公爵令嬢は結婚したくない!
お家騒動(4)
――白亜邸から、馬車に揺られること3日。
「ユウティーシア様。アルドーラ公国の公都が見えてきました」
「そうなの?」
私は、馬車の横窓を開けて前方へと視線を向ける。
アルドーラ公国の公都は、壁らしい壁が見当たらない。
中世レベルの文明ならば、自国の首都を守るために外壁は必要だというのに。
「壁がないのね」
「はい。アルドーラ公国は、ローレンシア大陸でも有数の国家ですから国境線で侵略を防いでいるのです」
「そうなのね」
隣国には巨大軍事国家ヴァルキリアスがあるはずだけど……。
でも、よく考えてみれば、ヴァルキリアスは10年前に発生した御家騒動で、他国を侵略するほどの余裕はなかったっけ?
それだとセイレーン連邦の方が問題だけど……。
セイレーン連邦は一枚岩ではなくて無数の国家が集まって出来た国で、ヴァルキリアスの古来より接している国々なんかは、つねに小さな紛争を起こしているから、それでアルドーラ公国は国境を破られるほどの脅威には晒されなかったのかもしれないわね。
「あれ? あれは……」
ふと視線を町の方へと向けると何百人もの上半身裸の殿方が、町の外に煉瓦を積み重ねている様子が見える。
「あれは、リースノット王国からの侵略に備えて急いで作っていると聞いています」
エリンさんは、そう答えてきた。
その言葉に、私の胸中は複雑な感情が生まれる。
リースノット王国が強大になったのは、私が作り出した白色魔宝石と、そして地球から持ち込んだ多くの知識や技術の賜物だから。
それが、国力の増強だけではなく戦争にまで向けられてしまうのは、やはり内心として穏やかには居られない。
「そう……、ですか……」
「ユウティーシア様が、お気になされることではありません。それに憂慮される事態にはならないと思いますので!」
「そうなの?」
「はい。以前は、数千人の人が壁作りに参加していたんですよ?」
「――え?」
「それが、数か月前から減り始めて、いまでは数百人まで減っていますから! それに、ユウティーシア様がスペンサー様と、ご結婚されれば、民も安心すると思います」
「そ、そうね」
リースノット王国とアルドーラ公国が、軍事的・経済的に問題を抱えていたのは知識としては知っていたけれど……。
実際に見て感じるのとは大違いで……。
自分が今までしてきた行いは本当に正しいのか? 正しかったのか? と自問自答してしまう。
だからこそ、アルドーラ公国の大公であるフィンデル大公も、私とスペンサー王子に関して話を伺いたかったのかも知れない。
それは国の安全保障上極めて重要なことなのだから。
何故なら、軍事に国力を割くということは――、争いにより技術は発展するかもしれないけど経済的にはマイナスになってしまうのだから。
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