公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

商談(5)




 部屋の中に入ってきた日差しで目を覚まして瞼を開ける。

「カベル海爵様?」

 ベッドの横では椅子に座りながら目を閉じているカベル海爵様が居て目を閉じていた。
 やはり自分が差し入れたお酒で私が酔って倒れた事を気に病んでいたのかも知れない。
  
「……体の調子はどうだ?」
「大丈夫だと思います」

 カベル海将様の問いかけに答えながら体を起こす。
 掛け布団がズレると共に、自分が着ていた服が目に入る。
 服装は、シルクで編まれた肩紐の白のワンピース。
 私は、こんな服を持ってきてはいなかったので首を傾げてしまう。

「ああ、すまない。それは亡き妻の服でな。女性用の服だと、あとは給仕の者しかなかったのだ。もちろん着替えは私はやっていないぞ! メリッサとアクアリードが代わりにしてくれたから安心していい!」
「大丈夫です。カベル海将様は寝ている女性に対してご無体をされるような方では無いと信じていますから」
「――そ、そうか……。それよりも昨日の件だが詳細は後で詰めるとして受けたいと思う。奴隷制度は好ましくは無いと思っているからもあるが、今までは手をこまねいて見てきただけだからな。君のように行動に移すことはしなかった。君を見て私も君に協力をしたい」
「本当ですか!?」
「ああ。そのことで、今日の昼以降に話し合いの場を持ちたいと思っているのだが大丈夫だろうか?」
「はい! ぜひお願いします」
「それでは、君も着替えておくといい。服については、ここは妻の部屋だったから好きな服を使うといい。身長的には同じくらいだから問題ないだろう」

 問題おおありです……。

 女性の服は身長だけが合っているからと言って男性と同じように着られるとは限らない。
 この世界では殆どがオーダーメイド。
仕立て屋さんに服は頼むのが一般的で日本みたくフリーサイズというのがほぼ存在しない。
 寝間着くらいならゆったりとサイズを取って作ってあるから問題ないけど普段着だと色々と問題である。
 でも、それを殿方に言ってもご理解して頂くのは難しい。
 それに彼は亡き妻と言っていた。
 ここで断るのも失礼に当たる。

「ありがとうございます」
「それでは失礼する」

 カベル海将様が部屋から出ていく。
 扉が閉まったのを確認して私はベッドから降りて――。

「あっ……!?」

 体が一瞬ふらついてしまう。
 テーブルを掴んだのはいいけれど、テーブルの上に置かれていた花瓶が絨毯の上に落ちた。
 
「……ち、力が……、力が入らない……」
「どうかしたのか?」

 扉が音を立てて開くと同時にカベル海将様やメリッサさんが室内に入ってきた。
 部屋に入ってくるなり絨毯の上で座り込んで私の元へメリッサさんが駆け寄ってくる。

「ユウティーシア様、お怪我は?」
「いえ、少し体がふらついただけですので……」
「そうですか。やはり昨日のアルコールが抜けきっていないのでしょう」

 メリッサさんの手を掴みながら立ち上がるけど足元がおぼつかない。
 一人で立てないと困ることもあり身体強化魔法を発動させようと魔法公式を頭の中で思い浮かべて魔法を発動させる。

「――あ、あれ?」
「どうかしたのですか?」
「何でもないわ」

 メリッサさんの問いかけに答えながらも私は心境穏やかではなかった。
なぜなら、魔法が発動しなかったから。

 私の様子をただの二日酔いだと思ってくれたのか誰も追及してくることはなく部屋から出ていった。
 掃除は給仕の女性の方がしてくれたけど、私は自分の手を見つめながら空中に魔法陣を描いていく。
 もちろん発動させるのは水生成の魔法。
 生活魔法の一つであり基礎魔法の一つでもある水生成の魔法は私の魔力量ならば津波すら作り出す事が出来る。
 だからいつもは余分な公式を魔法陣に組み込んで空中に描いたあと魔法を発動させている。
 そうしないと一般人が使う魔法と同等まで魔法の威力を抑えることができないから。

「アクアウォーター」

 テーブルの上に置かれているグラスの中に水が作られるイメージで魔法を発動させたはずだけども魔法が発動しない。

「えっと……。そしたら……」

 今度は、一般の魔法師が使うアクアウォーターを発動させる。
 するとグラスの中に水が貯まっていく。
 作り出された水の量は、一般的な魔法師が発動させる際に生み出される水の量と同じだった。

「魔法力が弱まっている? 何故……」

 原因はお酒を飲んだ以外には考えられない。
 たぶんお酒が抜ければ魔法も使えるようになるはずだけど、これはまた面倒な事になりそうな気がしてならない。


 

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