ああ、赤ずきんちゃん。
第1話「赤ずきんちゃんとケルベロス」
前回、赤ずきん、オオカミ、白雪姫、ヘンデル、グレーテル、狩人、魔女の7人は、赤ずきんの家でお料理パーティをしていました。ところが、赤ずきんの家の屋根に大量の可燃性きのこが生えていたことにより、赤ずきんの家が爆発したのでした。
そして、その危機にいち早く気付いた赤ずきんは、家が爆発する前に皆を助けるため、単身で家に乗り込むのでした。
--そして、家が爆発します。
屋上が激しい爆発によりガラガラと崩れていき、まっすぐ真下へと降り注いでいきます。そこには白雪姫、グレーテル、魔女、そして助けに行った赤ずきんが居るはずです。
オオカミ「あ、赤ずきんちゃん!?」
オオカミが大声で叫びます。赤ずきんの家はあっという間に瓦礫のようにバラバラになってしまいました。
…………そして、
バゴンッ! と、大量の瓦礫の山を崩して這い出てきた人がいました。
見ると、それは赤ずきんと、他に家に居た3人でした。
赤ずきん「ふぅっ! 危機一髪だったわね。皆んな、怪我はないかしら?」
白雪姫「は、はい。何とか……」
グレーテル「ゲホッゲホッ! ……な、何なんだこれは?」
ヘンデル「グレーテル!!」
ヘンデルがグレーテルに駆け寄ります。グレーテルは軽い擦り傷はあるようですが、大きな怪我ないようです。他の皆も大した怪我はしてはおらず、オオカミはほっと溜息をつきました。
そんな中、魔女は楽しげに笑っています。
魔女「ひゃっはっはっは!! これは愉快なサプライズだねぇ〜! 一体誰の発案なんだい?」
ヘンデル「これがサプライズ見えるのかよ? 事件だよ事件!」
グレーテル「……ヘンデル。貴方何か見かけたのか? さっき赤ずきんが言っていた人影っていうのはどうした?」
ヘンデル「いや、人影らしきものは見当たらなかった。ただ、赤ずきん家の屋根にきのこが生えていたんだ!」
グレーテル「きのこ?」
外に出た皆は、家で待機していた3人に情報を共有します。
グレーテル「なるほど。そのきのこは突然人の家に生えてくるようなものなのか?」
オオカミ「いや、カコウタケは本来陽の光が当たらない洞窟なんかで生えるきのこなんだ。森の中では生えないよ」
魔女「まあ陽が当たったら爆発するんじゃ森では生えないよね。いくらこの森も木陰で陽が当たりにくいとはいえ、木漏れ日はあるわけだし」
狩人「自然発生ではない?」
グレーテル「だとすると、意図的に誰かが赤ずきんの家にきのこを生やしたっていうのが可能性としては高いな」
ヘンデル「誰かって誰だよ?」
白雪姫「さっき赤ずきんさんが見たという人影……。その人が犯人なのでしょうか?」
オオカミ「まあ、この森で人なんて珍しいし。居るとすれば赤ずきんの両親か祖父母さんくらいだよ。でも、そんなことをする理由が無いよね。自分の家、孫娘がいる家を爆破させる理由なんてさ」
グレーテル「いや、人間の他にも森の動物達なら可能なんじゃないか? 二足歩行の奴らもいるし」
ヘンデル「オオカミも二足歩行だしな何故か。……オオカミがやったんじゃないか? 狼は悪者って小さい頃に大人達からよく聞かされたぞ」
オオカミ「ぼくじゃないよ!? ……まあ、狼が悪者っていう言い伝えは案外的外れじゃないっていうのは認めるけどさ」
白雪姫「認めるんですね」
オオカミ「でも他の狼達がこんな姑息な真似をするかなぁ……。ちょっと疑問だよ」
グレーテル「狼は姑息な真似はしないってか?」
オオカミ「いや、姑息な真似が出来ないんだ。一般的な狼は皆四足歩行だからね」
ヘンデル「逆になんでお前は二足歩行なんだよ!」
赤ずきん「……犯人とか二足歩行とか、今はそんなことより大事なことがあるでしょう?」
