二面性男子の鏡

山本慎之介

お尋ね者

「おらぁ、この店にアルビノのドラゴンがいるってのは知ってんだ。早く出した方がいいぞ?」

なんてこった。

コータローは心の中で舌打ちをする。

アルビノのドラゴンとはほぼ間違いなくティドのことであろう。そのティドが今、いない。

恐らくだが、あの男はそれを信じない。そこら中を探しまわり、店を破壊する。

長年二次元見てきたコータローにはわかるのだ。

すると、男が表情を歪ませ言う。

「俺の手下が……そのドラゴンにやられたんだよ!」

……え?

コータローは思わずレトの方を向く。レトを「何言ってるのか分からない」という顔をしている。

「ティドが、人を?」
そう尋ねるレトの声は少し、震えていた。

「ティド?あのドラゴンのことか。あぁそうだよ。あいつが!あいつが……俺の……俺の大事な手下を……!」


「まさか!ティドにそんなことが」
言いかけたコータローに
「出来ないとでも?例えアルビノでもドラゴンはドラゴン。人一人くらいおやつにできる。手下は……ダスタは……片腕が、食われていた……!」
男が遮るように嗤い、感情を剥き出しに語る。

「嘘……だろ?なぁ、レト?」

「残念ですが、彼の言っていることは恐らく本当です。ティドもドラゴン。身に危険が迫ればそのくらいはするでしょう。」

縋り付くようなコータローをはっきりと、しかし目を伏せながら断言するレト。

そこへ
「それより!ゴチャゴチャ言ってねぇで早くドラゴンを出せ!」
男が痺れを切らし、机を蹴りあげる。

「「あ」」
その机は───

コータローとレトの声が被る。

店内にいながら全く会話に参加していなかった、否、寝ていて状況の変化に気づいていなかった金髪の美少女がむくりと起き上がり、一言。


「誰だ、アタシの安眠を妨げた奴ァ……。」

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