Spiral Labyrinth……螺旋の迷宮
7
取材陣の前に、沈痛な面持ちで姿を見せた志摩憲広と頬にガーゼを当てた次男の高飛。
「夜分遅くに、来ていただきありがとうございます。そして、私事ですので病院の他の患者様やお見舞いの方、スタッフの方にご迷惑がかかりませんように、どうぞよろしくお願いいたします」
憲広は頭を下げる。
「そして、大量に出血し命が危うくなり、緊急に大量輸血となりました。足りなかったので、知人や娘の学校関係者さま、ご家族の皆様にも手分けして……来ていただき、助かりました。本当にご協力いただきありがとうございます。まずはこの場をお借りして御礼申し上げます」
もう一度頭を下げると、
「志摩さん!何があったのですか?」
「お嬢さんが飛び降りとか……本当ですか!」
次々声がかかるが、食って掛かりそうになる息子を後でつねり、
「いえ、飛び降りではありません。……事故、と言うか、私の末娘の里鶴夢は転落しました。ですが、自殺は決してあり得ないのです。今日は久しぶりに家族全員が集まり、食事に行こうと思っていました。明日はこの高飛がコンサートですが、それからはしばらくこちらでいる娘と過ごそうと……娘は本当に喜んで、いつもなら熱心に活動している吹奏楽部を早退するために音楽室に向かっておりました。この高飛が迎えに行っていたからです」
息子を示す。
高飛は口を開こうとしたが、顔をしかめる。
しかし、美形は得で、物憂げな顔になる。
「どうされたんですか?高飛さん」
「すみません。高飛も、実は怪我をしてしまったのです。高飛が学校につくと娘が倒れていて手足も折れて、頭も打ってひどい状況でした。高飛は救急車に乗り、私たちは別の車でこちらに……。3男の蓮斗が高飛の車に娘の荷物を積むために学校にはいると、二人の生徒さんが言い争っていて、もう一人の生徒さんが止めて説明してくれたそうです。この事は警察にお任せしております。そして、余りにもひどい内容に、妻の知人を通じて弁護士をお願い致しました。そして、高飛は、二人の生徒さんのうちの一人の親御さんに殴られ、口のなかを切り、縫いました。明日は……いえ、日は過ぎたので本日のコンサートですが、口を開けるのも痛むと言うことで、キャンセルとなります。本当に、息子のファンの皆様、突然のキャンセル、申し訳ございません」
高飛は悔しげに何度も頭を下げる。
と、後ろから、
「キャンセルはさせません。高飛の代わりに私たちがコンサートを成功させます!」
姿を見せたのは凛とした姿の英玲奈と歌音。
「舞台に穴を開けることは、芸術家には本当に苦しいことなのですわ」
「高飛もプロです。本当なら怪我がなければ、リ……妹のことを思っても舞台にたつはずです」
「それを、潰した……しかも、殴ったと言う、その方の脅しには負けませんわ!」
英玲奈は宣言し、
「そうですね。それに、『子供の喧嘩ごときに親や家族が口を挟むな』と言って高飛を殴ったそうですわ。子供の喧嘩が、学校の4階から突き落とされ、集中治療室で眠る妹に言えますか?私たちの可愛い妹が苦しんでいる横で大騒ぎして!」
「私たちの家族二人を傷つけ、そして母は心痛で倒れましたわ。妹は今も意識不明です。本当に可愛い私たちの天使ちゃんが……」
「リズちゃん……」
歌音は涙をぬぐう。
「申し訳ありません」
苦悩するように父の憲広は頭を下げる。
「これからのことは、私たちが信頼する弁護士にお任せいたします。娘の事件の真相も、警察の方々や、学校関係者さまに調べていただければと思っております。本当に夜分に申し訳ございません」
「志摩さん!お嬢さんが自殺じゃないと言うのは……」
「里鶴夢は、私たちの宝物です。私たちが帰ってくるのをそれは楽しみにしていました。突き落とされなければ……里鶴夢と予約したお店でディナーを食べていたでしょう……」
「自殺じゃない……」
高飛は必死に痛みをこらえながら訴える。
「私は落ちた直後の妹を見ている!『お兄ちゃん……会いたかった』とそう呟いたんだ。飛び降りて俺に会いたいなんて、言えるか?」
「高飛!やめなさい!傷が開く!歌音!連れていきなさい!」
憲広は息子をつれていかせ、英玲奈と頭を下げた。
「どうぞよろしくお願いいたします。病院の皆さんだけでなく、取材陣の皆さんもこのような夜更けに申し訳ございません。また日を改めて、取材か会見をさせていただければと思っております。本日の所は……娘のそばにいたいと思います。本当にわざわざありがとうございました」
何度も頭を下げ、病院に入っていったのだった。
