公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

思いのかたち(8)



 結局、ミトンの町を出たのはお昼を夕方近くになってしまい見送りをしてくれたのは、兵士さんだけで私が町から出るという情報は伝わってはいないようであった。

 ――カラカラカラ

 軽快な音が――、馬車を支える車輪の音が聞こえてくる。
 以前の幌馬車のガラガラという音とは全く違う。
 よってすぐに眠気が……。

「ユウティーシア様」
「ひゃっ! ひゃい!」

 半分、寝かけていたところでメリッサさんが私に話かけてきた。
 彼女は私の顔をジッと見てきていて――。

「どうかしましたか?」
「どうかしたってわけでもないのですけれど……」

 ハッキリとしない物言いに私は首を傾げる。
 二人して――、女同士で見つめあっていても何も意味はないので自分から話を切り出すことにした。

「そういえば、メリッサさんは髪を切られたのですね」
「――え? あ、はい。美容院というのがミトンの町で出来ていたので!」
「あー」

 そういえばレイルさんが何か町の経済を回すようなモノが無いのか以前に聞いてきたことがあった。
 殿方のことはお酒か女性か美味しいご飯でも提供する場所があれば問題ないと思っていたので、殿方の対策は簡単に建てられたけど……。
 女性に関しての経済対策は良く分からなかったので自分が普段から欲しいなって思っていたものをリクエストしたのだ。

 それが――、美容室とマッサージ店と可愛い洋服があるお店とかマニキュアとか化粧品の開発だったのだけれど……。
 まさか、私がミトンの町に居ない間に美容室を作っているとは予想外。
 でも美容室って普通は、美容師とか雇わないといけないから数年からの修行が必要だった記憶があったのだけれど――。
 私はジッとメリッサさんの髪を見る。
 髪の量が多いところはきちんと梳いてあるし膨らみも抑えられているし、何より毛先まできちんと整えてあるところがポイント高い。

「ふむ……」
「ユ、ユウティーシア様?」
「あっ、ごめんなさいね」

 気が付けばメリッサさんの髪を手で触っていた。
 慌てて離しながら。

「その美容室ってどこに出来たの?」
「えーと、町の西側の市場に入る前あたりにあります。たぶん行くとすぐに分かると思います」
「そうなの?」
「はい。なんでもアルドーラ公国のカリスマ美容師が出店したお店なので!」
「か、カリスマ!?」

 この世界にもカリスマ美容師っているのね――、と思わず心の中で突っ込みを入れながら自分の髪の毛を触る。
 そういえば……、私の髪の毛って生活魔法で傷んだところは修復して清潔にしてはいるけど、シュトロハイム公爵家で暮らしていた時と違って切っているのは私自身。
 
「えーと……」

 やっぱり女として身だしなみは気になるもので……。
 小物入れの中から手鏡を取り出す。
 この世界では手鏡はかなり貴重だったけれども商工会議の鍛冶職人の人に作ってもらったもので……。
 鏡に映った自分を見て、メリッサさんのように綺麗にカットされた髪ではないことに気が付く。
 そう、ほんの少しだけ綺麗にカットされていないだけ。
 所詮は素人の御仕事に変わりないわけで……。
 
「どうかしたのですか?」
「メリッサさん。お願いがあるのですけれど……」
「何でしょうか?」
「ミトンの町に戻ったら、案内してもらえますか?」
「どこをでしょうか?」

 ニコリと笑ってメリッサさんが答えてくるけど、この表情は絶対に私が行きたい場所を知っている!

「やっぱり商工会議に所属する者として、美容室で髪を切って――、じゃなくて見学……じゃなくて視察にいくべきだと思っているのです」
「ふふっ。そうでしたか」
「ええ? 何がそうなの?」
「いえ、以前のユウティーシア様とは少し雰囲気が違うかなと思っていたのです。その点はアクアリードも気が付いていたのですけれど。そうですか……、好きな男性でも出来たということですね? 女は好きな男性が出来ると変わると言いますから!」
「そんなじゃないから!」

 何をメリッサさんは勘違いしているのだろう。
 私は、町の代表の一人として女性らしくきちんとしておかないと思っただけだから。
 まったく……。
 それにしても地球にあった美容室みたいなモノがミトンの町に出来たのかな? と思うと、やっぱり女性としては少し嬉しかったりする。
 問題は込んでいるということだけど、そこは商工会議代表としての権利を行使すれば何とかなるでしょう!

 
 

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