『ザ・ウォリアー』 ~この世界を浸蝕するデスゲーム系の近未来SF&ラブコメディ~
昼休息
俺は道を歩いている。
場所は繁華街だ。
手近なカフェみたいなのを見つけて、「ここはどうです?」とルナさんに聞く。
ルナさんは首を横に振り「ここはちょっと……」と拒否した。
「前にも来た事あるんですが……」
「?」
「やっぱりオシャレで立地条件が良い分、割高なんですよ」
「あー」と唸った。
確かに、高校生が背伸びして入るには仕切りが高い(値段的な意味で)のかもしれない。
「……となると穴場でリーズナブルな価格設定なお店。それにファーストフードは除外して……」
俺は少し悩む。
隣のルナさんは「ファーストフードでもかまいませんよ」と言ってはくれるが―――
さて、どうしてこうなったのか?
どうして、陽葵が言ったようにデートに近い状態になっているのか?どうして陽葵の予言が当たったのか?
それを説明しなければならないだろう。
しかし、まぁ―――説明と言っても単純な話だ。
神社を舞台にした第二チェックポイントをクリアした俺たちは、第三チェックポイントへ移動する必要がある。携帯端末『サラブレッド』には、第三チェックポイントへの地図が送られ、空中には矢印のアイコンが浮かんでいる。
だが、時間は昼時。
パーシという難敵を打倒する事に成功した俺たちだが、食事と休息が必要だと判断した。
おそらく、いきなりクエストの難易度が下がるという事はない。
まさか、ここから特定のモンスターを倒してドロップアイテムを集める『おつかいクエスト』に変わるはずがないだろう。
パーシ以上の難易度。
そんな敵の出現は想像するのも難しいのだが……たぶん、出現するんだろうなぁ。
兎にも角にも、作戦会議の意味合いも兼ねて食事のできる店を探している。
昨日のファミレスって案もルナさんから出たが、偶然にもアキさんと出会った状況を思え返せば、敬遠した方がいいのではないだろうか? そう思って、新しい店の開拓する事にした。
「ここにしようか?」
目についたのは洋食屋。
そこは繁華街から、少し外れた場所。
一見すると民家と見間違うお店。
外に出してあるメニューが書かれた黒板。出入口に吊るされた小さな看板。
その2点だけが辛うじて洋食屋さんだと主張している。
たぶん、近所のマダムの隠れ場的名店に違いない。
そのまま、中にはいると―――
「いらっしゃいませ」
やけに渋い声だった。
その声の主が店の主人なのだろう。
白いエプロンを身につけ、白いコック帽子を頭に乗せている。
無骨そうな主人に可愛らしいさを付加させてギャップを生み出そうとしているのか?
だとしたら、そのセンスは素晴らしいと手離しで誉めざる得ない。
続けて出て来たのは奥さんだろうか?
「どうも、いらっしゃいね」
主人と比べて柔らかな印象を受ける。
2人並ぶと不思議とバランスが取れて見える。
ランチは……土曜日だから、少し割り増しなのか。それでも、十分にリーズナブルな価格設定。
俺とルナさんは2人ともランチを頼んだ。
「コーヒ-は食後にお願いします」
「あっ私も」
「かしこまりました」
奥さん……と思わしく従業員さんが去って行った。
「それじゃ、お疲れさま。少し気が早いかもしれないけど……」
俺は氷と水が入り、冷えたグラスをルナさんに向けた。
ルナさんはすぐに意図を理解したらしく、グラスと持ち上げて、俺のグラスへ「カチーン」とぶつけた。
「「乾杯」」
2人、声があった。 ルナさんは笑っていた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「さて、第三チェックポイントってどうなると思います?」
食事はまだテーブルに届いていない。
手持ち無沙汰の話題振りにルナさんの予想を聞いてみた。
「ん~ 地図だと、ここが開始場所ですよね」
ルナさんが『サラブレッド』を操作すると空中にデジタルの地図が浮かび上がった。
第三チェックポイントの開始場所は―――
「川ですかね?」
地図に刺されている場所は水色の部分。
正確に言えば橋だ。
地図を拡大して橋の名前は確認する。
『植守川橋』
現地の写真も見たが、変哲のない橋と川だ。
周囲は……閑散としている。
よく確認すれば川の左右に河川敷があり、橋の下まで行けそうだ。
「河川敷の広場でバトルか……橋の下で何かを探索するのか……」
俺の想像力ではこれが限界だ。
降参とばかりにルナさんの方をみる。
彼女に意見を求めたかったのだが―――
「お待たせしました」
例の奥さんが食事を持ってきた。
「……」
「……」
俺とルナさんはフリーズした。
その原因は、ランチの量にあった。
「冗談だろ?」
俺の呟きは、店の主人と奥さんに聞こえただろうか?
しかし―――目の前のランチ。
ご飯はどんぶりで盛られ、おかずにハンバーグが5枚重ね。その上にチーズがたっぷりと蕩けている。
ハンバーグを守るようにそびえ立つのはパスタの山。 サラダとスープが通常サイズなのが非現実で逆に笑えて来る。
つまり、大食いメニューがやってきた。
おかしいぞ。俺が頼んだランチは、通常のハンバーグセットだったはず。
「うちはこれが通常サイズなんですよ」
営業スマイルを浮かべる奥さん。先に言ってくれと怒鳴る事はできない。
思い返してみれば、出入り口付近。
目立たぬように飾られたサインと写真。あれには大食いタレントが多数写っていた事に今更ながら気づいた。
視線とルナさんに向けると、彼女の表情は青ざめていた。
彼女も俺も大食いではないらしい。
「ふぅ……」
ため息を1つ。俺は新たに出現した戦場にダイブした。
場所は繁華街だ。
手近なカフェみたいなのを見つけて、「ここはどうです?」とルナさんに聞く。
ルナさんは首を横に振り「ここはちょっと……」と拒否した。
「前にも来た事あるんですが……」
「?」
「やっぱりオシャレで立地条件が良い分、割高なんですよ」
「あー」と唸った。
確かに、高校生が背伸びして入るには仕切りが高い(値段的な意味で)のかもしれない。
「……となると穴場でリーズナブルな価格設定なお店。それにファーストフードは除外して……」
俺は少し悩む。
隣のルナさんは「ファーストフードでもかまいませんよ」と言ってはくれるが―――
さて、どうしてこうなったのか?
