魔術がない世界で魔術を使って世界最強

海月13

魔術がない世界 前編


「ま、魔術を知らないんですか・・・?」

「聞いたことが無い」

「そ、そんな・・・・・!!じゃあ召喚されたとき襲撃したあの火焔の弾丸はいったい!?」

するとバーリアさんがこちらにやってきた。

「それは火精霊を使った精霊魔法初級『ファイヤ』です。

「精霊魔法?」

「はい。勇者様方にはあとで説明しようと思っていたが、今説明したほうがよさそうだな」

そういってバーリアが精霊魔法についての説明を始めた。

この世界には精霊魔法というものがあり、精霊魔法は契約した精霊に自分の魔力を譲渡し精霊に命令することで”魔法”と呼ばれる現象を行使する。それが精霊魔法である。

契約精霊には種類があり、火精霊・風精霊・水精霊・土精霊・光精霊・闇精霊が存在する。また、その精霊にもランクのようなものがあり下から、下級、中級、上級、最上級が存在するらしい。

また魔法自体にもランクがあり、初級、中級、上級、最上級、神級となっている。

使える魔法は精霊のランクによって決まり、下級の精霊では中級魔法まで、中級精霊は上級魔法まで、上級精霊は最上級魔法まで、最上級精霊は神級まである。

契約できる精霊のランクはひとそれぞれであり、下級はほとんどの魔法使いが契約でき、中級は百人に一人の確率で契約でき、上級は千人に一人らしく精霊魔法教会に所属する魔法使いはこの上級精霊と契約できる者らしい、そして最後に最上級の精霊。これは百万人に一人の確率で契約できこの国にも最上級の魔法使いはバーリアと第一皇女のアーリアしかいないらしい。

そうしてバーリアの精霊魔法講座が終了した。

とここまで聞いて一つの疑問がうまれる。

「じゃあステータスプレートの魔術術式はいったい?」

「ステータスプレート?ま、まさかステータスプレートの仕組みが分かったのか!?」

「まぁ、ええ。昨日の夜に。」

すると周りの人たちが騒ぎだした。

「君はいったい何者なんだ?」

「魔術師だ。」

「それは職業だろう?」

バーリアの言葉に弥一は少し躊躇うが意を決するように

「いいや。この世界に来る前から俺は、職業としてではない・・・正真正銘の”魔術師”だ」


その発言にクラスメイトは騒然となる。それもそうだろうファンタジーの世界の産物である魔術を使う魔術師がクラスメイトにいるとは誰も考えないだろう。ありえないと思っても現在進行形でありえない世界にいるので認めざるを得ない。

「それで魔術と言うものは精霊魔法とは違うわけだな」

「ああ。そうだ」

「だが、君には精霊がいないようだが・・・魔術とやらは役に立つのか?」

「実戦でも十分に機能する。」

「そうかではその魔術を役立てて・・・」

とそこへ

「まってください、バーリー最高司祭様!!」

そこに弥一を睨み付けるようにやってきたのは一人の精霊魔法使いだった。

「いくら勇者とはいえ、魔術と言うよくわからない物を使う者が実戦で役に立つとは思えません!!そんな信用なら無い者共に戦うものとして安心して背中を任せられません!!」

その精霊魔法使いの言葉に精霊魔法使い以外にも騎士団にも何人か頷いている人がいる。

それも仕方が無い、人間というものは分からない未知に遭遇したとき恐れが先に立ってしまうものである。

「しかしどうすると?」

「決まっています。」

そういって精霊魔法使いが弥一のほうを指差し

「日伊月弥一!私と勝負しろ!!」

そういってきた

「いいのか弥一殿?」

「わかりました。それで信用が勝ち取れるなら」

「それでは勝負の準備を始めよう」

「ああ、ちょっとまってください。騎士団の方にも不信感があるようなので騎士団からも一人、一緒に勝負してください。」

「騎士からもか?しかしそれでは不利ではないか?」

「いいえ。それくらいはしないと不信感が残りそうですから。

そうして弥一対、精霊魔法使いと騎士の勝負が決まった。

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「それではこれより魔術師、日伊月弥一と、精霊魔法使いマディア、騎士ジークの決闘を始める!!」

