『ザ・ウォリアー』 ~この世界を浸蝕するデスゲーム系の近未来SF&ラブコメディ~

チョーカー

普通の食事風景 その1

 「ルナさん、食べれそうですか?」
 「……いえ、流石にこの量は……ムリかと思います」
 「わかりました。あっすいません取り皿ください」

 俺は奥さんに取り皿を頼んだ。

 「?」とクエスチョンマークを浮かべているルナさんに

 「食べれそうにないなら、少しいただきます。1枚……いや、2枚」

 「ありがとうございます」と嬉しそうな声で返事が返ってきた。
 しかし、圧巻。ハンバーグは7枚になった。

 「言い忘れていましたが、ごはん、スープ、サラダはおかわり自由です」

 奥さんの言葉に噴き出しそうになるが、なんとか耐えた。


 『お昼ランチ ハンバーグ定食』

 あらためて見ると規格外の魔物モンスターだ。
 添えられたパスタは高く、まるでスカイツリー。
 だとしたら、隣でドンブリに盛られた白米は富士山か?
 じゃ、この5層のハンバーグは―――

 「バベルの塔……か」

 古代の時代。
 天に挑んだ人間達が神の怒りを受け崩壊された塔。
 これに挑んだ人間チャレンジャー達も打ち砕かれてきたのだろう。

 「だが、俺も後ろを見せるわけにはいかない」

 俺は、まずフォークでハンバーグに刺す。

 (む?硬い?)

 僅かであったが、確かに伝わってきた硬度。
 この正体は一体……
 その違和感の正体はすぐにわかった。
 続けて装備したナイフをハンバーグに切りつける。

 次の瞬間―――

 天に昇る湯気と共に内部から溢れだした液体。
 周囲を制圧せんと広がりを見せるそれは―――

 「肉汁だと!?このためだったのか!」

 俺は瞬時に判断する。
 ナイフとフォークを入れた瞬間の硬度。
 それは、この肉汁を閉じ込めるために外をコンガリと焼いていたのだ。
 ハンバーグには、蕩けたチーズとソース。ハンバーグを強化するためパフ効果があるように見える。
 だが、俺はあえてソレを無視する。 一口目は肉本来の味わいを楽しむため。

 「なんてジューシーなッッッ」

 口内が一瞬で肉汁へ支配権が移る。ある種の暴君的な美味。

 「嗚呼、美味い」

 次の俺はソースとチーズを肉へ絡ませる。

 ここで問題だ!チーズとは何か?

 そう―――

 答えは乳製品。

 つまり、その主な成分は牛乳であり、
 チーズが牛肉に合うのは血の宿命。運命と言い換えてもいいだろう。
 トロリとした食感。暴君が優しさで包まれたコレは何だ? 何に例えればいい?
 決まっている。母の愛だ。そう―――俺は母の愛を食しているのだ。
 ハンバーグにチーズの乗せる。ただそれだけだ。それだけのははずが―――
 ここまで背徳感に包まれた食事に変化するのだ!

 「―――ッッッ!?」

 もはや、表現する言葉を探す事すらもどかしい。
 ただ、うまいと表現する事が万人に伝える事ができない語彙力のなさに絶望する。
 しかし、絶望にも光が差す。それがサラダだ。

 サラダ。ただのサラダ?いや、されどサラダだ。

 それは温野菜のサラダだった。
 ブロッコリー、ニンジン、キャベツ、アスパラ……待て待て、何種類の野菜が入っていやがる。
 凄いボリュームだ。一見すると普通の温野菜のサラダに思える。
 しかし、個々の野菜で茹でるベストタイミングに個差があるはず。
 一度に一気に……なんて真似は不可能。
 ならば……これは……手間暇だ。手間暇をかけて作ったサラダ。
 そう言ってしまうと普通だと捉えかねない。そんなはずはないのに……
 1つ、口に運ぶと、そのサッパリとしたドレッシングに驚く。

 「……なるほど。これはリセットか」

 メインのハンバーグ。
 カロリーの破壊力は「カロリー?何それ?」と言わんばかりの超ヘビー級。
 その一口、一口が強烈なボディブローのようなもの。
 だから、このサラダなのだ。 サッパリとお口を整え、お肉を味わうためのサラダ。
 つまり、ダメージをリセットするために巧妙な計算が隠されている。
 このサラダがある限り、我々は戦い続けれるのだ。
 絶望は許された。

 しかし、まだ食事は終わらない。
 なぜなら、俺は2品目を食べたにすぎないからだ。
    

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