ヘンデル「お?」
ふと皆が視線を向けると、そこには至極真面目な表情を浮かべた赤ずきんがいました。
……いや、『真面目』というより『緊張』していました。少女は酷く蒼白した顔色で汗をダラダラかいています。
赤ずきん「このままだと、明後日にはママとパパが町から帰ってきちゃう……そ、そしたら! 家を壊したってことで私がママに怒られちゃうのよ!?」
皆んな『……………………は?』
皆は呆けたように呟きます。しかし赤ずきんは真剣でした。この状況をどう収拾したら良いのかと必死に頭を働かせています。
白雪姫「えっと、赤ずきんさん。これは事故なので赤ずきんさんがママさんに叱られるというのは無いんじゃないでしょうか?」
赤ずきん「……白雪姫。貴方に良いことを教えてあげるわ。『留守を任されたものは全責任を負わされる』、……我が家が先祖代々から言い継がれている家訓よ」
ヘンデル「厳しすぎるだろうその家訓」
赤ずきん「くっ、どうしよう。今のところ変わり身になってくれる候補が3人くらい居るんだけど、……事態が事態なだけに心許ないわね」
そう言って赤ずきんは、オオカミ、ヘンデル、狩人の方をじっと見つめます。
ヘンデル「おい」
狩人「赤ずきんちゃんが俺の物になってくれるなら、その罪を甘んじて背負うぜ?」
赤ずきん「ちっ、だったら犯人を見つけて罪を償ってもらうしかないわね。具体的には壊れた家と家具を弁償してもらう」
オオカミ「でも、犯人が見つかったとしても明後日に両親が帰ってくるまでに家は直らないよね?」
赤ずきん「くぅっ!? …………こうなったら、最後の手段よ!」
そう呟くと、赤ずきんは皆を置いてその場を駆け出しました。
白雪姫「赤ずきんさんっ!」
オオカミ「おおい、どこ行くんだよ〜!」
2人が呼び掛けますが、赤ずきんは止まりません。全速力で走り続ける赤ずきんは、あっという間に森の奥へと消えて行ったのでした。
   ***
……さて、赤ずきんがどこへ向かったのかというと--。
お爺ちゃん「な、何じゃと!? くぅぅ何てことじゃ! 儂らの可愛い孫がそんな危険な目にあっていたとは!!」
赤ずきん「うん、そうなの。私、怖くて怖くて……。お爺ちゃん、赤ずきんを助けて(うるうる)」
お爺ちゃん「もちろんじゃとも! 何処のどいつが犯人かは知らんがそのような不埒な若僧など、我が家に代々継がれる餓狼拳の餌食にしてくれるわい! 行くぞケルベロス!!」
ケルベロス「ぶぅ、ぶー!」
……お爺ちゃんとお婆ちゃんが住まう家に来ていました。赤ずきんは先ほど起きた顛末をお爺ちゃんに伝え、2人に助けを求めに来たのです。
赤ずきん「ありがとうお爺ちゃん! あ、でも、家が壊れたままなのは流石にマズイし、まずは家を元通りにしないといけないんだ。だから最初に家を何とかして、犯人はその後に見つけて欲しいの」
お爺ちゃん「む、確かにそうじゃな」
お婆ちゃん「ほっほっ、家を壊したとあっては、赤ずきんがママに怒られてしまうからね〜」
そう、赤ずきんとしては、一刻も早く家を元通りにし、ママの叱られるのを避けなければなりませんでした。犯人探しは二の次です。
お爺ちゃん「じゃが、そういう事ならちょうど良いのじゃないか? なあ婆さんや」
お婆ちゃん「そうですともそうですとも。何故ならうちには『この子』が居ますからね〜」
お婆ちゃんは、傍で寝そべっているケルベロスを撫でながら言います。
お婆ちゃん「さて、仕事だよケルベロス。赤ずきんの家を直しておいで」
ケルベロス「ぶぅ、ぶー!」
赤ずきん「ケルベロス?」
お婆ちゃん「ふふふっ、赤ずきんには言ってなかったね。このケルベロスは、私のきのこ探しのパートナーであり、……一流の"大工"でもあるんだよ」
