『ザ・ウォリアー』 ~この世界を浸蝕するデスゲーム系の近未来SF&ラブコメディ~

チョーカー

クエストクリア そして……

 視界に纏わりつく泡。実物の泡ではなく網膜に直接投射される泡の映像だ。
 一瞬、HPのゲージが減少する。 どうやら、毒属性の攻撃らしい。
 おそらく、戦闘中にランダムで行われる攻撃なのだろう。
 ……でないとするなら、このタイミングでの使用はありえない。
 開幕で毒を受け、一定時間でHPが減少していくなら、おそらく俺たちは負けていただろう。
 しかし、戦いの終盤。決着直前で使用する攻撃としては、恐ろしくない。

 ―――そのはずだった。

 キーンと俺の剣と弾く金属音。

 一瞬の油断。
 視界が奪われた事によって、俺の剣は、狙いの関節から外れた。
 もしも、敵の顔がザリガニでなければ、勝機を確信したニヤっとした笑み―――
 あるいは、ギラッとした目の光をうかべていたに違いない。

 ザリガニのハサミ―――否。クリュサオルの黄金の剣が俺に向けられ―――
 そして、ソレは振るわれた。

 風を切る音が迫ってくる。

 だが、それだけだった。
 クリュサオルの剣は空振りだった。それどころが、自身の振り回す腕をコントロールできず、前のめりに倒れる。
 一瞬、何が起きたのかわからない。しかし―――

 (あっ、そうか……片腕を切り落とした時に決着はついていたのか)

 俺は気づいた。
 もしも、これが通常のボスなら、無様に倒れる事はなっただろう。
 彼らは実物の野獣を動きのデータとして取り込まれている。
 そして、四足歩行の生物なら、四肢の欠損でも同じように戦い続ける事ができただろう。
 しかし、二足歩行は―――人間は違う。
 片腕を切り落とされ、そのまま戦闘を続行するのはフィクションだけ。
 肉体のバランスが大きく崩れれば、歩く事すら困難になる。
 それでも、右腕を失った瞬間に即座に反撃に至ったのは、流石と言うべきか。

 必死に立ち上がろうと蠢くクリュサオルには反撃の手段は残されておらず―――


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 『第三チェックポイントクリア』

 空中に浮かび上がる文字を前に俺は―――
 「疲れた!」と大声で叫び、汚れを気にせず大の字になった。
 隣では、ルナさんも疲労を隠せずに座り込んでいる。
 俺は寝転んだまま、ルナさんに見せるように拳を作り微笑んだ。
 その意図を理解したルナさんも拳を作り、互いに軽くぶつけ合った。

 「お疲れ」 「はい、お疲れさまです」

 「いや、今日はきつかったね。クエストは、これで終わり?」
 「そう言えば、次のチェックポイントの情報もでてこないですね」

 すると―――

 「勇者よ、ありがとう。よくぞ助けてくれた」

 そう言うのはペルセウス。
 若者の姿ではなく、老人の姿に戻っていた。
 ペルセウスは、いまだ消滅していないクリュサオルの体に近づくと―――

 「そりゃ!」

 と何かをもぎ取った。
 見ればクリュサオルのハサミだ。

 「そなた達へ、せめてものお礼じゃ。これを知り合いの鍛冶職人に鍛えて武器にしてもらおう」

 そう言い残してペルセウスは姿を消した。
 再び現れたのは数秒後。
 その手には2本の剣。もう武器に作り替えたのか? そこはゲーム的仕様なのだろう。

 「それでは、受け取りたまえ」

 ペルセウスの言葉と共に2本の剣は消失。
 その代わり、空中には―――

 『黄金の剣を手に入れた』

 と文字が浮かんでいた。

 (これでこのクエストは終了か……)

 なんとも言えない達成感が湧き出てきた。
 だが―――

 パチパチパチパチパチ…………

 拍手?誰が?

 見れば、黒い男が立っていた。そのまま、拍手をしながら俺たちに近づいてくる。

 そして―――

 ソイツの衣装は喪服だった。

 ソイツの事は忘れもしない。忘れた事もない。

 ソイツは、この『ザ・ウォリアー』をデスゲームへ変えた男。

 『M』が俺たちに近づいてきている。

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