『ザ・ウォリアー』 ~この世界を浸蝕するデスゲーム系の近未来SF&ラブコメディ~

チョーカー

一閃の攻防と勝機

 パーシは何度も立ち上がってくる。
 ゾンビのような生命力を有し、至近距離での砲撃を受けても、なお―――
 奴は立ち上がってくる。

 「……怪物」

 その二文字が脳内で、何度目もリフレインが起きる。
 他に彼を表現する言葉があるだろうか?あるなら教えてほしい。
 パーシが俺を睨みつける。まるで内蔵を素手で掴まれたかのような威圧感を受けた。
 ―――そして

 その直後、パーシは吠えた。 

 「うがぁあああああああああああああああ!」

 かつて放った裂帛の気合は見る影もなく、あるのは獣じみた遠吠えのみ。
 それは動きにも如実に現れており、獣と化したヤツは―――
 俺に向けて真っ直ぐ、一直線に駆けてくる。

 だが、俺はその動きに合わせて―――
 冷徹に冷酷に、なによりも冷静に―――
 キャノン砲の標準を合わせる。

 「ファイアあぁぁぁぁぁぁ!?」

 俺の掛け声と共に砲弾がパーシに向かう。
 それをついに―――

 『ぶーん』と風切音が聞こえた。それと共に謎の金属音も…… 

 パーシは剣を振るい、やってのけたのだ。
 自身に向かって来る巨大な弾丸の切断を―――

 だが、俺はパーシを信頼していた。

 信頼? 

 そう信頼だ。 何に対しての信頼か?
 ……彼の強さ? そう、必ず彼なら―――
 弾丸を切断するだろうと信頼して俺は大地を蹴っていた。

 それは恐怖からの逃走に似ている。
 自身に襲い掛かってくる圧倒的恐怖感。
 それから逃げ出すために―――恐怖の源を排除する。
 そのために駆け出していたのだ。

 2人の距離―――間合いが縮まっていく。

 「せぇいやぁ!」

 俺はリーチの長い砲台を槍のように突き出す。
 それをパーシはマトモに喰らった。
 どうやら、彼が砲弾の切断に成功した代償も0ではないみたいだ。

 「へっ……まだ救われる話だ」

 一気に最前線に躍り出た俺は装備をキャノン砲から双剣にチェンジする。
 俺はそれをパーシに向けてデタラメに振るった。
 それをパーシが剣で弾いた。

 「―――ッッッ!?凄いな!」

 俺は、絶賛の声を出して驚いた。
 パーシはデジタルの存在。そこに実在してるわけではない。
 無論、パーシの剣も幻想デジタルに過ぎない。
 だが、確かにパーシは俺の剣を弾いて見せたのだ。
 次から次へ繰り出す俺の剣戟もパーシは受けて見せる。

 あり得ない?

 確かに他の要因―――何か、原因があるのかもしれない。
 しかし、例えばARの情報として存在している陽葵が、物体を持って動かせるのと同様に―――

 情報力。

 圧倒的情報力。
 その力が現実の俺たちに何らかの影響を与えてもおかしくはない……のかもしれない。
 俺は笑った。 見ればパーシも笑っている……気がする。
 楽しい時間だ。 しかし、いずれは楽しい時間は終わりがやってくる。
 そして、それは今だ。
 パーシの剣戟に対抗できたの俺の力量ではなく、単純に武器の差。
 長剣のパーシに対して、短剣の二刀流の俺。
 単純に手数で格上のパーシに肉迫することができていたのだ。

 だが、ついに俺の技術は俺の限界を超えた。

 急に、体が俺の意志を裏切る。
 目では十分に追えるパーシの剣。意識はハッキリとしている。
 ただ、体だけが動かないのだ。 
 そのまま、上段の構えを取るパーシは、一瞬、目を伏せたように見えた。
 もしかしたら、そう望んだ俺が見せる幻影なのかもしれない。
 そして、パーシは俺の体を切り捨てた。

 袈裟切り

 右肩から左臀部に向けて俺の肉体に線が走る。
 ダメージエフェクトが赤く、血を連想させる。
 HPは一気に減少を始めて、ついには0の数字を表示―――

 「今だ!俺ごと行けえぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 俺は叫んだ。
 そんな必要はないのかもしれない。
 俺の相棒―――ルナさんは、既に攻撃を完了していた。

 ゲームオーバー直前の俺の体をすり抜けて、後ろから盾が出現した。
 俺の背後にいたルナさんが必殺技を放っていたのだ。


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