公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

思いのかたち(3)




「それって……、商工会議のメンバーが血眼になって探している……」
「そうですか」
「ああ。ローレンシア大陸で大国アルドーラ公国が、わざわざ一地方都市と貿易協定を結んでくれる事が異常だと誰もが思っていたのさ」
「まぁ、そうなりますよね」

 人口200万人を抱える大国アルドーラ公国。
 ローレンシア大陸の南西において軍事国家ヴァルキリアスと覇を競うほどの国力を有しているが、その存在力が霞んだのはリースノット王国が地球の文明を利用して国力を短期間で増大させたにすぎないから。

「それで、大国アルドーラ公国は何を目的にエルノと貿易協定を結んだんだい?」
「……隠す必要はあまり無いと思います。むしろ、そろそろ他国にも情報は流れると思っていますので話ますが、簡単に説明するなら誰でも魔法師になれる物を私が作れるということです」
「――!? だ、誰でも魔法師に? 魔法師は、先天的な能力に左右されるものだと……」
「はい。基本的には、そう言う事になっています」
「それが……、誰でも魔法師になれるってことは……」
「はい。誰でも魔法を扱う魔力を自身の身に宿すことが出来るということです」
「…………俄かには信じがたい話だけれども、嘘は言ってはいないね」
「嘘をついても仕方ありませんので」
「なるほどね。それでアルドーラ公国は、海洋国家ルグニカに侵略と取られかねない危険性を孕んでまでミトンの町みたいな地方都市と貿易協定を結んだ訳だね。ようやく納得がいったよ」

 シェリーさんは大きく溜息をつくと「それで、ミトンの町に流れ込んできている物資は殆どアルドーラ公国の物だよね?」と確認の意味合いも込めて話しかけてきた。
 私は頷く。
 ここまで話したのだから隠す必要性はないのだから。

「……と、なると……、アルドーラ公国はアンタの作る物を引き換えに物資を送ってきてくれる。つまり、そういうことになるんだね」
「そうなりますね」
「――でも、いいのかい? アンタはリースノット王国の公爵家の長女だったんだろう? いま行っている行為は、アルドーラ公国に力を与えていることに……」
「たしかに、国力の面で言えばリースノット王国はアルドーラ公国よりも遥かに上になっていました。ですが、それはアルドーラ公国から造反者を出す事に繋がったのです。何故なら、この時代において力こそが正義なのですから。アルドーラ公国でも、リースノット王国が脅威と見られており、憂慮した貴族がセイレーン連邦の一部の国々と手を結んで不穏な活動をしていたそうです。隣国の政治状態が不安定になれば、それはリースノット王国にも必ず及んできます。ですから私は、アルドーラ公国の国力を安定させることで、リースノット王国の経済を含めた政治を安定させようと思って行動しました。それに、アルドーラ公国も私の提案を受け入れないという選択肢は無いと思っていましたので……」
「そうなのかい」
「はい」
「事のあらましは理解したよ。でも、それだけではないと思っているんだけれど?」
「はい。シェリーさんには私の特異性を先に話したのは、私という人間が転生してきた異世界の住人であり強大な魔力を持ちリースノット王国だけではなくアルドーラ公国とも繋がりがあるということを知ってもらいたかったのです。そして……、ミトンの町で発生した原因不明の病は、私の魔力が関与しているのです」
「どういうことだい?」
「シェリーさんなら倉庫で見たことがあると思いますが、倉庫で仕事をしている妖精は私が居る時は存在しています。ですが、私が不在の時には妖精の姿は消失しているのです。おそらく私の推測ですが、大気に存在している魔力が、私の魔力と反応し飽和することで妖精が姿を現すと思っています。そして、強大な魔力は妖精を具現化させるだけでなく人間の体に悪影響まで及ぼしているということです」
「……それって……、原因不明の?」
「はい。私がエルノの町に行っている間に一時的に町には強大な魔力を持つ者がいなくなりました。ですから、病が感知したはずです。ですから……」
「つまり、アンタが町に居る事で原因不明の病が再発すると?」
「そういうことです」
「……それで――。そういうことかい。アンタは町を出て行こうと考えていたけれど、ユウティーシアという力が無くなればミトンの町は総督府スメラギに蹂躙されることになる。そうなれば多くの死人や怪我人が出ることになる。だけど……、王位争奪レースで勝って支配者側に回れば、アンタが居なくなってもミトンの町は存続できると考えたわけだね」
「そうなります」
「何て……」

 シェリーさんは、ポツリと呟きながら体を震わせ私の頭を撫でてきた。


 
 

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