『ザ・ウォリアー』 ~この世界を浸蝕するデスゲーム系の近未来SF&ラブコメディ~

チョーカー

情報屋

 「……誰もいない?」

 屋上には、柵もない。ただ、コンクリートの空間が広がり空と太陽が見えるだけだった。

 「一応、聞いておくが……陽葵、俺たちが騒いでいる間に鍵を開けたわけじゃないよな?」

 霊体の陽葵なら壁を通り抜けて、屋上の外側から鍵を開ける事は可能だ。しかし―――

 「わ、私は鍵を開ける音がした時、みんなと一緒にいたよ!」

 否定された。陽葵という優待が存在がしている限り、超常現象の可能性も0ではないが……

 「まぁ、常識的に考えればトリックだよなぁ。何らかの方法で扉が開かないようにしておいて、鍵は最初からかかっていなかった。鍵が開いた音は事前に録音していた音で……」

 「察しが良い子は嫌いだよ!?」

 俺の声を遮る声がした。その声は上から聞こえた。
 屋上の出入り口。その上に人が立っていた。
 たぶん、性別は女性。なぜ、ハッキリと明記できないかと言うと、
 その女性は仮面をつけていた。
 ぬいぐるみで使われるような生地でできた仮面。
 ねこ……いや、ライオンだろうか?ファンシーであるが、デフォルメがキツ過ぎて、原型がなんの生物かは不明だ。
 まぁ、スカート穿いているから高確率で女性だろう。
 ファッションとしてスカートを穿く男性も0ではないため、あくまで確率の問題だ。
 しかし、まぁ―――

 風を防ぐ遮蔽物が皆無の空間で高所に立っているわけで……

 まぁ、女性なのは一目瞭然だった。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・


 「フッフッフッ、待たせたな!」

 「……」
 「……」
 「……」

 俺たちは無言だった。
 興味があるのは、仮面をつけた彼女が、そこからカッコよく飛び降りるのか、それとも……
 あっ、やっぱり梯子はしごを隠してたのか。
 無言のプレッシャーに勝てなかったらしく、いそいそと梯子を下りてきた。

 「で、どっちよ?わたしに連絡を寄こしたのは?それも『砲撃姫』の名前で」

 俺はチラッと半透明の陽葵を見る。
 あっ、コイツ。自分の名前に深い意味を持たせたわけじゃなく、ナチュラルに名前を使ったな。

 「んん?なに虚空を見つめる猫みたいな視線を送ってるの?幽霊でも見えてるのか!」

 半分、正解だ。

 「えっと、『砲撃姫』の名前を使ったのは、彼女の親族とか近しい存在でして(ウソはついていない)。俺たちは、その内容まで把握していない……カッコつけて言わせても貰えば『砲撃姫』から使いの者とでもいえば良いかと」
 「ふ~ん、意識不明の人間の意志を継ぐ者ってわけね……中々、エッジの効いた皮肉やな」
 「それで……」
 「ん?なによ?」
 「貴方は何者なんですか?」


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・・

 「見ての通り、私は情報屋だよ」

 見ての通り?俺の目前には、ファンシーなぬいぐるみ仮面がいるだけだが?

 「情報屋だからね。正体を隠しておいた方が、何かと動きやすいのだよ」

 正体を隠した割には、おそらく自分のホームグランドである大学に招き入れる所はガバガバな設定だと思うが……もしかしたら、大学はフェイクで自身とは無関係な場所に招き入れた可能性も捨てきれない。
 情報屋について過去に陽葵から聞いた事はある。『ザ・ウォリアー』の情報を有料で提供している凄腕。
 ルナさんと参加した『クエスト』についても、情報を握っていた。
 それが本当に目の前の人物なのだろうか?

 「さて、それじゃ『砲撃姫』の関係者が貴方たちをわたしに会わせたのか知らないの?」
 「そうですね。情報屋さんが相手なら、情報を売ってもらえるという事なのですかね」

 俺の言葉に情報屋さんは「はぁ~」と深々とため息をつき、こう続けた。

 「違うよ。『砲撃姫』の代理人さんは、貴方たちのギルトに入れって言うの。この私に、そうメッセージを送ってきたのよ」

 俺は虚空で漂う陽葵を睨みつけた。
 陽葵は口笛を吹きながら―――吹けてないないが―――誤魔化そうとした。


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