公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

届かない思い(9)




 謁見の間――、扉前に到着したところで扉前に立っていた兵士の二人が私を見て眉間に皺を寄せる。
 
「ユウティーシア様ですよね?」
「そうですが――、それが何か?」

 何を当たり前の事を聞いてきているのだろう。
 二人の兵士は顔を見合わせるけど――、しばらくすると扉が開く。

「ユウティーシア・フォン・シュトロハイム様、御入場です」

 謁見の間に入ると、慌てて扉前に立っていた兵士が、私の後ろから付いてくる。
 どうして、私の後を慌てて追ってきているのだろう?
 一瞬だけ疑問が思い浮かんだけれど、余計なことを考えるのはよくないとすぐに気持ちの片隅に押し込む。

「昨日は、ゆっくりと休むことはできたかな?」
「はい。この度は、貴国に大変なご迷惑をお掛けしてしまい誠に申し訳ありませんでした」

 私は頭を下げながら、フィンデル大公様へ言葉を返す。

「それでだな……、息子の――」
「はい。存じております。私の不徳致すところです。スペンサー様には大変なご迷惑をおかけしてしまいました。私は、これより国元へ帰る予定です」
「……ユウティーシア殿」
「何でしょうか? 大公様」
「何かを言われたのか?」
「――いえ。何も言われてはおりません。私の愚かな采配により多くの方にご迷惑をお掛けしたことに気が付いただけです」
「ルガード殿」
「なんだ?」
「侍女から昨夜――、ユウティーシア殿の部屋に貴殿が入っていったのを見たと報告があったが――」
「その話か――。別に少し話をしただけだ」
「……こんな人形のような感情を表に出さないように壊しておいて――、貴殿は、それでも――」
「フィンデル大公、勘違いされては困る。俺は、貴族の女としての立ち振る舞いを体に教えただけだ。アルドーラ公国も、シュトロハイム公爵家の娘を一人差し出すだけでリースノット王国と和平が結べる。元々、コイツは俺の物だし――」

 途中まで言い終わる前に、バルザック様がルガード様の肩を掴む姿が見た。

「何の真似だ? バルザック!」
「ルガード殿下、いま娘に貴族の立ち振る舞いを体に教えたと聞こえましたが――」
「――チッ、まったく……」

 ルガード様が肩を竦めると、バルザック様の手を跳ねのけると私に近づいてくると無造作に抱き寄せてきた。

「コイツには、昨日の夜にたっぷりと男を教えてやったんだよ。どうせ、俺の物になるんだ。遅かれ早かれ貴族の振る舞いを教える事になるんだからな。バルザック卿、貴殿も娘を王家に嫁がせることで同意したんだろう? なら文句はないよな?」
「なん……だと……」
「おい、ティア。お前からも言ってやれよ。昨日の夜に何をされたのかってことを――」
「はい。ルガード様」

 私は、昨日の夜に何度も抱かれ何度も殴られ、その都度、ルガード様の回復魔法で回復させられ何度も調教されたことを伝えていく。
 謁見の間で、何十人も貴族が居るのに私は赤裸々なことを言っていても、まったく心が動かない。

 エレンシア様は、「もう……、やめて――」と泣いていて――。
 バルザック様はというと――。


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