『ザ・ウォリアー』 ~この世界を浸蝕するデスゲーム系の近未来SF&ラブコメディ~

チョーカー

今日から始まったデスゲーム


 誰も『M』に詰め寄ったり、暴力を振るったり、文句すらつけなかった理由は単純だ。
 彼はここにいない。薄暗い照明で誤魔化してはいるが―――
 バーチャル慣れした人間なら『M』が立体映像ホログラムだという事はすぐにわかる。
 装備した者をデスゲームへ誘う拡張パック。
 アレをばら撒いた時に不自然な挙動があったのだ。
 だから、意外だった。
 『M』の立体映像は録画ではなく、リアルタイムで写し出されていて、俺たちを見続けている事が意外だっと思った。
 本物のデスゲーム。
 命を賭けた戦いを仕掛けた側の動機は?
 娯楽? 
 エンターテイメントの世界でデスゲームが行われる一番多い動機は娯楽だ。
 金持ちを集めて、賭博を開いたり―――
 しかし、『M』はデスゲーム開始直後から、その場を動いていない。

 彼の姿が、録画映像だと思っていた理由はそれだ。

 果たして、人間は―――

 人が死ぬ行く姿を―――

 無表情で見続けてられるものだろうか?
 自身で仕掛けた死のゲームを―――
 ある種、無関心とすら思える態度で鑑賞する人間の心―――
 目的――― 動機とは何か?

 だが、彼は動いた。 

 「残り3割か、ここからは地獄の開幕だ!」

 その声には、初めて感情が載せられていた。
 その感情の名前は歓喜。
 まるで、今、初めて―――

 デスゲームが始まったかのような錯覚すら―――

 「諸君、裏ボスの名前はなんだ?」

 『M』の声が轟く。
 黒犬との戦闘中のパーティすら、その声は無視できないほど、通りが良かった。

 「そうだ、ソイツの名前はケルベロス。地獄の門番の名前を有するソイツは―――
 3つの頭を有する怪物を名前を与えられたソイツは―――

 一体、何匹いるでしょうか?」

 『M』の言葉に会場は激震が走る。
 それだけではない。無音だった会場に激しいロック調のBGMが鳴り響いた。
 まるで―――
 テレビゲームのボス戦が始まったかのように―――

 さらに『M』はこう付け加えた。

 「そうだ。ケルベロスなら3匹いるのが当たり前じゃないか?」


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 黒い稲光エフェクトが走る。
 2本の稲妻から、そいつ等はやってきた。
 新たに2匹追加された黒犬。

 それまで黒犬を抑えていた前衛が崩れる。

 2匹は前衛を無視て―――
 文字通り、後衛職に噛み付きに行った。

 この黒犬たち―――ケルベロスも『ザ・ウォリアー』のセオリー通りの行動を起こすなら、襲い掛かるプレイヤーは決まっている。
 後方で、一番のダメージソースを叩き出してた人物。

 2匹は同時に陽葵を襲い始めた。

 俺が陽葵に向かって、走り出した時には―――

 陽葵のHPは0を表示していた。

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 戦いは終結した。
 3割を切っていた最初の黒犬がHPが0を表示した瞬間、後から現れた2匹も連動して消滅した。
 3匹で1体の裏ボスというコンセプトだと、終戦直後に披露したメンバーを前に『M』が自慢のように語った。
 誰も『M』に何も言わない。
 誰もが『M』を人間として認識できなくなっている。
 そこには「悪意」が存在しているとしか思えなかったのだ。

 「今日の参加者は優秀だ。流石はランカーを含めた有名プレイヤーの面々だな。
 あー、今日の所は他言無用と言っても無駄だろう。警察に駆け込むがいい。
 なぁに、これで俺が警察に捕まっても賞金の心配はいらない。無能な警察が俺を捕まえれるとは到底思えないからな」

 何を言ってるんだ?コイツは?
 『M』の言葉が理解できなかった。しかし―――

 「さて、今回の犠牲者は1人か。それも上位ランカー『砲撃姫』のヒナタか……」

 『M』が陽葵の名前を口にした瞬間、俺の中で何かが壊れた。
 陽葵は今―――俺の手の中で意識を失っている。
 これはデスゲーム、HPが0になった者は―――

 立体映像?関係ない。会場そのものを破壊してやる。
 その考えたが―――

 「賞金の他に解毒剤を用意している」

 一瞬、『M』の言葉が理解できなかった。

 「ヒナタが意識を失っているのは、俺が調合した特殊な毒によるものだ。
 お前の拡張パックにも同じ細工をしている。裏ボスとの戦いの最中のみ、HPが0になった瞬間に拡張パックから毒が顔に吹きかけられる。友が、家族が、愛する者が戦いに倒れて、毒の餌食になっても悲観するな。戦え。裏ボス100体を倒して者には10億と共に毒の成分表と解毒剤をくれてやる」

 『M』は笑った。
 高らかに宣言するように―――

 「なぁに、心配するな。医者に頼って、0から成分を特定して治療するよりも、このゲームをクリアした方が明らかに早く、効率的で確かな手段だ。だから、戦え―――
 今日からデスゲームの開始だ」


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