公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

記憶と思いと(6)





 何だかアクアリードさんが目を輝かせてダンジョン入り口の方を見ているけど、私としては、口調を含めて軽薄なクラウス殿下を思い出してしまい「うーん」と、思ってしまう。

「メリッサにアクア、お前達は冒険者が怪我した時のバックアップなんだから緊張感を持っておけよ?」
「「わかっています」」

 グランカスさんの言葉に二人の声が重なる。
 そんな二人を見ながら私は用意されていた椅子に座るとテーブルへ肘をつけた。

「どうした? 疲れているのか?」
「カベル海将様。ダンジョンの中に冒険者の人が入っていきましたけど大丈夫でしょうか?」
「――ん? ああ、そうだな」
「大丈夫だ。お前さんが心配することはない」

 グランカスさんが隣の椅子に座るとテーブルの上に用意されていた焼き固められた黒パンを引き千切り口に入れながら私を見てくる。

「ユウティーシア様。冒険者にはいくつかのランクがあるのはご存知ですよね?」
「ええ、グランカスさんより聞いておりますけど……」
「低いランクの内は、町の雑務などを熟しますが、ランクの高い冒険者になれば町の外で魔物の討伐やダンジョン内での魔石発掘などを行うようになります。その際に、魔物の討伐や罠などを見極める真贋が必要になってきますので、今回選ばれた冒険者なら問題なくダンジョンの探索は出来ると思います」
「選ばれた冒険者?」
「はい。少なくとも今回はBランク以上の冒険者が集められていますので問題ないかと――」
「そうなのね……。そういえば、メリッサさんとアクアリードさんって冒険者ランクって……」
「一応、エルノのダンジョンを攻略した功績と迷宮から出た武器を所持していますので私達は二人ともAランク相当の冒険者と言う事になっています」
「Aランクってかなり高いのよね?」
「はい。一応は、冒険者副ギルドマスターくらいには将来なれるかも知れません」
「まぁ、それはお前さんからのボタ餅ってのが大きいけどな!」

 私とメリッサさんが話をしていると、グランカスさんが横やりを入れてくる。
 
「そんな言い方……」

 あまりにも物言いが乱暴すぎる。
 もう少しオブラートに包む言い方があるのではないか? と私は思ってしまう。

「いえ、それは事実ですので……」

 メリッサさんは、グランカスさんの言葉に頷いているけど……。 

「だろう?」

 どうして殿方というのは、相手に配慮した言い方が出来ないのかしら? と思ってしまう。

「……グランカスさんは、少しデリカシーに欠けると思います」
「やれやれ!」

 私の言葉に彼は肩を竦めながら「冒険者は実力と実績が全てだぞ? 言葉を飾り立てても実力が足りなければ上のランクにはなれない。そして、メリッサとアクアリードは、お前さんが譲渡した武器で実力以上の力を手に入れている。そこをきちんと認識しておくことこそが大事だろう?」と、語ってくる。

「――で、でも!」
「ユウティーシア様、ギルドマスターは私達の事を思って言ってくれているのです。そして、それは間違っていません」
「……分かったわ」

 アクアリードさんの言葉に私は引き下がる。
 彼女達が納得しているなら……、釈然としないけど、冒険者ギルドには冒険者ギルドのルールがあるのだろう。

「何かあったようだな」

 ずっとダンジョン入り口の方を見ていたカベル海将様が口を開いた。

「そのようだな……」

 グランカスさんが立ち上がりダンジョンへと向かおうとした途端、爆発音がダンジョンの方から聞こえてきた。
 煙がダンジョン入り口から立ち込める。

「い、一体何が?」
「メリッサ、アクアリード。すぐについてこい」
「「はい」」

 後方支援のはずだった二人はグランカスさんと一緒にダンジョン入り口へと向かっていく。
 私もすぐに立ち上がりダンジョンへ向かおうとしたところで腕を掴まれた。

「ユウティーシア嬢、お前は行くな。足手まといになる」

 カベル海将様は、私の手をしっかりと掴んだまま語り掛けてきた。




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