『ザ・ウォリアー』 ~この世界を浸蝕するデスゲーム系の近未来SF&ラブコメディ~

チョーカー

黄金の剣の正体

 黒い球体が水面に沈み。

 1秒―――

 2秒―――

 3秒――― 

 水面下で何かが蠢く。
 そう認識できた次の瞬間、水面が爆発した。
 巨大な水柱が上がる。打ち上げられた水分が重力に従って落下。
 雨のように降り注いでくる演出。無論、演出だ。デジタルの雨。
 実際に水が落ちてきているわけではない。
 だが、その雨で敵の姿がハッキリと見せない。
 そういう演出なのだ。
 そして、雨が晴れたあと――― 

 「あれがクリュサオル……」

 俺は呟いた。
 ソイツの体は怪物だった。
 川の中に生息する水生生物をかたどったのか?
 その姿は―――赤かった。
 二足歩行であるが、人間のような印象は受けない。
 人間ポイのは下半身だけだ。一方の上半身はと言うと―――
 カニ? ……いやザリガニか?
 甲殻類の亜人と呼べばいいのだろうか?
 だが、俺は、その姿に納得した。

 『そうですね。クリュサオルと言うのは剣を持って生まれた人間……あるいは怪物の事のはずですが……』

 ルナさんの言葉を反復させた。

 「生まれながらに剣をもって生まれた人間…怪物。その解釈がこれか」

 確かに甲殻類クリュサオルはハサミという形で剣を左右に計4本も所有していた。
 そのクリュサオルを前にペルセウスが立ちはだかる。
 若返って見えたの錯覚ではなく、老人の姿を捨て、青年の姿になっている。
 突如として若返った理由もあるのかもしれないが、どうやらこのシーンでは提示されないみたいだ。

 「ここでクリュサオルを倒す。よかったら手伝ってくれ」

 ペルセウスを俺たちに言った。
 俺はルナさんに向かって肩をすくめるようなポーズを見せた。
 言葉では、あくまで頼みであるが、クエスト的には強制戦闘だ。
 俺たちには断るという選択肢は用意されていない。

 「では、いつも通りに私が前衛で行きます。カナタさんは一撃離脱ヒットアンドアウェイでおねがいします」

 俺は頷いた。
 俺とルナさんのコンビネーションは短期間ではあるが、毎日2人で戦ってきた自負がある。
 あるのだが……不安要素がある。
 俺たちと共に戦闘に挑むプラス1人の人物。ペルセウスだ。
 その戦闘能力及び戦闘方法、さらには攻撃法どころか武器すら不明だ。
 共闘と言っても、即席のチームプレイは望めない。
 そんな不安要素を持ったまま、戦闘開始を告げる『GO』サインが宙に浮かんだ。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 開始直後、前衛のルナさんが盾を構えてザリガニ男―――クリュサオルに向かっていく
 だが、前衛職なんて無視して飛び出してくペルセウスさん。
 「おいおい!」俺は呆れて声が出た。
 いくら、AIだからと言っても開始と同時に前に出るなんて……
 戦闘中にペルセウスさんが死亡したら、クエスト失敗なんてならないだろうな?
 だが、そんな心配をよそに、手にした武器―――黄金の鎌を振るう。
 クリュサオルはハサミ―――黄金の剣で受ける。
 黄金の鎌VS黄金の剣だ。
 しかし、ペルセウスの武器は黄金の鎌と鏡の盾。
 対して、クリュサオルの黄金の剣は4本だ。
 攻撃の手数が違う。 
 クリュサオルは突き、突き、突きと連続攻撃。
 ペルセウスは盾で弾くのが精いっぱい。片手の武器が鎌では反撃する事も難しいようだ。

 ここでようやく、ルナさんが戦線に加わる。

 ペルセウスを囮にしてクリュサオルの側面に狙いを絞り、長剣による突きを試みている。
 そして、その突きはクリュサオルの腋下に吸い込まれていく。

 キーン

 しかし、金属音。ルナさんの突きは弾かれたみたいだ。
 クリュサオルがハサミで払ったり、受けたりしたのではない。
 その甲殻類の肉体が天然の鎧と化してるみたいだ。

 (通常攻撃では、その肉体にダメージは通らない?) 

 援護攻撃として、前衛に飛び込もうとしていた俺は足を止める。
 陽葵のキャノン砲に切り替えるか?しかし―――
 前方を確認する。明らかにペルセウスの不規則ランダムな動きに砲撃を合わせれる自信はない。
 イチかバチか、砲撃に頼ったギャンブルよりも、使い慣れた2つの短剣を選択する。
 戦闘スタイルもルナさんの支持通りの一撃離脱ヒットアンドアウェイを徹底する。
 ルナさんの盾捌きでクリュサオルが体勢を大きく崩す。

 (チャンスだ!)

 俺は一気に加速する。
 狙いは助走をつけ、双剣による突き。
 加速の勢いを殺さぬよう飛び上がる。
 そして、クリュサオルの体に体当たりの如く、剣を突き刺す。
 その効果は?

 (これでも足りないのかッ!)

 弾かれる事はなかったものの、俺の剣はクリュサオルの体を僅かに傷つけた程度のダメージを与えた。
 極僅かなダメージだ。
 俺は反撃カウンターを恐れて、双剣と引き抜く。
 だが、クリュサオルのハサミの方が速い。横薙ぎの一撃が飛んでくる。
 回避は……不能。
 そう判断した俺は剣でガード。
 それと同時にダメージ判定を軽減するため、自ら横にジャンプした。

 幸い、ここは河川敷。
 地面もコンクリートではなく、柔らかい土に芝生のような草。
 そのままダイブしても、怪我の心配は皆無。
 だが―――

 「だが、強い!」

 このザリガニ男を倒すために作戦を思いつかなくてはならない。

 

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