『ザ・ウォリアー』 ~この世界を浸蝕するデスゲーム系の近未来SF&ラブコメディ~

チョーカー

VSメデューサ


 裏ボス『メドゥーサ』

 人型のモンスター。
 下半身は蛇。背中には輝く翼。その爪は猛獣のような凶暴性を秘めている。最大の特長は髪。神話で登場するメドゥーサの代名詞、その長い髪は蛇で構成されている。

 ―――いや、ちがう。

 その異形な髪ですら、最大の特徴ではない、
 最大の特徴は―――巨体だった?

 (デカイ!?)

 4メートル以上はあるか?
 確か、一般住宅で一階の天井は2メートル40センチほど。
 住宅の二階から窓を覗けばメドゥーサの頭上が見えるくらい?
 戦闘開始の範囲は―――

 まだ、余裕がある。
 後ろを向いて逃げ出せば、大丈夫だろう。
 けど、次の瞬間、俺は自分の目を疑った。

 戦闘開始を示す赤いサークル。
 それが爆発的に広がったのだ。

「そんな!バカなっ!」


 叫ぶと共に駆け出し、最前線からの離脱を謀る。
 だが、無理だった。
 足下に黒い影が伸びている。
 空を見上げれば―――メドゥーサが飛んでいる!
 体の大きさに対して、小さな翼だ。

 「おいおい!リアルな戦いを提供するゲームじゃなかったのかよ!」

 明らかに、メドゥーサの巨体に浮力が得られる翼の面積ではない。
 俺の悪態を理解してるわけじゃないのだろうが……メドゥーサは俺に向けて落下してきた。


 轟音

 爆音にも近しい衝撃音。
 巨体を利用した武器は単純シンプルであり、同時に効果的だった。
 食らえば致命的なダメージを受けてしまう。

 もちろん、受ければの話だ

 衝撃は反れた? 俺にはダメージが入っていない。
 舞い上がる砂埃エフェイクトで何が起きたのか一瞬、把握が遅れる。

 いや、違う。庇われたのだ!

 俺の前には彼女がいた。自身の分身である盾を前に彼女が立っていた。
 落下してくるメドューサを盾で受け止め、そのまま戦闘範囲外まで弾き飛ばした。
 俺はその衝撃に彼女の名前を叫んでいた。

 「ルナさんッッ!?」

 俺の声に反応して彼女が振り向いた。

 「カナタさん。私は戦います。そうすれば、もう少し……」


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・


 あり得ない。いくらなんでも―――
 巨体のメデューサの落下を受け止め、そのまま投げるように弾き飛ばすなんて―――
 しかし、同時に気がついてしまった。

 過去、今までの戦闘―――

 例えば、クリュサオル戦―――

 例えば、パーシ戦―――

 例えば、不死鳥フェニックス戦――――

 彼女は基本的ベーシックタイプであるはずの猛獣系の情報アノテーションと真っ向勝負を行っていなかった?

 ならば、これが―――

 『ドラゴンアーマー』 

 一切の制限から解き放たれたルナさん本来の実力なのか。

 そんな絶句する俺に彼女は何を思うのか?
 彼女は語る。その胸に秘めていた思いと現在の心境を。

 「これで、少しだけ前に進める気がするんですよ」
 「前に?」
 「ここでメデューサを倒しても償う事はできません。できるはずもありません。
 あの日、もしも私に勇気があれば、戦う事が出来たのなら―――
 彼女を―――『姫』を救えたかもしれません」


 ―――ドックン―――

 ルナさんの言葉に心音が高まる。

 「それ以上はダメだ。口実を与える事になる」

 ―――そう伝えたいはずの口が動かない。
 口実? 誰に? 無論、俺にだ。
 俺が貴方に原因を、責任を求めてしまう口実だ。

 「貴方あなたには、なんの責任はない」

 ―――そう言ってあげるほど、俺には強靭な精神など望めず。
 弱いのだ。誰かに責任を求めないと生きていけないほどに、俺の精神は弱体化していて―――
 その対象は誰でも良くて―――

 「だから、私は弱い私を断ち切るために戦います」

 暗黒の意志が俺の中で蜷局とぐろを巻いている中、彼女の澄んだ声が入ってい来る。
 清らかさすら宿る声は、意外性を秘めており―――  

 「え?」と思わず聞き返した。

 「私が逃げた事で犠牲者が出た。それを忘れたりしません。十字架を背負って生きていきます。―――でも、まだ戦う事で彼女を救えるのなら―――私は前に進むしかないのでしょ」

 「―――ッッッ!?」

 俺と同じだ。俺が陽葵に向ける感情は―――
 いや、同じだった。過去形だ。
 彼女は、全てを背負い込み、それでも前に進む事を選択した。
 すでに俺とは違ってしまっている。―――なら、俺は?

 彼女と同調した感情。
 俺は―――彼女が克服したソレを―――俺は抑え込んでいる。
 本来『M』に向けるべき、恨みや怒り、あるいは呪い。その暗黒の意志を妥協しようとしていた。
 そう妥協だ。
 誰でもいい。誰でもよかった。
 抑え込んでいたソレは―――暗黒の意志は―――限界点を越え、身近で、手ごろな人間に―――ルナさんに、その矛先を向けようとしていた。
 だが、ルナさんは克服した。 俺の目の前で克服してみせた。
 だから―――

 「カナタさんは、逃げてください」

 ルナさんの声と同時に携帯端末ディバイスに送られてきたメッセージは―――

 『このPTを解散しますか? YES/NO』

 「これは私が私に戻るための戦い。カナタさんを巻き込みたくありません」

 彼女は、晴れ晴れとした表情で言う。
 その束縛から解かれた精神は気高く、美しいとすら思ってしまう。
 ならば―――

 「へっ?巻き込まれたくないだって?もうとっくの昔に巻き込まれるけどね」

 可能な限り、お道化おどけた口調を演出。メッセージに『NO』を選択した。
 それが意外だったのか、ルナさんは驚きの表情を見せた。
 そんなに俺が逃げると思っていたのか? もっとも逃げるどころか、貴方に対して攻撃的になる直前だったんだぜ?そういうと彼女は、どんな表情を見せてくれるだろうか? 
 残念ながら、それを試す機会はなさそうだけどね。

 「じゃ、2人で人間大蛇退治と洒落込むとしようか」

 そんな俺の発言に割り込むように

 『2人じゃなくて3人だけどね』 

 声が頭上から振ってきた。そこには陽葵がいた。 


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