ああ、赤ずきんちゃん。

極大級マイソン

第8話「赤ずきんちゃんとスペース合気道」

 ワァァァァァァァァァァァァァァァァァッッ!!!!

 キリギリス『さあさあ始まりました!! 天下一舞踏会、二回戦の幕開けです!! 実況は引き続きワタクシ、キリギリスがお送りします!!』
 アリ『解説のアリです』

 実況席から、二匹の昆虫の声がスピーカーから鳴り響いてきます。
 赤ずきんとかぐやは、国民達から送られる歓声のシャワーを浴びながら舞台の上に立ちました。

 赤ずきん「……そう言えば貴方達居たわね。一回戦の時は、実況者と解説役なのにやけに静かだったから忘れていたわ」
 キリギリス『マッチ売り選手の爆熱にあてられてさっきまで寝込んでいました。ほら、我々虫ですから暑さに弱いんですよ』
 アリ『開始から間もなく倒れてしまうとは……働きアリとして恥ずべきことです』
 キリギリス『切り替えていこうアリくん。今は目の前の試合に集中するんだ』

 キリギリスが落ち込むアリを励まします。
 そんな二人を一瞥して赤ずきんが視線をかぐやの方へ向けると、かぐやは赤ずきんと目を合わせて満面の笑みを浮かべました。

 かぐや「赤ずきんはーん! うちが勝った時の約束、覚えといてやー!」
 赤ずきん「約束した覚えないんだけどなぁ……」

 一方、観客席から白雪姫が鋭い目つきで舞台を睨んでいます。
 白雪姫の表情は、怒っているような悲しんでいるような、そんな複雑な感情に満ち溢れていました。

 白雪姫「ムムムゥ〜〜!!」
 赤ずきん「……凄く強い視線を感じる。私、何か悪いことしたっけ?」
 キリギリス『それではいってみましょーう! 【赤ずきん選手VSかぐや選手】、天下一舞踏会最初の第二回戦、開始です!!』

 YAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!
 観客席から一層強い歓声が鳴り響きました。
 この試合、負ければかぐやとデートをすることになります。赤ずきんはこの状況に気乗りしない顔をしながら構えました。
 一回戦のかぐやの戦いを見ていない赤ずきんは、かぐやがどのような戦法を取ってくるのか知りません。なので赤ずきんは、まずは敢えて向こうの自由にさせて何をしてくるのか把握することにしました。
 赤ずきんは両腕を広げてかぐやを誘います。

 赤ずきん「さあ、どっからでもかかってきなさい!」
 かぐや「およ? うちが先攻取ってもええんか?」
 赤ずきん「どうぞどうぞ。これでも自分の頑丈っぷりには自信があるのよ」
 かぐや「ほな遠慮なく」

 そう言って、かぐやは堂々と赤ずきんに近づきます。その様子はまるで警戒している素振りはありません。

 かぐや「ほっ」

 かぐやは、赤ずきんの身体にそっと手を当てました。
 赤ずきんが疑問そうにその手を見てると、



 赤ずきんの身体は、軽いボールのように簡単に舞台の上から放り出されました。



 赤ずきん「…………え?」
 かぐや「これで終いや」

 かぐやは、そう赤ずきんに言い放ちます。
 赤ずきんの身体は宙を舞い、舞台の外へ着地するまで5メートル……3メートル……。

 赤ずきん「フッッ!!!!」

 赤ずきんは、着地する前に渾身の拳を地面に向けて撃ちました。
 すると、赤ずきんはその反動で二段ジャンプ。跳ね返されたボールのように舞台の上に戻るります。

 赤ずきん「あ、危なああぁああああぁぁ……!!」
 キリギリス『おおおおぉぉおっとお!! 今何が起きたのでしょうか!? 突然、赤ずきん選手の身体が場外まで吹き飛びました!! し、しかし、赤ずきん選手も負けじとそれに対抗!! なんと拳圧で場内に戻るという荒技を繰り広げましたああああああ!!』


 危うくの敗北。赤ずきんは、想定していなかった現象に晒され、ひと息吐きます。
 しかし驚いたのは、赤ずきんを外に放ったかぐやも同じでした。

 かぐや「ええええ?? ……今、赤ずきんはん空飛ばへんかった?」
 赤ずきん「人間、本気を出せば空だって飛べるものよ。まあ今のは『飛ぶ』というより『跳ぶ』だったけどね」
 かぐや「地球上の生物としてありえん動きしとったよお? そんな人間初めて見たわあ。……なんや初手でいきなり勝負決めようと思っとったけど、あんた見た目と違って強いんやなあ」

 かぐやは、赤ずきんを前にしても特に身構えようとせず、何ら警戒していない直立不動の格好でいました。
 赤ずきんは、たった今自分を場外まで吹き飛ばした謎の攻撃について考えます。

