ああ、赤ずきんちゃん。

極大級マイソン

第4話「赤ずきんちゃんと王子様」

 王子「やあ、こんばんは。君たち、こんな時間にどうして外庭に?」
 赤ずきん「こんばんは王子様。私達、日課の夜のお散歩をしていたところなの」

 おとぎの城の王子様。
 そんな国の重要人物と出会った赤ずきんは、ひとまず先に挨拶を交わします。彼女は、いつ誰が相手でもフレンドリーなのです。
 一方で、使用人の少年は、王子様を前に少し緊張した様子でいました。

 少年「お、王子様っ! 日付も変わるこのような時間に、何故外庭に!?」
 王子「いや、何。鍛錬が少し長引いてしまってな。ちょうど、これから部屋へと戻ろうと思っていたところだ。……ところで、そこにいる女の子は?」
 少年「こちら、天下一舞踏会に参加する『赤ずきん』様です。今日はお城をご案内するために、彼女の付き添いしております」

 少年の紹介に乗じて、赤ずきんは王子様にお辞儀をしようとします。淑女の作法は知らなかったので、赤ずきんは普段するように、相手に軽く頭を下げました。

 赤ずきん「初めまして王子様。私、おとぎの森からやって来た赤ずきんと言います」

 それ応じて、王子様も丁寧に、赤ずきんに挨拶を返します。

 王子「私は、『王子』と言う。赤ずきん、君のような幼い子供が、例の舞踏会に参加するとは驚きだよ」
 赤ずきん「いやー、私も成り行きに参加する事になって。正直、何が何やらよくわからないんですようねー。あははっ」
 少年「あ、赤ずきん様!? 王子様には、もう少し丁寧な言葉遣いでお願いしますっ!」
 王子様「良い良い。子供を相手に、礼節を求めるのも酷だろう。それに、私は堅苦しいのはあまり好きではないしな」
 少年「そ、そうですか……」
 王子「しかし、『おとぎの森』から、かぁ。ふむ…………」

 王子様は、外庭の時計台に目を移します。時刻はとうに日をまたいでいます。

 王子「……折角なので色々と語り合いたいところだが、今日はもう遅いな。赤ずきん、もし良ければ明日の朝、私の部屋へ来てくれないか?」
 少年「お、王子様!?」
 赤ずきん「良いですよ。私もお喋りは大好きですから!」
 王子「そうか。では、また明日…………おや?」

 と、王子様は気付きました。
 何もない場所。自分たちのすぐ側で、『歪み』のようなものが存在していることに。

 少年「な、なんですか?」
 赤ずきん「うにょ?」

 その瞬間、空間の歪みは徐々に形を変え、その場に亀裂を走らせます。
 そして、亀裂の奥から、光り輝くナニカが現れました。
 幻想的とも言える真っ白な煌めき。その正体が、人のものから発せられているとは、3人はその目で確認するまで思いもよらなかったでしょう。
 光り輝くナニカは、亀裂から出て、外庭に降り立ちます。

 シンデレラ「ふふふ、ようやく見つけましたよ。王子様」
 赤ずきん「あ、シンデレラさん」

 光の中から現れたのは、シンデレラでした。彼女は赤ずきんと出会った時と同じ格好。薄汚れたマントとフードを身につけています。
 シンデレラは、一同を見渡し、王子様と視線を合わせて彼に歩み寄ります。

 シンデレラ「お探ししましたよ、王子様。こんな時間に何処へ行っていたのですか?」
 王子「ああ、はははっ。少し鍛錬に熱中し過ぎてしまった。これから帰る」
 シンデレラ「夜更かしはお体に触ります。すぐにお休みください、良いですね?」
 王子「そうだな、そうする。では赤ずきん、また明日」
 赤ずきん「また明日会いましょう、王子様!」

 王子様は、シンデレラとともに城へ戻り、赤ずきんはそんな2人に手を振って別れの挨拶をします。
 2人が見えなくなった頃、赤ずきんは腕を組み、思い悩みます。

 赤ずきん「うーむ、あの王子様。私を部屋に呼んで何をするつもりなんだろう」
 少年「今考えるのですか!? さっき、あんなにアッサリと申し出を受け入れたのに!」
 赤ずきん「私、基本的にお呼ばれには応じるタイプなの。暇だし。相手が誰であれ、フレンドリーに接するのが私の信条よ」
 少年「『知らない人についていくな』と、御両親に言われなかったのですか?」
 赤ずきん「その忠告を無視したせいで、過去に大変なことになりかけた事があるわ」
 少年「大事件だ!!」
 赤ずきん「じゃあ、王子様の部屋には行かない方が良いのかしら?」
 少年「…………いえ、一応王子様のお呼ばれですし、お部屋に向かわれた方が。必要なら、ぼくも同伴します」
 赤ずきん「え、なに、貴方達『グル』なの?」
 少年「違います! 僕にソッチの気はありませんから!」
 赤ずきん「あ、少年は年上好きなのね」
 少年「まあ、どちらかと言えば…………って、なんでこんな話をしているんだ、僕はっ!?」

 少年は、頭を抱えて悶絶状態。赤ずきんは、そんな彼を見てクスクスと笑みを浮かべます。
 少年をからかうのも程々に、赤ずきんはグッと背筋をそらし、深呼吸します。町の空気は、森で吸うよりも涼しくはありませんが、どこか違った味わいを感じ取れました。

 赤ずきん「さてと、思わぬお呼ばれを頂いちゃったし。明日に備えて私は眠るわ」
 少年「あ、ああ、そうですか。それでは、お部屋へご案内します」

 と言って、少年は赤ずきんを先導し、前を歩きます。
 そして、少年に案内されながら、赤ずきんは今日あった出来事を振り返っていました。

 赤ずきん(まったく、今日1日だけで大変な事が沢山起きたわね。家を爆破した犯人探しから始まって、狼に集団で襲われたり誘拐されたり天下一ナンタラに無理やり参加されたり。最後には、お城で王子様にお呼ばれまでされちゃったわ。明日も明日で、いろんな事が起こりそうな予感がするわ。…………とはいえ)

『何だか、面白くなってきたな。』と、赤ずきんは少しだけ期待に胸を膨らませて、今後起きるであろう『非日常』を、楽しみに待ち望むのでした。




 赤ずきん「……………………………………………………………………あああっっ!!?!」




 その時、突然、赤ずきんが大きな叫び声をあげました。
 あまりに唐突な声に、少年はビクリと膠着し、慌てて後ろを向き直ります。

 少年「ど、ど、どうしましたか!?」

 少年は、少し動揺して赤ずきんの安否を確認します。赤ずきんは、見る限り異常はなさそうですが、その少女の顔は驚愕に満ちていました。

 赤ずきん「あ、あ、あ、」
 少年「あ?」




 赤ずきん(あの王子様、白雪姫のお兄さんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!)




 不意に閃いた衝撃の真実に、赤ずきんは心の中で大きく叫ぶのでした。

 次回、第5話「赤ずきんちゃんにリベンジ」。ご期待ください。

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