そう騎士団長ロジャーが宣言すると、マディアとジークが前に出てきた

「私は精霊魔法教会上級精霊魔法使いマディア・カール!。魔術とやらがこの私、上級精霊魔法使いに適うはずが無かろう。ましてや2対1など、いくら勇者といえど舐めすぎではないか?」

「その言葉には賛成だ。なぁ勇者さんよ、騎士と魔法使い二人を相手にして勝負になるわけが無いだろ?」

マディアとジークが機嫌が悪そうにそんなことを言う。

それに対して弥一は

「それはどうかな」

と一言いって、パチンッと指を鳴らす。 

すると弥一の足元に無色の魔方陣が展開し、弥一を飲み込むようにして瞬時に上昇しそのまま魔方陣が通過すると、そこには黒を基調とした戦闘服を身に纏った弥一がいた。

黒を基調とし袖や襟などの所々に蒼い線がはしっているロングコート、左側の太ももにはレッグホルスターに収められた呪符と魔術戦闘の姿だった。

指を鳴らし弥一が飲み込まれたと思ったら次の瞬間にはまったく異なる姿の弥一がいたのである。その目の前で起きた出来事に誰もが騒然となった。
この現象を全国の男の子がみたら指を差して言うだろう「あっ!ウィ○ード」と。

「ふ、ふん。なかなか芸はうまいようだな!だが容赦はせん!!」

とマディアが叫んだ。そして

「それでは、はじめ!!!」

開始の合図と同時にマディアは詠唱を始めた。

「【我が身に宿る火の精霊よ・我が身に眠る魔の力を使いて・その力をもって・我が敵を討ち・焼き滅ぼせ】!!」

するとマディアの周りに10の赤に輝く光りが現れ

「『ファイア』!!」

その瞬間、赤い光から10個の火焔の弾丸が撃ち出された。

召喚された際撃ち込まれた魔法である。そのためすでに防げることは分かっている弥一は、レッグホルスターから素早く呪符を抜き、投擲

「《阻め》!」

そうして蒼く輝く結界を展開。弾丸のすべてを防ぎきる。

すると火焔の弾丸が発射されたと同時に走り出していたジークが、結界と火焔の弾丸の衝突で発生した煙に紛れ弥一の右側面から強襲をかける。
これを予測していた弥一は危なげも無くジークの剣を最小限の動きで回避し入れ違いで右拳をジークの胸に叩きこむが、ジークはすぐさま振り切った剣を戻し間一髪で剣の腹を盾にし拳を防ぐ。
しかし弥一は結界で弾丸を防ぐと同時に右腕限定で【身体強化】魔術をしていたのでジークはそのまま地面に二本の線を引きながら十メートル先まで飛ばされる。

一連の出来事に魔法教会や騎士団から驚愕の声が上がる。マディアとジークはそれぞれが教会と騎士団の中でも上の位に位置し、よくコンビを組んで戦闘もするためコンビネーションは完璧であり教会と騎士団の中にも二人に勝てるような者は少ないのである。

そんな二人のコンビネーションが破られたこの状況に教会と騎士団は動揺を隠せない。また、西原先生も数々の兵士と戦ってきて戦闘経験があるため弥一のこの一連の動きに驚愕している。

周りが驚愕している中弥一は

(すごい・・・!呪符を使ったとはいえ、構築からの発動がこんなにもあっさりといくなんて・・・!しかも今までは補助器がなきゃできなかった【身体強化】の【部分強化】が補助器なしでできた!!。昔の10分の1といったとこか・・・?すげーぞ《魔術師》!!)

自分の職業に驚愕していた。

「おいおい。お前さんいったい何者だよ。」

と弥一の拳を喰らってひびのはいった剣をはらいながらジークが立ち上がりそこにマディアが寄ってくる。
そんなジークの言葉に



「日伊月弥一。《魔術師》だ。」


右目を失いつつも父親の研究を継ぎ現代に生きる《魔術師》としての誇りと、今の自分に昔以上の魔術師になれるかもしれない可能性を示した職業である《魔術師》に感謝を持って弥一はそう返した。


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