「夜分遅くに、来ていただきありがとうございます。そして、私事ですので病院の他の患者様やお見舞いの方、スタッフの方にご迷惑がかかりませんように、どうぞよろしくお願いいたします」
憲広は頭を下げる。
「そして、大量に出血し命が危うくなり、緊急に大量輸血となりました。足りなかったので、知人や娘の学校関係者さま、ご家族の皆様にも手分けして……来ていただき、助かりました。本当にご協力いただきありがとうございます。まずはこの場をお借りして御礼申し上げます」
もう一度頭を下げると、
「志摩さん!何があったのですか?」
「お嬢さんが飛び降りとか……本当ですか!」
次々声がかかるが、食って掛かりそうになる息子を後でつねり、
「いえ、飛び降りではありません。……事故、と言うか、私の末娘の里鶴夢は転落しました。ですが、自殺は決してあり得ないのです。今日は久しぶりに家族全員が集まり、食事に行こうと思っていました。明日はこの高飛がコンサートですが、それからはしばらくこちらでいる娘と過ごそうと……娘は本当に喜んで、いつもなら熱心に活動している吹奏楽部を早退するために音楽室に向かっておりました。この高飛が迎えに行っていたからです」
息子を示す。
高飛は口を開こうとしたが、顔をしかめる。
しかし、美形は得で、物憂げな顔になる。
「どうされたんですか?高飛さん」
「すみません。高飛も、実は怪我をしてしまったのです。高飛が学校につくと娘が倒れていて手足も折れて、頭も打ってひどい状況でした。高飛は救急車に乗り、私たちは別の車でこちらに……。3男の蓮斗が高飛の車に娘の荷物を積むために学校にはいると、二人の生徒さんが言い争っていて、もう一人の生徒さんが止めて説明してくれたそうです。この事は警察にお任せしております。そして、余りにもひどい内容に、妻の知人を通じて弁護士をお願い致しました。そして、高飛は、二人の生徒さんのうちの一人の親御さんに殴られ、口のなかを切り、縫いました。明日は……いえ、日は過ぎたので本日のコンサートですが、口を開けるのも痛むと言うことで、キャンセルとなります。本当に、息子のファンの皆様、突然のキャンセル、申し訳ございません」
高飛は悔しげに何度も頭を下げる。
と、後ろから、
「キャンセルはさせません。高飛の代わりに私たちがコンサートを成功させます!」
姿を見せたのは凛とした姿の英玲奈と歌音。
「舞台に穴を開けることは、芸術家には本当に苦しいことなのですわ」
「高飛もプロです。本当なら怪我がなければ、リ……妹のことを思っても舞台にたつはずです」
「それを、潰した……しかも、殴ったと言う、その方の脅しには負けませんわ!」
英玲奈は宣言し、
「そうですね。それに、『子供の喧嘩ごときに親や家族が口を挟むな』と言って高飛を殴ったそうですわ。子供の喧嘩が、学校の4階から突き落とされ、集中治療室で眠る妹に言えますか?私たちの可愛い妹が苦しんでいる横で大騒ぎして!」
「私たちの家族二人を傷つけ、そして母は心痛で倒れましたわ。妹は今も意識不明です。本当に可愛い私たちの天使ちゃんが……」
「リズちゃん……」
歌音は涙をぬぐう。
「申し訳ありません」
苦悩するように父の憲広は頭を下げる。
「これからのことは、私たちが信頼する弁護士にお任せいたします。娘の事件の真相も、警察の方々や、学校関係者さまに調べていただければと思っております。本当に夜分に申し訳ございません」
「志摩さん!お嬢さんが自殺じゃないと言うのは……」
「里鶴夢は、私たちの宝物です。私たちが帰ってくるのをそれは楽しみにしていました。突き落とされなければ……里鶴夢と予約したお店でディナーを食べていたでしょう……」
「自殺じゃない……」
高飛は必死に痛みをこらえながら訴える。
「私は落ちた直後の妹を見ている!『お兄ちゃん……会いたかった』とそう呟いたんだ。飛び降りて俺に会いたいなんて、言えるか?」
「高飛!やめなさい!傷が開く!歌音!連れていきなさい!」
憲広は息子をつれていかせ、英玲奈と頭を下げた。
「どうぞよろしくお願いいたします。病院の皆さんだけでなく、取材陣の皆さんもこのような夜更けに申し訳ございません。また日を改めて、取材か会見をさせていただければと思っております。本日の所は……娘のそばにいたいと思います。本当にわざわざありがとうございました」
何度も頭を下げ、病院に入っていったのだった。
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