公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

商談(1)




 旅はとても順調でエルノの町まで一週間かかる工程をスムーズに消化してしまった。
 そして現在は、エルノの町から少し離れた場所に馬車は停車しており私は中で吉報を待っている。

 アクアリードさんが、カベル海将とコンタクトを取りに行ってから1時間ほどが経過したところで馬が走る音が聞こえてきた。

「ユウティーシア様? どうかいたしましたか?」

 外を見ようと馬車の扉を開けようとしたところでメリッサさんが話しかけてくる。
 
「どうやら馬が近づいてきているようです。もしかしたらカベル海将かも知れません」
「――え! そんな音は……。あっ」

 どうやら彼女も気が付いたみたいで私よりも先に馬車から降りていく。
 私も馬車から降りようとするとメリッサさんが「ユウティーシア様は、公にエルノの町に来ていることにはなっていませんので馬車の中でお待ちください」と、語り掛けてきた。
 たしかに……。
 道中でも馬車の外に出た時は夜のみで昼間に外に出た時は本当に出なくてはいけない時くらいだった。
 仕方なく私は頷き馬車の中で待つことにする。
 しばらくすると外からメリッサさんやアクアリードさんの声――、それに混じって聞き覚えの無い男性の声が聞こえてきた。

「カベル海将様は、すぐにお会いしたいとのことです。私達が案内致しますので着いてきてください」
「分かりました。それにしても、ずいぶんと少ないのですね? それに冒険者が大半とは……」
「兵士を公に動かす訳にはいかないと。私以外は冒険者になります。その理由がお分かりで?」
「ええ。兵士だけだと住民に警戒を与えてしまうということですね。兵士が指示をして冒険者が魔物を倒すことは良くありますので、今回はその体裁を取ったということですか?」
「はい。体裁はあくまでもそのようになっております」

 そのあとは今後の行動の話をしていたけれど終わったようでメリッサさんが馬車の中に入ってくる。

「ユウティーシア様。カベル海様は、すぐにお会いしたいとのことです。町の中心部を通っていくとエルノの住民や他の領地の間者に気が付かれる可能性があるため外壁を一周して北側の港方向から入る形を取ります」

 彼女の説明に私は頷きながらもカベル海将がすぐに会いたいと言う言葉に心の中では何とも言えない気持ちになっていた。
 やはり手紙に書いた条項の一文が彼――、カベル海将の決断を促したのかも知れない。

 馬車は走り出す。
 馬車の左窓から見える外壁の高さは4メートルほどであったけれど、それは延々と続いているように錯覚を誘う。 
 これだけの外壁を作るのに、どれだけの労力を費やしたのかと思いを馳せながら見ていると馬車が一台辛うじて通れるくらいの門が視界に見えてきた。

 やはりというか馬車はその門へと方向転換する。
 壁と垂直に馬車を引いている馬が向いてしまった為、もう壁の方を見ることは出来ない。
 だけど……。

「あれは、冒険者なのかな?」

 少し遠くの平原に数人の影が見えた。

「ええ。方角からしてエルノの町――、ユウティーシア様が攻略した迷宮に向かっているようです」
「そうなの? しばらく迷宮は使い物にならないと聞いたのだけれど?」
「使い物にならないと言っても放置しておいていい物ではありませんので。何か起きてからでは遅いですから」
「……そうね」
「はい。だから定期的に手練れの冒険者を派遣して迷宮探索を冒険者ギルドは行っているのです。迷宮――、ダンジョンは衛星都市エルノの重要な収入源である魔石の採掘場でもありますから」
「採掘って……、魔物から手に入れるのよね?」
「迷宮が迷宮として存在している間は低層階層の地層から魔石が取れることもあります。魔物からだけではないのです」
「へー、そうなのね」

 面白いことを聞いた。
 それにしても迷宮って色々と面白そう。
 今度、潜ったら色々を調べてみたいかも……。




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