『ザ・ウォリアー』 ~この世界を浸蝕するデスゲーム系の近未来SF&ラブコメディ~

チョーカー

夜空を駆けて

 ファミレスを飛び出し、左右を確認する。
 日は完全に沈み、夜を迎える。 暗闇が支配する中ってやつだ。
 遠く、街灯の僅かな光で照らされるルナさんは見つける。
 ルナさんはファミレスを飛び出したまま、速度を維持して走っていた。
 俺が、その場で数秒でも足を止め続けたら、もう追いつけてないほど距離は離れているだろう。
 それを追いかけて、全力疾走。
 大地を蹴り、腕は素早く振る事で下半身へ連動させる。
 それでも―――

 「速いッ!」

 ルナさんとの距離は縮まない。
 吸い込んだ酸素が体内に留まり、肺に蓋をするかのように吐き出せない。
 心臓が大きくなったり、縮んだり―――心音?うるさい。
 なんで目から涙が零れ落ちるんだ?汗?わからない。

 「ウソだろ?おい!」

 俺だって、バーチャルとは言え、毎日猛獣と戦ってるんだぞ?
 体力には自信のあるほうだ。 それが、このざま?
 あぁ、そりゃそうか。なんだかんだでルナさんは上位プレイヤー。
 今までのPTパーティプレイだって、当たり前の動きを当たり前に行っていた。
 だから、そのプレイスタイルに凄みを感じる事はなかった。けど―――
 与えられた仕事を粗相なく執行する。それも即興の協力プレイで……だ。
 それが、どのくらいとんでもない事か。

 (結局、俺は陽葵に追いつくどころか、ルナさんの力量する測りきれていない雑魚野郎だったのか……) 

 体が発するSOS信号。それはそれに従い足を止めた。
 もう無理だ……と。もう走れない……と。
 だが――― けれども―――

 「へっ……上等だ!」

 そのまま、口から漏れた液体を袖でふき取る。

 「今は勝てないだろうが、食いついてやる」

 俺は、再加速をした。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 「ぜっ……ぜッ……」
 「…ぜッ……ぜっ…」

 人の気配はなく、静寂な夜に2人の乱れた呼吸音だけが静かに聞こえる。
 何か話さないといけなかったはずが、疲労と呼吸困難によって頭の動きが鈍くなっている。
 もう、記憶を呼び出す事すら、億劫って感じになっている。

 「どうして、追いかけてきたんですか?」

 俺よりも早く、平素に戻ったルナさんが問いかけてくる。
 ふざけんな。こんな状態で答えられるかっての!
 心で悪態をつくが、本人に直接言えるはずもなく―――

 「……ちょ、少しだけ待って……呼吸を…ととのえ、させて……」

 俺は道路に大の字に寝そべる。
 都会でもなく、田舎でもなく、中途半端な町から眺める星空は、やはり中途半端であった。

 「これじゃ、なんて僕はちっぽけな存在だ、なんて浸れないぜ」

 天に唾を吐くと言うより、夜空に唾を吐いてみた。
 うん、いつもの俺だ。
 「よっと」の掛け声で体を起こす。

 「さて、どうして追いつてきた……か」

 ルナさんの言葉を繰り返した。
 けど、

 「残念だけど、意味なんてないよ」

 「え?」とルナさんは俺を見る。

 「追いかけたいから追いかけた。意味なんて後からいくらでも後付けできるけど、なんかソレも違うから……」

 ルナさんは俺の言葉をどう受け止めただろうか?
 それを考察する気力と体力は俺に残っていなかった。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 「流石に、帰ってしまったか」

 俺はルナさんを連れてファミレスに帰ってきた。
 店内にアキさんの姿はない。
 考えてみれば当然か。20分以上走り続けた距離を、疲労しきった体をひきずって戻ってきたんだ。
 時間を確認すると、夜の8時を越えている。ファミレスを飛び出して1時間以上は経過していたのだ。
 さて、
 「ご注文は?」とウェイトレスさんの言葉に「ドリンクバー」と短く答える。
 1時間前のドリンクバーの権利は、悲しいかな消滅済みだ。
 心情的にドリンクバーに2倍の料金を支払って気分だが、財布の中身は事実として減少している。 
 それが表情には、如実に現れていたのかもしれない。
 「前回の分も合わせて、私が払います」とルナさんの申し出があった。
 まぁ、面目的な理由で、武士は食わねど高楊枝……いや、誰だよ、俺は?自分のキャラがブレブレじゃないか。
 どうやら、若干、ハイになっているらしい。ランナーズハイ?いや、それは違うのか?
 俺は意識的に平時の状態にテンションを調節に挑んだ。
 そうしてると―――
 ぽつりぽつりとルナさんが話を始める。


 

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