そして、ケルベロスは嘶きます。久しぶりの大仕事にも気合十分の様子でした。
次回、第2話「赤ずきんちゃんと若狼」。ご期待ください。
そして、その危機にいち早く気付いた赤ずきんは、家が爆発する前に皆を助けるため、単身で家に乗り込むのでした。
--そして、家が爆発します。
屋上が激しい爆発によりガラガラと崩れていき、まっすぐ真下へと降り注いでいきます。そこには白雪姫、グレーテル、魔女、そして助けに行った赤ずきんが居るはずです。
オオカミ「あ、赤ずきんちゃん!?」
オオカミが大声で叫びます。赤ずきんの家はあっという間に瓦礫のようにバラバラになってしまいました。
…………そして、
バゴンッ! と、大量の瓦礫の山を崩して這い出てきた人がいました。
見ると、それは赤ずきんと、他に家に居た3人でした。
赤ずきん「ふぅっ! 危機一髪だったわね。皆んな、怪我はないかしら?」
白雪姫「は、はい。何とか……」
グレーテル「ゲホッゲホッ! ……な、何なんだこれは?」
ヘンデル「グレーテル!!」
ヘンデルがグレーテルに駆け寄ります。グレーテルは軽い擦り傷はあるようですが、大きな怪我ないようです。他の皆も大した怪我はしてはおらず、オオカミはほっと溜息をつきました。
そんな中、魔女は楽しげに笑っています。
魔女「ひゃっはっはっは!! これは愉快なサプライズだねぇ〜! 一体誰の発案なんだい?」
ヘンデル「これがサプライズ見えるのかよ? 事件だよ事件!」
グレーテル「……ヘンデル。貴方何か見かけたのか? さっき赤ずきんが言っていた人影っていうのはどうした?」
ヘンデル「いや、人影らしきものは見当たらなかった。ただ、赤ずきん家の屋根にきのこが生えていたんだ!」
グレーテル「きのこ?」
外に出た皆は、家で待機していた3人に情報を共有します。
グレーテル「なるほど。そのきのこは突然人の家に生えてくるようなものなのか?」
オオカミ「いや、カコウタケは本来陽の光が当たらない洞窟なんかで生えるきのこなんだ。森の中では生えないよ」
魔女「まあ陽が当たったら爆発するんじゃ森では生えないよね。いくらこの森も木陰で陽が当たりにくいとはいえ、木漏れ日はあるわけだし」
狩人「自然発生ではない?」
グレーテル「だとすると、意図的に誰かが赤ずきんの家にきのこを生やしたっていうのが可能性としては高いな」
ヘンデル「誰かって誰だよ?」
白雪姫「さっき赤ずきんさんが見たという人影……。その人が犯人なのでしょうか?」
オオカミ「まあ、この森で人なんて珍しいし。居るとすれば赤ずきんの両親か祖父母さんくらいだよ。でも、そんなことをする理由が無いよね。自分の家、孫娘がいる家を爆破させる理由なんてさ」
グレーテル「いや、人間の他にも森の動物達なら可能なんじゃないか? 二足歩行の奴らもいるし」
ヘンデル「オオカミも二足歩行だしな何故か。……オオカミがやったんじゃないか? 狼は悪者って小さい頃に大人達からよく聞かされたぞ」
オオカミ「ぼくじゃないよ!? ……まあ、狼が悪者っていう言い伝えは案外的外れじゃないっていうのは認めるけどさ」
白雪姫「認めるんですね」
オオカミ「でも他の狼達がこんな姑息な真似をするかなぁ……。ちょっと疑問だよ」
グレーテル「狼は姑息な真似はしないってか?」
オオカミ「いや、姑息な真似が出来ないんだ。一般的な狼は皆四足歩行だからね」
ヘンデル「逆になんでお前は二足歩行なんだよ!」
赤ずきん「……犯人とか二足歩行とか、今はそんなことより大事なことがあるでしょう?」
ヘンデル「お?」
ふと皆が視線を向けると、そこには至極真面目な表情を浮かべた赤ずきんがいました。
