『ザ・ウォリアー』 ~この世界を浸蝕するデスゲーム系の近未来SF&ラブコメディ~

チョーカー

パーシ戦の勝利 第二チェックポイントクリア

 俺は剣を振るう。

 それを剣戟と言うには遥かに拙い。

 『武器は腕の延長』

 そんな言葉もある。

 本来、それは武器を持った相手に対して腕の延長だと思って対処しなさいという教えなのだが、
 今の俺の剣技が文字通りに『武器は腕の延長』でしかない。
 技巧もなく、デタラメに、ただ腕を振るう。
 腕の振りに武器がついてくる。 そんな感覚。
 心臓がいつ破裂してもおかしくない爆弾と化すような感覚。
 体を無理やり動かすたびに腱や靭帯、あるいは筋肉が傷つく感覚。
 目や鼻から血が流れ落ちてもおかしくない。あるいは体内に張り巡られた血管のいくつかは破裂しているのかもしれない。
 脳の稼働限界は遥かに超えている。 何か思考するたびに、世界がブレる。
 気がつけば時間が飛んでいる感覚。 意識の消失してなお、動き続ける体に感謝したい。
 そんな人間の体に訪れるはずのない奇蹟を感じながら―――
 同時に残り時間を突きつけてくる現実。
 それは刹那な超過も許されない厳守の約束。 
 その約束を破ったら? それは―――
 その心配は不要の物だ。なぜなら―――
 背後から声が聞こえてくるじゃないか。
 闘争の時間に似つかわしくない澄んだ―――そして、よく通る薄くしい声。
 そこ声が聞こえる場所がここ、戦場の場では、ある種の狂気ですらある倒錯的な美しさ。

 「ハット…ハット…ハット……


  Attenhut(注目しなさい)!」


 俺には確かに聞こえていた。
 確かな―――ルナさんの声。

 そして、それは来た。

 パーシに一刀両断され、ゲーム的な擬似死を迎え行く俺。
 背後からデジタルの盾が俺の体を通過していく。
 その直後―――やっぱり、覚悟はしていたけど……

 人生二度目の衝撃と浮遊感。

 背後のルナさんからタックルでリフトアップされた俺は腕を組み、ふんぞり返ってどや顔を見せつける。
 パーシに伝えるのだ。 これが俺たちの完全勝利だと!

 それはブルドーザーか、重戦車か。

 パーシは大きく後方へ吹き飛ばされる。 
 それに合わせてルナさんが前に出る。 既に俺は投げ捨てられ、道端に着地した。

 ルナさんの連撃は続く。

 デジタルの盾は重さがない。
 しかし、デジタルの住民であるパーシに取っては逆だ。ルナさんの盾は重圧な鉄の塊と同じ。
 その鉄の塊を片手でルナさんは操る。それの動きは、まるで闘牛士が猛牛を前に振るうケープの布のようだった。
 合成音だと分かっていても、その打撃音はグロテスクに感じる。
 パーシは必死にガードを固めているが、鉄の暴力を前には無意味としか思えない。
 さらにルナさんの盾捌きに剣技が加えられる。
 突き主体の攻撃は、ますます闘牛士らしさを加速させた。

 パーシのガードは盾で弾かれ、無防備になった体にルナさんの剣が吸い込まれていく。

 そして、ついにパーシは両膝を地面へつき―――動かなくなった。

 「勝ったのか?」

 ゲームオーバーになった俺には―――既に敗者になった俺には、それを知るすべはない。
 ―――いや、あった。
 ルナさんが親指を立てて、サムズアップ。
 勝利を知らせてくれた。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 勝利となったわけだが―――
 PTパーティ登録した俺も、クリア扱いになったみたいだ。
 デスペナルティ―――ゲームオーバーになった時にペナルティとして、一定時間、ゲームに参加できなくなる。
 しかし、クエストのストーリー進行には無関係らしい。
 クエストは進行する。

 その最後は胸にルナさんの長剣を受けたはずのパーシだが……
 現在は片膝を地面につけて、ダメージというよりも疲労で動き無くなっているように見える。
 まぁ、そのゲーム的な演出ってやつだ。

 「愚かな……」

 パーシが呟く。
 そして、こう続けた。

 「じじぃに騙されやがって……」

 え?騙された?あの老人に?
 パーシは指を指す。どこに?その方向に目を向けると―――

 あの老人がいた。

 パーシの腕から離れた「呪われし剣」それを握りしめて。

 「まずはご苦労さま。わしの剣を取り戻してくれて」

 労い言葉とは裏腹に、その表情は感謝などと言うものは浮かんでいなかった。
 浮かんでいる表情を言うならば―――

 『悪意』

 純粋な悪意がそこに見える。

 「そうじゃ……褒美を与えてねばなるまい」

 戦闘が始める。
 そう察して、気を張り詰める。
 連戦?パーシと同レベルの相手?あるいはそれ以上か?
 ―――緊張感。それが漂るが……

 老人の通り、アイテムが配布された。

 そして、空中には―――

 『第二チェックポイントクリア』

 と文字が浮かび上がっていた。

 「どうやら、ここで一休みできそうですね」とルナさん。
 「えぇ」と俺は頷き、

 「ここで話が止まるのは、ちょっとした肩すかしですね」

 そう付け加えた。
 同じことをルナさんも思っていたのか、彼女も少し笑っていた。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・


 どうやら、幸いにも連戦は免れたみたいだ。
 しかし、パーシという強敵を倒せばクエストクリアだと思ったのだが……
 さらなる強敵の予感に―――俺は寒気を感じた。


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