの確認をしようとする弥一に、セナはいまだ顔を赤くしつつも頷き弥一のステータスプレートを後ろから覗き込む。

そして二人でステータスプレートを見てみると

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〔日伊月　弥一》　男
レベル：２０
職業：魔術師

筋力：３１４０
体力：３５８０
俊敏：４０１０
耐性：３０２０
魔力：５６９００

〔契約精霊〕
・全精霊『神級：セナ』

スキル
言語・剣術・射撃・思考強化・縮地・魔力回復速度上昇

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「・・・弥一」

「なんだ？」

「なに、このステータス・・・？」

と予想通りの返答が返ってきた。

「なんだといわれてもこうなってたから仕方ない。」

「このままいくと魔王すら軽く凌駕しそうだね・・・」

「まぁ、仕方ない。とゆうか神級なんてランクあったんだな」

「私の中にいる精霊は精霊の神だからね、精霊神はこの世には一体だけだから」

そんなことを言いながら魔王を軽く凌駕するかもしれないステータスを仕方ないで済まそうとする弥一に若干呆れが混じった視線を送るセナ。

「そ、それよりこれからについて話そう。」

セナの視線に耐えきれなくなった弥一は強引に話を逸らし今後について話し合う。

「とりあえずの目標はこの迷宮をクリアしてここから脱出することなんだが、セナは何か知らないか？」

「この迷宮はグリノア迷宮っていう世界六大迷宮の一つで、地下３０層からなるといわれている迷宮。」

「世界六大迷宮？」

「１５年くらい前に突然世界各地に現れた六つの迷宮でどれも攻略難易度が高すぎることから世界六大迷宮って言われてる。強力な魔法使いが多い精霊の里の精鋭部隊でもこの階層までが限界だったみたい・・・。」

その言葉で当時の状況を思い出したのかセナは顔を少し辛そうに表情を曇らせる。

弥一はそんなセナの頭に手を乗せポンポンと撫でて不敵な笑みを浮かべる。

「それじゃあこんな迷宮さっさと突破しないとな。なに俺はこれから、世界最強だった父さんを超える魔術師でセナは精霊の神様の力を持ってるんだ。世界最強の魔術師と世界最強の魔法使い・・・この二人で越えられないことがある訳ないだろ？」

そういってこちらに手を差し出し不敵に笑う弥一。そんな弥一の笑みに不思議と不安や心配が嘘のように消え自信に満ち溢れてくる。彼とならどこまでもいける気がする、そう思ったセナは

「うん！」

そういって笑みを浮かべ弥一の手を取った。


「さぁ、いくぞ！」