公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

記憶と思いと(7)




「足手まといって……」
「まだ魔法も満足に使えないんだろう? なら、足手まといの何者でもない」
「――ッ!?」

 カベル海将様の言葉に私は思わず唇を噛みしめてしまう。
 言い方はきついけど、言っていることは間違っていないだけに反論が出来ない。

「今まで一人で何でも解決できてきたお前からしたら誰かに任せるのは苦痛かも知れないが、少しは他人を信じて待つことも大事だ」
「分かっています」

 そんな事を言われなくても分かっている。
 だから私はミトンの町で商工会議を立てたのだから。

「そうか……、なら後はプロに任せて待て」
「…………わかりました」

 私の腕を掴んでいた彼の手が離れる。
 先ほどまで座っていた椅子に座り私はダンジョン入り口の方を見る。
 
「ダンジョン内はどうなっている?」
「ダンジョン内は、見たことがない魔物で溢れ返っています。武器が通じません」
「武器が通じないだと? 魔法は?」
「魔法では多少ダメージが入っていますが、決定打にはなっていません」

 ダンジョン内から出てきた冒険者に冒険者ギルドマスターのグランカスさんが話かけて情報を聞き出しているのが見て取れた。
 ただ、あまり状況は芳しくはないみたいで。

「他の冒険者はどうしている?」

 グランカスさんの言葉に、私はハッ! として人数を数えていく。
 距離はあるけれど、身体強化魔法を使わなくてもこのくらいの距離なら人数くらいなら数えるくらいは出来る。

「カベル海将様!」
「ああ、半分も戻ってきてはいないな」

 彼の方を見て話しかけたと同時に答えが返ってきた。
 カベル海将様の表情は眉間に皺が寄っていて事の深刻さを物語っているよう。

「先行していたコルク・ザルトを初めてとするAランク冒険者と分断されました」
「なんだと!?」

 グランカスさんの言葉が辺りに響く。
 
「これは……、まずいな」
「――え?」
「グランカスの奴、戦力の一点集中による強行突破を考えてダンジョン探索をしたんだろうが、それが裏目に出ているな。今、戻ってきているのは恐らくBランク以下の冒険者達だろう。そうなると、救出のための戦力不足は否めないな」
「……カベル海将様」
「何だ?」
「現在の私の魔力は上級魔法師くらいまでには回復しています。上級魔法師は、冒険者ランクで言えば、どのくらいに当たるのですか?」
「それは……」
「Aランク冒険者より少し上あたりだな」

 いつの間にか近くに来ていたグランカスさんが答えてきた。

「そうですか……、それなら私もダンジョンに……」
「駄目だ!」

 強い口調でカベル海将様が私の言葉を遮ってきた。
 
「カベル海将様、今は緊急事態なのです。少しでも戦力が必要な時です」
「だから駄目だと言っているだろう? いまのお前さんの魔力は上級魔法師程度の実力しかないんだぞ? それを理解しろ。普段から上級魔法師クラスの力を持って冒険者として活動している人間と比べてお前は素人なんだ。魔力や魔法がいくら上級魔法師と肩を並べるくらいだとしても、それで行かせる訳にはいかない」
「――で、でも! 誰か助けを求めている人が居るかも知れない。だったら手遅れになる前に行かないと――」
「大局を視ろ。お前に何かあればリースノット王国が、どう動くのか! それを考えずに自分勝手に動いて取り返しがつかない事態になれば、どうなるか分かっているのか?」
「それは……」
「お前は、自分の立場を考えて行動する癖をつけろ。お前が自分で正しいと思って行動しても、結果が誤っていれば責任は別の者が取らされるんだぞ?」
「……はい」

 カベル海将様の言っていることは全部正論で間違っていないけど……。

「ユウティーシア様、何とか私とメリッサや無事な冒険者で救出に向かってみます」
「アクアリードさん……」
「そんな心配な顔をしないでください」

 そんなに私は不安そうな表情をしていたのだろうか?
 アクアリードさんは、私の頭を撫でながら静かに諭すように話しかけてきた。

「――な、なんだアレは!?」

 唐突にダンジョンの方から悲鳴が聞こえてくる。
 ダンジョンの中からは、生物とは全く異なる薄汚れた銀色のシルエットが姿を見せた。

「あれは何だ?」

 グランカスさんも、ダンジョンの中から出てきた物を見て茫然と呟いている。
 カベル海将様も他の脱出してきた冒険者も、その姿を見て固まっていることから見たことが無い物なのだろう。
 だけど……、私にはわかった。

 それは、アガルタの世界では本来存在しえない物。
 ――機械の化け物であった。




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コメント

  • クルクルさん/kurukuru san

    おーなんか凄いの出てきたな

    1
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