公爵令嬢は結婚したくない!
揺れる気持ち(1)
「ユウティーシア様?」
「――え?」
「どうかしましたか? お体の調子でも――」
「いえ、大丈夫よ」
言葉を返しながら、私はテーブルの上に並んでいる朝食を見る。
まったく口に入らない。
何故なら、リースノット王国との交渉がどうなっているのかを、まったくスペンサーは教えてくれないから。
私が原因で起きてしまった事なのに、完全に蚊帳の外に置かれてしまっていて、夜になれば教えてくれると思ったのに、政が忙しいという理由で、あれから2か月近くが経過しているのに彼は殆ど邸宅には帰ってきてない。
帰ってきても擦れ違いばかりで、食事は共にすることはあっても詳しい話は聞けてないのだ。
私は、冷めてしまったコーンポタージュを口に含んだあと、ロールパンに苺ジャムをつけて1個だけ食べたあと、サラダを少しだけ食べる。
「ごめんなさいね。もうお腹いっぱいだから……」
「ユウティーシア様、きちんとお食べになられませんと――」
エリンさんが、心配そうな表情をしているけれど――、ここ最近、食欲がまったくない。
きっと精神的な物だと思うけれど……。
それに、何だか体がだるくて一日中眠い。
「それでは、散歩でもなさいますか?」
「いえ、今日も何だか体がだるいから――」
「そうですか。医者でも手配致しましょうか?」
「特に問題はないと思うから……」
「――ですが、ユウティーシア様はリースノット王国から来られている客人という体も為しておりますので……」
「…………そうね」
私に何かあれば、彼に――、スペンサーに迷惑が掛かるかも知れない。
なら、医者に診てもらっておいた方がいいかも知れない。
「それでは、すぐに手配しておきますので」
「ええ」
宛がわれた部屋に戻ったあと、私は魔法書を見ながら今後のことを考える。
すでに1か月後には、海洋国家ルグニカで王位簒奪レースが始まると各国に招待状が来ているらしい。
来ているらしいというのは、最近――、使用人たちが話していたのを廊下で偶然聞いたから……。
私が関わっていた事案ですら、まったく私には報告されない。
その事に、私は疎外感を覚えずにはいられない。
「私って、この国に居ていいのかしら……」
政にも、海洋国家ルグニカに関わっていた問題からも隔離されていて、町を見てみたいと言っても、リースノット王国とアルドーラ公国との間の問題があるからと屋敷から出る事すら許されない。
使用人は、私に良くしてくれるけど、外部の情報は殆ど教えてくれない。
「ハァ――」
色々と考えてしまうと、自分の立ち位置が分からなくなってしまう。
外部の情報から意図的に隔離されている確かだけど、どうしてなのか分からない。
もしかしたら、私がリースノット王国の――、三大公爵家の一つであるシュトロハイム公爵家の娘だから……、扱いに苦慮しているのかも。
魔法書を閉じたあと、私はベッドで横になる。
「さみしい……」
ここ2か月近く――、彼が戻ってこない。
ずっと夜一人で寝ていて……、人肌が恋しい。
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