『ザ・ウォリアー』 ~この世界を浸蝕するデスゲーム系の近未来SF&ラブコメディ~

チョーカー

学校の裏側にて

 平凡な俺が裏ボスを狩る。
 そこにたどり着くため―――その領域にたどり着くためには鍛錬に次ぐ、鍛錬の連続が必要不可欠である。
 つまり、肉体的フィジカル強化が必要というわけだが……それとは別に必要なものがある。
 何はともあれ、『ザ・ウォリアー』はゲームである。だから、ゲームで強くなるためには、ゲームシステムでの戦い方も必要である。
 つまり、実戦の積み重ねという、リアルな経験値稼ぎの連続。 

 「……というわけで、今日もボス狩りの日だよ!」

 陽葵の声で起きた。
 現時刻、4時……また昨日よりも早くなっている。

「うるさい!この目覚まし時計が!」

「ま、目覚まし!酷くない!カナタくんに取って、私はそんなにマテリアル的な存在なの!」

「お前が、物質マテリアルとか用品マテリアルみたいな存在とか、サイコーに皮肉だよな!」

 そんなやり取りもあり、今日も俺は自転車ロードバイクに乗って、学校が始まるまで通常のボス狩りに挑戦チャレンジする。
 そうして、町が起き始める時間にはボロボロになった体を引きづって学校へ向かう日々。

 「……眠い」

 学校で教室に入り、席につく。
 隣では他人に見えないという利点を生かして、陽葵が惰眠を貪っている。

 イラっ!

 基本的に学校での桃林陽葵さんは規則正しい才女で通っている。
 深窓の令嬢さんキャラであり、深窓の令嬢さんタイプである。
 朝の挨拶を「ごきげんよう」に変えてみようかと相談されたのは、今思い出しても噴飯物だった。

 その役作りロールプレイングを学校内で同級の他者クラスメートから求められている威圧感プレッシャーからのストレスか、俺以外の人目がない時の陽葵は基本的に欲望に忠実だ。
 睡眠欲、食欲、そして戦闘欲。 
 その三大欲求(?)は凄まじく、中でも戦闘欲は『ザ・ウォリアー』のランカーに躍り出る事すら可能とするものだった。
 ……性欲に関しては知らないし、知りたくもない。
 ついでに俺と2人の時の陽葵のIQは低下してるのではないかと疑わせられる。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 「ギルドだよ!カナタくん!」

 トコトコと昼休み中に歩いている最中に陽葵は言い始めた。

 「授業中に真剣に考えてみたんだ!」
 「お前、授業中は寝てただろが!」

 だから、陽葵は朝4時だろうが睡眠不足を口にしない。
 授業中に寝ているからだ。

 「夢の中で真摯に考えたんだよ!」
 「夢の中って前提が既に真摯じゃない!そして、それは大抵の場合は、思いつきと言われる現象だ!」

 俺の突っ込みに、陽葵は、そんなの関係ねぇと意見を強行してきた。

 「裏ボスを倒すためにもっとも効率的で、安定するのはソロ狩りじゃない!巨大な敵を仲間達と打ち破る大規模レイド戦こそ、舞い散る血で滾る心は猛り狂うってもんじゃないか!」

 「後半の意味がわからねぇぞ!」

 しかし、まぁ、一理ある。
 最初の黒犬……ケルベロス戦だって、即興とはいえ上位プレイヤーのレイド戦だったから……
 1人で済んだのだ。犠牲者は……

 そこまで規模は現実的ではないにしても、1人で無理なら複数人で挑むチーム戦へ。
 考えをシフトするのは当然の事である。ただ、俺にそんな友達はいない。
 一応、言っておくが、友達が0人というわけではない。
 このゲーム―――『ザ・ウォリアー』で協力プレイが可能な現役ユーザーがいないという意味だ。
 その部分は俺の名誉のために追記させてもらう。

 「……所で、どこに向かってるの?休憩時間に抜け出して」

 ようやく、昼休み中に学校を抜け出した事に陽葵は疑問をもったらしい。

 「いや、そりゃおかしいとは思ったけど、てっきり外のコンビニで昼ごはんを購入するか、美味しいお店でも発見したのかと思ったんだよ」

 しかし、俺が向かっている場所は人の気配がなくなっている。
 食べ物を提供してくれる店なんて発想なんて普通は皆無だ。

 「ハッハッ、相変わらずカナタくんは甘いね。隠れ家的な美味しい御店ってのは、こういう場所で看板も掲げず存在してるものなのだよ」

 「相変わらず、食欲多感だ時期だな」

 「それ冗談にしてもデリカシーが欠けてる発言だよ。少なくともレディに言って良い言葉じゃないよ」

 「そーでーすーね」と棒読みで抗議の声を流した。

 「学校の裏側に神社があったんだ」
 「神社!こんな所に?」

 陽葵は若干興奮していた。

 神社は『ザ・ウォリアー』にとって重要な場所だ。
 通常のボスの出現位置は固定されている。たとえば、俺の家の近所なら駅前。
 大型ショッピングモールだったり、警察署や郵便局だったり、地方の観光スポットなどなど。
 人が集まりやすい場所にボスは出現する。
 しかし、例外的な場所として用意されているのが神社だ。
 そんな神社が学校の近く、昼休み中に抜け出して、1狩り可能な場所にあると知ったんだ。
 陽葵のテンションもハイになっていった。

 「学校は、授業をサボってボス狩りしてたらパニックが起こっちゃうから除外されてるのはわかるけど……じゃ、逆になんで神社とかは優先的にボスの出現ポイントとして固定されてるんだろ?」

 陽葵は疑問を口にした。
 俺は少し考えて―――

 「それは、日本だからじゃないか?」
 「日本?だから?」
 「そうだよ。元々、『ザ・ウォリアー』は米国アメリカから配信がスタートしたゲームなんだから、アメリカでいう神社は?」
 「神社?アメリカで言うと……あぁ、なるほど」
 「そう、答えは教会。日曜日には教会にお祈りに行きなさいって意味だったんだろ」

 そんな雑談に花を咲かせていると、神社が見えてきた。
 しかし―――

 「あれ?先客がいるね。確かあの姿は……」

 既にボス狩りを行っている人がいた。
 それは知り合いだった。 
 あの日、会った少女―――『ドラゴンアーマー』だった。


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