どうして、陽葵が言ったようにデートに近い状態になっているのか?どうして陽葵の予言が当たったのか?
それを説明しなければならないだろう。
しかし、まぁ―――説明と言っても単純な話だ。
神社を舞台にした第二チェックポイントをクリアした俺たちは、第三チェックポイントへ移動する必要がある。携帯端末『サラブレッド』には、第三チェックポイントへの地図が送られ、空中には矢印のアイコンが浮かんでいる。
だが、時間は昼時。
パーシという難敵を打倒する事に成功した俺たちだが、食事と休息が必要だと判断した。
おそらく、いきなりクエストの難易度が下がるという事はない。
まさか、ここから特定のモンスターを倒してドロップアイテムを集める『おつかいクエスト』に変わるはずがないだろう。
パーシ以上の難易度。
そんな敵の出現は想像するのも難しいのだが……たぶん、出現するんだろうなぁ。
兎にも角にも、作戦会議の意味合いも兼ねて食事のできる店を探している。
昨日のファミレスって案もルナさんから出たが、偶然にもアキさんと出会った状況を思え返せば、敬遠した方がいいのではないだろうか? そう思って、新しい店の開拓する事にした。
「ここにしようか?」
目についたのは洋食屋。
そこは繁華街から、少し外れた場所。
一見すると民家と見間違うお店。
外に出してあるメニューが書かれた黒板。出入口に吊るされた小さな看板。
その2点だけが辛うじて洋食屋さんだと主張している。
たぶん、近所のマダムの隠れ場的名店に違いない。
そのまま、中にはいると―――
「いらっしゃいませ」
やけに渋い声だった。
その声の主が店の主人なのだろう。
白いエプロンを身につけ、白いコック帽子を頭に乗せている。
無骨そうな主人に可愛らしいさを付加させてギャップを生み出そうとしているのか?
だとしたら、そのセンスは素晴らしいと手離しで誉めざる得ない。
続けて出て来たのは奥さんだろうか?
「どうも、いらっしゃいね」
主人と比べて柔らかな印象を受ける。
2人並ぶと不思議とバランスが取れて見える。
ランチは……土曜日だから、少し割り増しなのか。それでも、十分にリーズナブルな価格設定。
俺とルナさんは2人ともランチを頼んだ。
「コーヒ-は食後にお願いします」
「あっ私も」
「かしこまりました」
奥さん……と思わしく従業員さんが去って行った。
「それじゃ、お疲れさま。少し気が早いかもしれないけど……」
俺は氷と水が入り、冷えたグラスをルナさんに向けた。
ルナさんはすぐに意図を理解したらしく、グラスと持ち上げて、俺のグラスへ「カチーン」とぶつけた。
「「乾杯」」
2人、声があった。 ルナさんは笑っていた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「さて、第三チェックポイントってどうなると思います?」
食事はまだテーブルに届いていない。
手持ち無沙汰の話題振りにルナさんの予想を聞いてみた。
「ん~ 地図だと、ここが開始場所ですよね」
ルナさんが『サラブレッド』を操作すると空中にデジタルの地図が浮かび上がった。
第三チェックポイントの開始場所は―――
「川ですかね?」
地図に刺されている場所は水色の部分。
正確に言えば橋だ。
地図を拡大して橋の名前は確認する。
『植守川橋』
現地の写真も見たが、変哲のない橋と川だ。
周囲は……閑散としている。
よく確認すれば川の左右に河川敷があり、橋の下まで行けそうだ。
「河川敷の広場でバトルか……橋の下で何かを探索するのか……」
俺の想像力ではこれが限界だ。
降参とばかりにルナさんの方をみる。
彼女に意見を求めたかったのだが―――
「お待たせしました」
例の奥さんが食事を持ってきた。
「……」
「……」
俺とルナさんはフリーズした。
その原因は、ランチの量にあった。
「冗談だろ?」
俺の呟きは、店の主人と奥さんに聞こえただろうか?
しかし―――目の前のランチ。
ご飯はどんぶりで盛られ、おかずにハンバーグが5枚重ね。その上にチーズがたっぷりと蕩けている。
ハンバーグを守るようにそびえ立つのはパスタの山。 サラダとスープが通常サイズなのが非現実で逆に笑えて来る。
つまり、大食いメニューがやってきた。
おかしいぞ。俺が頼んだランチは、通常のハンバーグセットだったはず。
「うちはこれが通常サイズなんですよ」
営業スマイルを浮かべる奥さん。先に言ってくれと怒鳴る事はできない。
思い返してみれば、出入り口付近。
目立たぬように飾られたサインと写真。あれには大食いタレントが多数写っていた事に今更ながら気づいた。
視線とルナさんに向けると、彼女の表情は青ざめていた。
彼女も俺も大食いではないらしい。
「ふぅ……」
ため息を1つ。俺は新たに出現した戦場にダイブした。
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