公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

記憶と思いと(5)




「ユウティーシアは、ああ言う武器を見たのは始めてなのか?」
「はい」

 グランカスさんの言葉に私は頷きつつもコルクさんが手に持つ武器に目が釘付けになっていると言うか視線を逸らすことが出来ない。

「そうか。あれは神代文明時代に作られた武器らしい」
「らしい?」
「リメイラール教会が管理している物だからな。一応、コルク・ザルトはセイレーン連邦の冒険者ギルドに所属していることになっているが、本職は神殿聖騎士という肩書を持っている」
「そうなのですか」

 リメイラール教会は、設立がかなり古い教会組織で海賊が作った海洋国家ルグニカ以外の国家には、国教まで行かないにしろ信者はどこの国にも居ると教わった事がある。
 実際、リースノット王国でも国教ではないけれど王国民の1割は、リメイラール教会信徒だったはず。

 教典を覚えておいた方がいいとアプリコット先生から教わったことがあったけれど、書かれている内容は殆どが日本の神教に近い内容で、一神教ではなく多神教でありどちらかと言えば精霊信仰に近い感じであった。
 だからリメイラール教会が他国で問題を起こすことは少なく多くの国々に受け入れられているのだけれど……。

 ちなみに海洋国家ルグニカは、海の神ファフニールを崇めていることもありリメイラール教会とはあまり仲が良くない。
 遥か昔には、リメイラール教会が崇めている神々と海の神ファフニールの間で戦いがあったとされている。
 
「ああ、何の目的で来たかは知らないが冒険者として入国したってことは、エルノの町のダンジョンに用事があったのかも知れないな」
「そうなのですか?」
「昔から、神殿聖騎士の修練所としても使われていたからな。あまり驚くべき事でもない」
「……なるほど」

 彼の言葉に頷いていると、コルクさんが手に持っていた武器の刀身が半透明な青色から濃い青色へと変化していくのが見て取れた。

「色が……」
「そろそろだな」
「そろそろ?」

 コルクさんが、剣を上段に構えたあと一気に振り下ろす。
 ダンジョンの入り口を守るように張られていた半透明な壁は、青い刀身と接触した瞬間に歪むと消滅する。
 その際に、一瞬だけだけど空間がズレたような感覚を覚えた。

「今のって……」
「詳しくは知らんが、奴の剣は魔法で張られた結界を切り裂く能力を持つらしい」
「……いまのが?」

 よくは分からなかったけど、コルクさんが剣を振り下ろした瞬間、迷宮の入り口が一瞬だけどズレたような気がした。
 それは結界を切り裂くとかそういう次元の話じゃないと思う。
 
「こんなもんでしょうかね?」
「すまないな。それで……」
「もちろん迷宮探索も手伝いますよ? ティアさんも一緒に行かないかな?」
「いえ。私は外で待っています」

 魔法が殆ど使えない私が行っても足手まといにしかならない。
 それにまた問題を起こしたらあれだし。
 あとは冒険者の方が100人近くいるのだ。
 彼ら彼女らに任せた方がずっといいと思う。

「「ユウティーシア様!」」
「アクアリードさんにメリッサさんもやっぱり参加していたのですね」

 私の問いかけに「はい」と答えてきたのはメリッサさん。
 彼女は、アクアリードさんと二人でダンジョン探索組の後方支援を担うらしい。
 やはりミトンの町からエルノの町まで護衛してきた疲れを考慮された結果らしいけど、少し不満そうであった。
 コルクさんは、私達を見たあと「また後でね」と呟くとダンジョン探索組に合流してダンジョンの階段を下りていった。

「ユウティーシア様。さっきのイケメンって誰ですか?」

 ダンジョン探索組が、ダンジョン内に入って一息ついたところで瞳を輝かせたアクアリードさんが話しかけてきた。

「コルク・ザルトさん。冒険者でダンジョンの結界を破ったのも彼よ」
「――え? コルク・ザルトって……、Sランク冒険者の?」
「そうらしいわね」
「い、いつ! お知り合いに!?」
「メリッサさん近い! 近いから! 昨日の冒険者ギルドで男性に絡まれているところをコルクさんが助けてくれたのよ。それで出会ったって感じかしら?」
「運命を感じてしまいますね!」





 

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