公爵令嬢は結婚したくない!
波乱万丈の王位簒奪レース(19)
宿屋の入り口に近寄る――、すると何人もの男性が私へ視線を向けてきた。
その視線に含まれているのは好色であり、異性を……、性的にみる物で――。
「ユウティーシア様?」
「――あっ……」
殿方から、性的に女性として見られる事に慣れていない私は、無意識に私を案内してくれていたエルマーさんの手を握ってしまっていて。
そんな私とエルマーさんを見ていた殿方は、全員が視線を私の後方に向けると一斉に視線を逸らした。
「まったく! どうかしたのかい?」
宿から出てきたのは商工会議のメンバーの一人で娼館ギルドの長シェリーさんで胸元が開かれたドレスを着ている。
同じ女性から見ても彼女が着ているドレスは羞恥心を覚えるほど胸元が開いた。
そんな胸元を飾るのは赤く燃えるようなルビーであった。
彼女は、私を護衛していた3人の兵士に視線を向けたあと、私に視線を向けてくる。
すると近寄ってくると小声で「アンタが、こんなところにいるんだい?」と、聞いてきた。
私も彼女に合わせて小声で「銀髪の貴族女性が宿泊していませんか?」と、訪ねると彼女は一瞬だけ眉を動かす。
「着いてきな」
「はい。それでは、エルマーさんも一緒に――「それはダメだね」……え?」
「一応ね。アンタは、ミトンの町だけじゃなく周辺の村の人間からも小麦の女神と呼ばれているんだから、ここに男と一緒に入るのは不味いんだよ」
――なるほど。
つまり、彼女がわざわざ私に小声で要件を聞いてきたのは私の対面を気にした行為ということで。
「わかりました。エルマーさん、外で待機をお願いできますか?」
「ですが……」
エルマーさんは、眉間に皺を寄せながら納得いかない表情で。
「大丈夫です。商工会議のメンバーの娼館ギルドの長ですから、ご安心してください」
「わかりました。何かあればすぐにお呼びください」
「はい」
彼の言葉に頷きながら、娼館ギルドの長に連れられて娼館の中に足を踏み入れる。
足を踏み入れると分かるけど、床には高級な絨毯が敷かれておりいくつも照明が通路の壁に掛けられている。
私は、建物内に使われている照明器具を見ながら足を止めていた。
「あら? これを知っているのかい?」
「……」
まさか、リースノット王国が販売している魔宝石を利用した照明器具――、魔道具がミトンの町に存在しているとは私は思っていなかった。
たしか魔道具関係の貿易取引は制限をしていたはず。
リースノット王国外に販売しているとは言っても、こんな場末の宿屋に置いてあるとは夢にも思っていなかった。
「それとも、自国の製品が小さな町の娼館で使われているとは思っていなかったのかい?」
「いえ、そうでは無いのですけれども」
「いいわよ。大国リースノット王国の三大公爵家の次期当主だからね。気になったんだろう?」
「――はい」
私は、正直に答えることにした。
別に隠しておく必要は無いからであったけれど、彼女は意外そうな表情で私を見てくる。
「驚いたよ。まさか、そんなに正直に答えられるとはね。商工会議で話している時とは別物じゃないかい」
「別物というか、隠す必要が無いことを隠しても仕方ないと思っただけなのですけど」
「ふーん」
娼館ギルドの長は、私の言葉に興味深そうな表情をすると階段を上がっていく。
私も彼女の後を追って階段を上がっていくと何人もの男性と擦れ違う。
その都度、好色な視線を向けられる。
殿方の瞳には、私を完全に女性を見てきていた。
性的な感情が含まれているのが直感的に分かってしまい何となく居心地が悪い。
「アンタ、男の人が苦手なのかい?」
「――え?」
顔を上げると、私を案内していた女性と目が合った。
彼女は足を止めて私をジッと見てくると小さく溜息をつく。
