『ザ・ウォリアー』 ~この世界を浸蝕するデスゲーム系の近未来SF&ラブコメディ~
転換
爆音。 黒犬の頭部が爆ぜる。
一体、誰が?
「すまねぇ。命を賭ける準備が遅れちまった」
痛みで支配された体を無理やり動かして、声の主を確認する。
その人物は―――
「誰だ?」
知らない人だった。
たぶん、年上。20代くらいだろうか?
髪は赤い。
いや、そう言えば―――あの赤髪は、どこかで見た事あるような……
ルーチンワークなのか、杖をクルクル回している。まるでバトン演技を見ているかのようだった。ひょっとしたら、何らかの効果を上昇させる特殊モーションなのかもしれない。
男は声を張り上げた。
「ランカーでもない奴が命かけて気張ってんだ。逃げるか、戦うか、旗揚げろや。ショー・ザ・フラッグだ!」
会場から呼応があがった。
「やってやる!俺たちだって!」
「あぁ、いくら、裏ボスだからって、このメンバ―なら勝てる」
「10億だ!10億!俺はやってやる!」
そんな中、俺は思い出した。
『ん~、あそこにいる赤髪は『魔法撃ちの達人』ケン・石さんかな』
確か、陽葵が言っていた有名プレイヤーの1人だ。
あぁ、通りで。俺は納得した。
有名プレイヤーの鼓舞だ。そりゃ会場の士気が跳ね上がる。
不意に背後から気配を感じる。
振り向けば黒犬がコチラに牙を向けていた。
だが―――
再び、爆音が鳴り響く。
ケンの杖から炎の弾丸が発射され、黒犬が怯んだ。
ケンの攻撃には、スタンや強制転倒の付属効果があるのだろう。
黒犬はすぐさま反撃を行うことはしなかった。
「俺の特殊アイテムの看破能力だと……コイツのは一定時間、物理無効化と防御不能攻撃を仕掛けてくるぞ」
「なっ!」と俺は絶句する。それは俺だけではなかった。
会場の誰もが驚きを隠せない。
『物理無効化』と『防御不能攻撃』
そんな効果は初めて経験する。
「どう戦うんだ?」と疑問が飛び交う。
「待て、看破能をがもう少しで深淵部分まで届く……よし!3分だ!コイツの物理無効化と防御不能攻撃は3分間だけだ!」
「よし、3分耐えるぞ!」と声がした。しかし―――
「はん?耐えるだ?いらねぇよ!」
ケンの怯んだ黒犬に連続で攻撃を飛ばす。
Hitの文字が上がり、黒犬の赤い瞳がジロリとケンに向かう。
ダメージ量の増加でヘイトが俺からケンに移ったのだ。
こうなってしまうと、ケンの追加属性のスタンや強制転倒は無効だ。
ただ、純粋に一匹の獣がケンに襲い掛かっていく。
それに対してケンは―――
「魔法使いや魔術師や魔導士。味方に守られて戦うロールプレイは好きじゃねぇ……ソロ狩りでモンスターから逃げ出すのは日常茶飯事の慣れっこよ」
黒犬に背を向けると、一目散に駆け出した。
「いいか?3分くらいなら時間を稼いでやる!お前らは3分間でレイド戦の打ちあわせを行え!」
そのまま、ケンは決して広くないパーティ会場を疾走した。
無茶だ。いくらランカーのフィジカルがアスリートレベルだとしても、猛獣から走って逃げ出す事はできない。
そう思った。しかし―――
スタミナを無視したかのように走り続けるケンは逃げるだけではなかった。
黒犬が攻撃可能まで距離を縮めてくると―――
ケンは、まるでダンサーかのような空中で華麗なターンを決めて、後方の黒犬に攻撃を飛ばす。
それもweakpointである額を打ち抜き、逃走を行いながらも的確に黒犬のHPを削っている。
「あれが……ランカーの戦い方か」
気がつけば、賞賛の声が零れていた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
それから、俺の出番はなかった。
有言実行で3分間の逃走劇を可能としたケンは戦線を離脱して、体を休めている。
今は黒犬のヘイトを前衛職の数人が引き受けている。
ケンが稼いだ3分の間、有名ギルト「大島組」がレイドの編成を指示。
ギルドマスターであるミスターオオシマを司令塔に、現在は集団が1つの生物のように動き黒犬を追い詰めていく。
「勝ったな」
ミスターオオシマの勝利宣言が出た。
残りHPゲージが1本を切り、さらなる特殊攻撃を加えた黒犬だったが、それも完封された。
残りは3割を切り、HPはレッドゾーンへ突入していく。
既に戦線から離れて、戦いを見ていた俺も勝利を確信していた。
こうなってしまうと、本当はデスゲームじゃなかったのではない?
これは公式のドッキリイベントだったんじゃないか?
確かにダメージを受けた瞬間に激しい痛みを感じたけれども、本当は軽い痛いだったのを思い込みの力で激しい痛みだと俺の脳みそが勘違いしていたんじゃないか?
そんな事すら考え始めていた。 そんな甘い事を考えていたんだ。
だが―――
「残り3割か、ここからは地獄の開幕だ!」
今まで沈黙を守っていた『M』の声が聞こえた。
一体、誰が?
