『ザ・ウォリアー』 ~この世界を浸蝕するデスゲーム系の近未来SF&ラブコメディ~

チョーカー

早朝、キメラとの戯れの日課

 
 ダッダッダッ―――

 足音をばら撒きながら、快走。
 キメラに背後から追いつき一気に抜き去る。

 場所はいつもの駅前広場ステージ。いつも通りにキメラと戯れる。
 体力スタミナが強化されているのか?それとも、ペース配分がうまくいっているのか?
 体力には余力が残っている。けど―――ここらで決めるか。
 背中から迫ってくるキメラ。
 俺は足を止める。さらにバックステップを加える。
 俺を襲い掛かろうと空中に飛び上がったキメラは目標を見失った。
 地面に着地したキメラの尻尾―――蛇の部分と俺の目が合う。
 鋭い突きのように尻尾が伸びてきた。

 (予想通りだ)

 俺は短剣を振るい、尻尾を切断した。
 舞い上がる尻尾の蛇は悲鳴をあげる。
 痛みがシンクロしているのか、キメラ本体も悲鳴―――と言うよりも怒りの雄たけびをあげる。
 それと同時にバーサーカーモード。一気に情報力が跳ね上がる。
 しかし、今更だ。 いまさら、キメラ程度の情報力―――

 「怖くないや」

 キメラの前足が上がる。
 どうやら、俺に覆いかぶさり、爪や牙を立てるつもりらしい。
 俺は両手の短剣をで爪を弾きながらバックステップ。
 キメラが前に出る速度と同じ速度で下がる。
 ―――いや、キメラの方が僅かに速いか。 

 追いつかれた。

 俺の肩に狙いを絞り、大きくアギトを開き、上下から牙を―――

 「だが、ここだ!」

 俺はその牙に向け―――口内へ向けて―――固めた拳で打ち抜いた。

 勝利のファンファーレが鳴り、討伐成功を知らせる。

 「まぁ、こんな感じです」

 可能な限り、疲労感を隠して、ルナさんに勝利を報告をした。
 しかし、彼女の様子はどこか変だった。

 「……あの」
 「はい?」
 「カナタさんは、いつもこんな事をしているのですか?」
 「こんな事……とは?」

 おかしい。
 毎日、人がいない早朝のタイミングでソロプレイでボス狩りを行う。
 それが、上位プレイヤーのルナさんは、まるで……
 まるで、おかしな事のように言っている。

 「うむ……」

 ギロリと視線を陽葵に向ける。できるだけヘイトを込めた視線だ。

 「な、何かな?カナタくん?いやだなぁ、そんな怖い顔して、何か気になる事でもあったのかな?」
 「確認だが、『ザ・ウォリアー』の上位プレイヤーは、全員が早朝にボスをソロ狩りして鍛えている。そう話してたよね?」
 「ハッハッ……私が言ったのは上位プレイヤーの『ほぼ』全員って事だよ」
 「ほう?ちなみにお前が知ってる早朝、ボス狩りしてるプレイヤーってのは誰がいる?」
 「誰?だれってそりゃ……」
 「そりゃ?」

 「わ・た・し」

 陽葵は両手の人差し指を立たせながら両頬に向け、小首を傾げて見せる。
 所謂いわゆる、ぶりっ子ポーズだ。

 「……」

 俺は無言で、彼女の武器である『キャノン砲』を装備して―――

 発射した。



 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 「毎日、早朝でキメラ狩りを2回、お昼休みに学校を抜けたしてフェニックス狩りも……」

 「そうですね」と俺。
 学校の近所で不死鳥フェニックスの出現位置が見つかって、そこでルナさん再開した。

 「もしかして、学校が終わっても、どこかでボスと戦っているのですか?」
 「まさか!いくらなんでも、暇さえあれば主を戦ってるみたいに言わないでくださいよ」
 「そ、そうですよね。そんな連戦していたら……」
 「まぁ、夕方限定とか、時間限定のあるレア系ボスの出現に間に合えば、参戦しますけど。基本的には体を休めてますね」
 「……」

 珍しく、ルナさんはジト目で陽葵を見ている。
 うん、どうやら俺が陽葵からレクチャーされていたルーチンワークは常軌を逸脱していたみたいだ。

 「そ、そうだ!学校が終わったら集合しよう!」

 話題を逸らすように陽葵は大声で言った。

 「ん?夕方限定のレアボスの出現情報は……入ってないぞ?」

 俺は携帯端末から『ザ・ウォリアー』専門の情報アプリを立ち上げて検索した。

 「違うよ。我が、ギルドの問題点を解決できるアイデアがあるのさ!」
 「ほう、嫌な予感がするが聞いておく」
 「フッフッ詳しくは秘密さ!放課後をお楽しみに!」

 そう言って、陽葵は天に昇って行った。
 まるで成仏していくみたいに―――

 「逃げたな」
 「逃げましたね」

 残された俺とルナさんは、同意見だった。

 「……」 「……」

 「1時間後に対キメラの集団戦が始まりますが参加していきますか?」

 手持ち無沙汰に聞いてみた。
 ルナさんは「では、是非」と返して来た。
 しまった。このまま1時間、手持ち無沙汰状態が継続されてしまう。
 そう気づいたのは数分経過したからだった。



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