『ザ・ウォリアー』 ~この世界を浸蝕するデスゲーム系の近未来SF&ラブコメディ~

チョーカー

クエスト


 「カナタさんにはクエストを手伝ってもらいたいのです」

 放課後、神社で待っていたルナさん。
 彼女が、いの一番で放った言葉に「クエスト?」と俺はクエスチョンマークを浮かべた。
 何かの比喩だろうか?『ザ・ウォリアー』には、クエストと言われる仕様はない……はず。

 「クエストなんて存在しない!カナタさんはそう思ってるでしょ?」
 「え?い、いやそんな事は……あります」

 俺は正直に答えた。対してルナさんは―――

 「そう、一般プレイヤーは『クエスト』の存在を知らないのです」

 ルナさんは自信満々に宣言した。そう……高らかに宣言したのだった。
 俺は陽葵に視線を送り、確認する。
 陽葵のリアクションは首を捻って困った表情をしたかと思うと首を横に振った。
 別に声を出してもルナさんに聞こえるわけではないのだが―――
 それは兎も角、陽葵も知らない『クエスト』やらがあるらしい。
 あくまでルナさん曰くの話だが……
 そんな俺の内心を読んだのか、ルナさんは―――

 「ここに証拠があります」

 フレンド機能で、メールが送られてくる。
 それを開くと……

 「ドロップアイテムのデータ?それも地図……って!あれ?」

 「そう、気づきましたか」とドヤ顔のルナさん。
 テンションが上がっているためか、この人、キャラが変わってないか?
 いや、そんな事よりも―――

 俺は驚いた。

 送られてきたアイテム情報。アイテム『地図』をよく見ると、細かな地形が書かれて……
 それを拡大してみると……

 「どうですか?この町の地図と一致してませんか?」
 「……本当だ。これ…この町の地図だ」

 アイテムの地図とこの町の地図は完全に一致していた。

 「これ、どうやって手に入れたんですか?」
 「ん?普通に主狩りしてたら主からドロップした物だよ」
 「……」

 別にルナさんを疑っているわけではないが―――
 『M』のデスゲームの件もある。
 安易にイベントぽいモノに踏み込むのは躊躇してしまうのだが……

 「大丈夫だよ。たぶん……」と陽葵が言った。

 「その根拠は?」と俺はルナさんに聞こえないように言った。

 「『ザ・ウォリアー』には隠し要素が大量に存在してるのは有名な話だけど、それを収集してるプレイヤー『情報屋』が知り合いにいるけど、彼女が言うには『クエスト』は存在してる……らしい」
 「あれ?さっきは『クエスト』なんて存在してない的なリアクションだと思ったのだが?」
 「う~ん、一応は秘中の秘って扱いだから、他人に教えたってバレたら『情報屋』に違約金を払わないといけなんだよ」

 陽葵は若干、涙目になっていた。  

 「信用できるのか?その『情報屋』さんってのは?」
 「うん、信用第一がモットーの女の子だからね」

 もう少し、『クエスト』関連について情報を聞き出したかったのだが……

 「さっきから、誰と話してるの?通信機能は作動してないみたいだけど?」

 ルナさんも、流石に俺の独り言がおかしいと思ったのだろう。
 彼女は奇妙な人を見るような眼を俺に向けていた。
 俺は誤魔化すために―――

 「いや、ただの独り言だよ!」

 ……だめだ。誤魔化しきれない。
 ルナさんは「ふ~ん」とジト目で見上げてくる。
 これは……仕方ない。

 「受けるよ。そのクエスト」
 「え?本当に?それじゃよろしくお願いします」

 差し出された手の意味が握手だと、すぐにはわからなかった。
 兎に角……
 俺は『クエスト』がどういうものか?
 そういう予備知識もなしに協力する事になった。

 その直後、拡大した地図に書かれている文字―――

 『呪われし長剣の在処』

 を発見して、少し後悔した。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 「それで、ルナさん自身は『クエスト』ってどういうもの情報は集めたのですか?」
 「多少は……お金は予想以上の出費になっちゃったんだけどね」
 「お金が?ですか?」
 「うん、この町に『情報屋』っていう女の子がいてね。その子から情報を買い取ったのさ」
 「情報屋……」

 さっき、陽葵も口にしてた人物だ。
 もしかしたら、デスゲームや裏ボスに関しての情報も有してるかもしれない。
 いや、一時的とはいえ事件として世間を騒がした案件だ。
 積極的に情報収集を行っていてもおかしくない。
 いつか、会いに行かなければならない人物として俺は頭に情報を刻んだ。
 暫く2人+1人で地図を頼りに進んでいくと―――

 「あっ見えてきたよ」
 「何がですか?」
 「第一チェックポイント……かな?」

 俺は地図の情報と現在地を確認する。
 確かに地図には『第一チェックポイント』という文字が浮かび上がっていた。
 では、ここで何かが起こるのか?

 少し待つと……老人が現れた。

 灰色で全身を覆い隠すような衣服。フードを深くかぶり、顔を隠しているようだ。
 もちろん、言うまでもなく実際に存在している老人ではない。
 ARの機能によって現実に追加された情報―――アノテーションだ。

 「こりゃすごいなぁ」と思わず呟いた。

 てっきり、チェックポイントで出現する特殊なアノテーションと戦って進むだけだと思っていたのだが……
 これはRPGゲームのように敵以外のアノテーション(今回は老人だ)が発生して、会話をしたり、助けたりとストーリーを進行するイベントなのだろう。
 『ザ・ウォリアー』でこんな機能があるとは知らなかった。
 言い方は悪いが『ザ・ウォリアー』というゲームは、黙々と出現する敵を倒すだけのゲームであり、そのシンプルさがユーザーに受けたと言われているが……目の前の光景はそんなイメージを一新させるものだ。
 しかし、閑静な住宅街で西洋風の老人がヨタヨタと歩いている図は、現実的であり、それと同時に非現実的でもあった。

 そして……

 ストーリーが進み始めた。

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