「すまねぇ。命を賭ける準備が遅れちまった」
痛みで支配された体を無理やり動かして、声の主を確認する。
その人物は―――
「誰だ?」
知らない人だった。
たぶん、年上。20代くらいだろうか?
髪は赤い。
いや、そう言えば―――あの赤髪は、どこかで見た事あるような……
ルーチンワークなのか、杖をクルクル回している。まるでバトン演技を見ているかのようだった。ひょっとしたら、何らかの効果を上昇させる特殊モーションなのかもしれない。
男は声を張り上げた。
「ランカーでもない奴が命かけて気張ってんだ。逃げるか、戦うか、旗揚げろや。ショー・ザ・フラッグだ!」
会場から呼応があがった。
「やってやる!俺たちだって!」
「あぁ、いくら、裏ボスだからって、このメンバ―なら勝てる」
「10億だ!10億!俺はやってやる!」
そんな中、俺は思い出した。
『ん~、あそこにいる赤髪は『魔法撃ちの達人』ケン・石さんかな』
確か、陽葵が言っていた有名プレイヤーの1人だ。
あぁ、通りで。俺は納得した。
有名プレイヤーの鼓舞だ。そりゃ会場の士気が跳ね上がる。
不意に背後から気配を感じる。
振り向けば黒犬がコチラに牙を向けていた。
だが―――
再び、爆音が鳴り響く。
ケンの杖から炎の弾丸が発射され、黒犬が怯んだ。
ケンの攻撃には、スタンや強制転倒の付属効果があるのだろう。
黒犬はすぐさま反撃を行うことはしなかった。
「俺の特殊アイテムの看破能力だと……コイツのは一定時間、物理無効化と防御不能攻撃を仕掛けてくるぞ」
「なっ!」と俺は絶句する。それは俺だけではなかった。
会場の誰もが驚きを隠せない。
『物理無効化』と『防御不能攻撃』
そんな効果は初めて経験する。
「どう戦うんだ?」と疑問が飛び交う。
「待て、看破能をがもう少しで深淵部分まで届く……よし!3分だ!コイツの物理無効化と防御不能攻撃は3分間だけだ!」
「よし、3分耐えるぞ!」と声がした。しかし―――
「はん?耐えるだ?いらねぇよ!」
ケンの怯んだ黒犬に連続で攻撃を飛ばす。
Hitの文字が上がり、黒犬の赤い瞳がジロリとケンに向かう。
ダメージ量の増加でヘイトが俺からケンに移ったのだ。
こうなってしまうと、ケンの追加属性のスタンや強制転倒は無効だ。
ただ、純粋に一匹の獣がケンに襲い掛かっていく。
それに対してケンは―――
「魔法使いや魔術師や魔導士。味方に守られて戦うロールプレイは好きじゃねぇ……ソロ狩りでモンスターから逃げ出すのは日常茶飯事の慣れっこよ」
黒犬に背を向けると、一目散に駆け出した。
「いいか?3分くらいなら時間を稼いでやる!お前らは3分間でレイド戦の打ちあわせを行え!」
そのまま、ケンは決して広くないパーティ会場を疾走した。
無茶だ。いくらランカーのフィジカルがアスリートレベルだとしても、猛獣から走って逃げ出す事はできない。
そう思った。しかし―――
スタミナを無視したかのように走り続けるケンは逃げるだけではなかった。
黒犬が攻撃可能まで距離を縮めてくると―――
ケンは、まるでダンサーかのような空中で華麗なターンを決めて、後方の黒犬に攻撃を飛ばす。
それもweakpointである額を打ち抜き、逃走を行いながらも的確に黒犬のHPを削っている。
「あれが……ランカーの戦い方か」
気がつけば、賞賛の声が零れていた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
それから、俺の出番はなかった。
有言実行で3分間の逃走劇を可能としたケンは戦線を離脱して、体を休めている。
今は黒犬のヘイトを前衛職の数人が引き受けている。
ケンが稼いだ3分の間、有名ギルト「大島組」がレイドの編成を指示。
ギルドマスターであるミスターオオシマを司令塔に、現在は集団が1つの生物のように動き黒犬を追い詰めていく。
「勝ったな」
ミスターオオシマの勝利宣言が出た。
残りHPゲージが1本を切り、さらなる特殊攻撃を加えた黒犬だったが、それも完封された。
残りは3割を切り、HPはレッドゾーンへ突入していく。
既に戦線から離れて、戦いを見ていた俺も勝利を確信していた。
こうなってしまうと、本当はデスゲームじゃなかったのではない?
これは公式のドッキリイベントだったんじゃないか?
確かにダメージを受けた瞬間に激しい痛みを感じたけれども、本当は軽い痛いだったのを思い込みの力で激しい痛みだと俺の脳みそが勘違いしていたんじゃないか?
そんな事すら考え始めていた。 そんな甘い事を考えていたんだ。
だが―――
「残り3割か、ここからは地獄の開幕だ!」
今まで沈黙を守っていた『M』の声が聞こえた。
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