『ザ・ウォリアー』 ~この世界を浸蝕するデスゲーム系の近未来SF&ラブコメディ~

チョーカー

メデューサの遠距離攻撃

 
 「……チートアイテム?何言ってんだ?お前?」

 ルナさんは戦線離脱。
 裏ボス『メデューサ』と1対1での戦い。
 戦いは最終局面。
 メデューサを残りのHPゲージは1つ、特殊攻撃を行う直前。
 油断をしてメデューサの攻撃を受けると、こちらのHPの10割消費もあり得る。

 この状態で、陽葵が戯言じみた発言をいうはずはないのだろうが……
 正直、俺には心当たりがないかった。

 「あれだよ、あれ!ちょっと前に手に入れたヤツ!もしかして忘れたの?」
 「いや、本当に何の事だ?」

 心当たりはない。いや、確かに何か引っかかる。何かを忘れているような……
 しかし、その場に立ち止まって思い出している暇はない。
 すでにメデューサは攻撃のモーションに―――
 いや、メデューサの動き止まる。脳裏に浮かぶのはケルベロス戦。
 最終的に3体に増えた波状攻撃。あれと同じような攻撃が来ると言うのか?
 俺は反射的に身を構える。

 メデューサの体が光に包まれる。

 (目つぶし?いや―――違う!)

 魔眼すら使用した後だ。 いまさら目つぶしなんて使わない……はず。
 そう思っても、目前の光源はこちらの攻撃を中断させるには十分な量だった。
 光が溢れる中で、薄らと瞼を開く。
 見えるのは光のまゆに包まれたメデューサのシルエット。
 それすら、消えていき―――光も消えた。

 思い出すのはメデューサ神話。

 蛇の髪と下半身。鳥類の羽、野獣の爪。
 彼女は、なぜそのような姿になったのか?
 その理由は―――
 海の神、ポセイドン。彼に見初められた美少女メデューサは、アテナ神殿で彼と交じる。
 しかし、その行為が神殿の主であるアテナの怒りをかい、醜い怪物に変えられてしまう。
 ある種の理不尽さを感じてしまう物語ではあるが―――
 元々、神は理不尽な存在である。 しかし、よく考えてみると――――

 いや、そんな場所でセックスした時点で、ただスリルを求めた特殊性癖じゃねぇか!

 そんな突っ込みを発する事なく、自身へ飲み込んだ。
 なぜなら、メデューサは変身を終えていたからだ。

 幼さを残す美少女。もはや、その髪は蛇ではなく、美しい金髪へ―――
 しかし、その姿から伝わってくる情報力は以前と比べ跳ね上がっている。
 一体、どんな攻撃をしかけてくるのか?
 不安感が積もっていく。
 不意にメデューサが動く。その動作は、緩やかに手を上げただけだった。
 しかし―――

 (なんだ?これラインが見える?)

 メデューサの手の動きに合わせて、空中に線が浮かぶ。
 横に長い線。 

 (もしかして、これ……)

 攻撃のラインを事前に知らせている?
 でも、なんで? こんなにわかりやすく……

 ゾッ―――

 背筋が凍りつく。
 コイツは危険だ。俺は直観に従って、しゃがみ込む。
 その直後、俺の頭部。その上に何かが通り過ぎていく。
 伝わってくる情報力。その危険性の正体は―――

 即死攻撃。

 HPも無関係に触れるだけでHPの全てを消滅させる最悪の攻撃。
 それをやり過ごし、顔を上げると再びラインが見える。
 今度は、俺に向かって縦の線。
 反射的に飛びのく。
 しかし、今度の攻撃は酷く―――遅かった。

 パッ パッ パッ

 線が連続で3本。ゆっくりとした動きでこちらに向かって来る。
 それを避けようとする。
 しかし―――

 パッ!

 「4本目だと!」

 今度は速い。 緩急をつけた遠距離攻撃。
 遅い3本が結界のように俺の動きを制限する。
 ギリギリで体を攻撃の隙間に滑り込ませる。
 なんとかやり過ごすが、メデューサの攻撃は続く。
 俺の向かってラインで飛んでくる。
 俺は駆け出す。 
 ライン攻撃を走って避けるが、すぐに足を止めて目前で通り過ぎていくラインをやり過ごす。
 ジリ貧、体力が削られていく。やはり、突破口は接近戦。
 立体パズル的攻撃が俺に向かって来る。 俺はその攻撃に向かって、自ら飛び込んでいった。
 地面スレスレをヘッドスライディングで避ける。
 体を起こす時間すら許されない。俺は腕立て伏せの状態でジャンプ。
 空中で体制を整え、両足で着地。それと同時に横へ避ける。
 ローリング。地面を転がり、やり過ごす。

 (近づけば、近づくほどに回避の難易度が上がる仕様か。体力がどんどん奪われていく)

 だが、俺は前に出るのを止めない。
 死中に活ではないが、いまさら後退して逃げ切るほどの体力は残っていない。
 キャノン砲は激しい動きの中で使えない。足を止め、照準を合わせて攻撃モーションの開始まで、メデューサの攻撃をいくつ受ける事になるのか……考えるのも怖い。
 だから、短剣による投擲攻撃。 手首のスナップを効かせたノーモーションに近い下手投げだ。
 投げた短剣はメデューサの目前に迫ると―――

 バチッバチッ

 「弾かれただと!」

 メデューサの前にシールドが浮かんでいる。
 ガラスのような半透明な壁。
 しかし―――

 「見せてもらったぞ!お前の攻撃を」

 俺は見た。メデューサの攻撃モーション。
 ラインの飛び道具は右手を動かし、シールドは左手。
 さらに接近した俺に向かってメデューサをシールドを張る。
 直前で迂回。メデューサの体を反時計回りに走る。

 「食らいやがれ!」

 シールドの範囲外から剣を走られる。メデューサに一太刀浴びせる。
 ダメージは微小。けど、攻撃を止めない。
 肺が破れるような錯覚、呼吸困難で乱れる視界。

 「今だよカナタくん!あのチートアイテム、キメラのクリスタルを!」

 あっ!と思い出した。
 ボスのドロップアイテム『キメラのクリスタル』
 使用すれば、チートとすら言われる効果があり、高額で取引される……
 そう言えば、あったな。それ!

 俺は、すっかり失念していたソレを取り出した。

  

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