 赤ずきん「……かぐやさんが私を吹き飛ばした方法。明らかに人を投げれるだけ腕力があるようには見えないけど」
 かぐや「ふふふ、これがうちの切り札! うちの家に伝わる究極の秘奥義、その名も『スペース合気道』!!」
 赤ずきん「スペース合気道??」

 合気道、という初めて聞く単語に赤ずきんは首を傾げました。
 かぐやは胸を張り答えます。

 かぐや「スペース合気道に死角無し! 赤ずきんはんに面白いもん見せたる」

 かぐやはそう言って、自分の両方の腕を舞台のステージ方向に向けました。

 赤ずきん「……何してるの?」
 かぐや「まあ見とき。はぁぁああああああああ!!」

 かぐやが両腕に力を込めてました。
 すると、

 赤ずきん「え、えええええ!?!!」

 赤ずきんから驚愕の声が漏れます。
 それも当然でしょう。かぐやの身体は、まるで見えない糸に釣り上げられるように宙に浮かび始めたのです。
 当然、そんな仕掛けがされているようには見えず、観客席からもどよめきが起こりました。

 かぐや「どうや赤ずきんはん。これがスペース合気道の力や!」

 かぐやはどんどん高くまで飛んでいき、五メートルくらいのところで静止しました。
 見紛うことのない『空中浮遊』。
 物理的にあり得ない現象が、赤ずきん含めこの場にいた全員の目にとまりました。

 キリギリス『な、なんという事でしょう!! 赤ずきん選手が二段ジャンプをしたかと思えば、今度はかぐや選手が宙を舞い始めたぞお!?』
 赤ずきん「こ、これがスペース合気道の力……!」
 キリギリス『スペース合気道!?  ……正直言いますとワタクシ、一回戦の試合を殆ど確認していないので、現段階で各選手の能力など全く把握しておりません!! データ分析表も手元にございません!! という訳で、かぐや選手の謎の現象について解説のアリくんに聞いてみましょう!!』
 アリ『うわ、ここで話し振られるんですか』
 キリギリス『そりゃ解説担当なんだから当然だよ』
 アリ『うげー』

 アリは、明らかに嫌そうな声を漏らします。

 キリギリス『さあさあ、この状況をどう見ますかアリくん!!』
 アリ『……おそらくかぐや選手は、背中にジェット機を背負っていてそれで空を飛んでるんだと思います』
 キリギリス『投げやりな解説、ありがとうアリくん!! では引き続き二人の対決を観ていきましょうか!!』

 たわいもないコントが終了しました。
 この二人が本当に舞台を盛り上げる気があるのか、疑問に思う茶番を見せられた観客一同は、気にせず対戦する二人に注目します。

 赤ずきん「……ジェット機ってなに? そもそもこれじゃあ戦えないんだけど、これって反則にはならないの?」
 審判「ルール上、問題はありません」
 かぐや「……らしいで? ほな、こっからはずっとうちのターンや! 堪忍しときぃ〜!」

 赤ずきんに両腕を突き出すと、かぐやの手の先端から光の塊が集結しました。
 本能的に危険を察知した赤ずきんは、その光から逃れようと舞台を走ります。
 すると、バヒューン!と光の塊が発射され、凄まじい衝撃波が赤ずきんが居た場所にぶつかりました。

 赤ずきん「うわー! また何も出来ないパターンだぁ!」

 空を跳べても、空を飛べない赤ずきんはかぐやの攻撃を避け続けます。
 赤ずきんにはスペース合気道がどういったものなのかサッパリわかりません。武術なのか、それとも魔法の類なのか。
 このままでは打開策が思いつくことなく、赤ずきんはやられてしまうでしょう。

 赤ずきん「……いや、逃げていてもラチがあかないわね」

 この試合は、友達の白雪姫とも勝利を約束した戦いです。
 だから負ける訳にはいかない。赤ずきんは覚悟を決めて立ち向かうことにしました。
 広い舞台の上で助走をつけて、勢い良くかぐやに向かって……ジャンプ!

 赤ずきん「イッケエーィ!! ……ムギュッ!?」

 しかし、かぐやに衝突する直前で、赤ずきんは見えない壁のようなものに激突し、落下しました。
 バタンとうつ伏せに倒れる赤ずきん。
 その様子を見て、かぐやは赤ずきんの元へ降りてきました。

 かぐや「残念やったな! あんたがどんだけ強かろうと、あんたはうち触れることも出来んのよ!」
 赤ずきん「うぐぐぐ……そんなバカな」

 高笑いするかぐやを前に、赤ずきんは為すすべなく彼女を見上げます。
 勝ち目が全く見えないこの戦い。果たして赤ずきんは謎の武術?『スペース合気道』を打ち破ることが出来るのでしょうか!?
 次回、第9話「赤ずきんちゃんの本気」。ご期待ください。

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