……いや、『真面目』というより『緊張』していました。少女は酷く蒼白した顔色で汗をダラダラかいています。
赤ずきん「このままだと、明後日にはママとパパが町から帰ってきちゃう……そ、そしたら! 家を壊したってことで私がママに怒られちゃうのよ!?」
皆んな『……………………は?』
皆は呆けたように呟きます。しかし赤ずきんは真剣でした。この状況をどう収拾したら良いのかと必死に頭を働かせています。
白雪姫「えっと、赤ずきんさん。これは事故なので赤ずきんさんがママさんに叱られるというのは無いんじゃないでしょうか?」
赤ずきん「……白雪姫。貴方に良いことを教えてあげるわ。『留守を任されたものは全責任を負わされる』、……我が家が先祖代々から言い継がれている家訓よ」
ヘンデル「厳しすぎるだろうその家訓」
赤ずきん「くっ、どうしよう。今のところ変わり身になってくれる候補が3人くらい居るんだけど、……事態が事態なだけに心許ないわね」
そう言って赤ずきんは、オオカミ、ヘンデル、狩人の方をじっと見つめます。
ヘンデル「おい」
狩人「赤ずきんちゃんが俺の物になってくれるなら、その罪を甘んじて背負うぜ?」
赤ずきん「ちっ、だったら犯人を見つけて罪を償ってもらうしかないわね。具体的には壊れた家と家具を弁償してもらう」
オオカミ「でも、犯人が見つかったとしても明後日に両親が帰ってくるまでに家は直らないよね?」
赤ずきん「くぅっ!? …………こうなったら、最後の手段よ!」
そう呟くと、赤ずきんは皆を置いてその場を駆け出しました。
白雪姫「赤ずきんさんっ!」
オオカミ「おおい、どこ行くんだよ〜!」
2人が呼び掛けますが、赤ずきんは止まりません。全速力で走り続ける赤ずきんは、あっという間に森の奥へと消えて行ったのでした。
   ***
……さて、赤ずきんがどこへ向かったのかというと--。
お爺ちゃん「な、何じゃと!? くぅぅ何てことじゃ! 儂らの可愛い孫がそんな危険な目にあっていたとは!!」
赤ずきん「うん、そうなの。私、怖くて怖くて……。お爺ちゃん、赤ずきんを助けて(うるうる)」
お爺ちゃん「もちろんじゃとも! 何処のどいつが犯人かは知らんがそのような不埒な若僧など、我が家に代々継がれる餓狼拳の餌食にしてくれるわい! 行くぞケルベロス!!」
ケルベロス「ぶぅ、ぶー!」
……お爺ちゃんとお婆ちゃんが住まう家に来ていました。赤ずきんは先ほど起きた顛末をお爺ちゃんに伝え、2人に助けを求めに来たのです。
赤ずきん「ありがとうお爺ちゃん! あ、でも、家が壊れたままなのは流石にマズイし、まずは家を元通りにしないといけないんだ。だから最初に家を何とかして、犯人はその後に見つけて欲しいの」
お爺ちゃん「む、確かにそうじゃな」
お婆ちゃん「ほっほっ、家を壊したとあっては、赤ずきんがママに怒られてしまうからね〜」
そう、赤ずきんとしては、一刻も早く家を元通りにし、ママの叱られるのを避けなければなりませんでした。犯人探しは二の次です。
お爺ちゃん「じゃが、そういう事ならちょうど良いのじゃないか? なあ婆さんや」
お婆ちゃん「そうですともそうですとも。何故ならうちには『この子』が居ますからね〜」
お婆ちゃんは、傍で寝そべっているケルベロスを撫でながら言います。
お婆ちゃん「さて、仕事だよケルベロス。赤ずきんの家を直しておいで」
ケルベロス「ぶぅ、ぶー!」
赤ずきん「ケルベロス?」
お婆ちゃん「ふふふっ、赤ずきんには言ってなかったね。このケルベロスは、私のきのこ探しのパートナーであり、……一流の"大工"でもあるんだよ」
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