「殿方が苦手というか……、好色な目で異性の方から見られるのは少し……」
「少し?」
「……」
「なるどね。アンタ、今までロクな男と出会ったことが無いだろう?」
「――!? そ、それは!?」
「なるほどね。リースノット王国の王家が2度に渡って公爵家長女相手に問題を起こしたと噂を聞いたことがあったけど本当だったんだね」
彼女の言葉に、クラウス王子やエイル王子にされた事が思い出される。
「ごめんよ、何か辛いことがあったんだね? 大丈夫かい?」
「あ、あの――」
気が付けば、シェリーさんに抱きしめられていて。
「こんなに体を震わせて――」
彼女の言葉に私は自分がようやく体を震わせていたことに気が付いた。
私の頬に彼女の指が添えられる。
涙も流していたみたいで――、まるで私の反応が男性に酷い目に合わされた女性そのものように感じられてしまう。
戸惑っていた私を見ながら彼女は「すぐに合わせようと思ったけど、少し落ち着いてからじゃないとダメみたいだね」と、語り掛けてきた。
その視線に含まれているのは好色であり、異性を……、性的にみる物で――。
「ユウティーシア様?」
「――あっ……」
殿方から、性的に女性として見られる事に慣れていない私は、無意識に私を案内してくれていたエルマーさんの手を握ってしまっていて。
そんな私とエルマーさんを見ていた殿方は、全員が視線を私の後方に向けると一斉に視線を逸らした。
「まったく! どうかしたのかい?」
宿から出てきたのは商工会議のメンバーの一人で娼館ギルドの長シェリーさんで胸元が開かれたドレスを着ている。
同じ女性から見ても彼女が着ているドレスは羞恥心を覚えるほど胸元が開いた。
そんな胸元を飾るのは赤く燃えるようなルビーであった。
彼女は、私を護衛していた3人の兵士に視線を向けたあと、私に視線を向けてくる。
すると近寄ってくると小声で「アンタが、こんなところにいるんだい?」と、聞いてきた。
私も彼女に合わせて小声で「銀髪の貴族女性が宿泊していませんか?」と、訪ねると彼女は一瞬だけ眉を動かす。
「着いてきな」
「はい。それでは、エルマーさんも一緒に――「それはダメだね」……え?」
「一応ね。アンタは、ミトンの町だけじゃなく周辺の村の人間からも小麦の女神と呼ばれているんだから、ここに男と一緒に入るのは不味いんだよ」
――なるほど。
つまり、彼女がわざわざ私に小声で要件を聞いてきたのは私の対面を気にした行為ということで。
「わかりました。エルマーさん、外で待機をお願いできますか?」
「ですが……」
エルマーさんは、眉間に皺を寄せながら納得いかない表情で。
「大丈夫です。商工会議のメンバーの娼館ギルドの長ですから、ご安心してください」
「わかりました。何かあればすぐにお呼びください」
「はい」
彼の言葉に頷きながら、娼館ギルドの長に連れられて娼館の中に足を踏み入れる。
足を踏み入れると分かるけど、床には高級な絨毯が敷かれておりいくつも照明が通路の壁に掛けられている。
私は、建物内に使われている照明器具を見ながら足を止めていた。
「あら? これを知っているのかい?」
「……」
まさか、リースノット王国が販売している魔宝石を利用した照明器具――、魔道具がミトンの町に存在しているとは私は思っていなかった。
たしか魔道具関係の貿易取引は制限をしていたはず。
リースノット王国外に販売しているとは言っても、こんな場末の宿屋に置いてあるとは夢にも思っていなかった。
「それとも、自国の製品が小さな町の娼館で使われているとは思っていなかったのかい?」
「いえ、そうでは無いのですけれども」
「いいわよ。大国リースノット王国の三大公爵家の次期当主だからね。気になったんだろう?」
「――はい」
私は、正直に答えることにした。
別に隠しておく必要は無いからであったけれど、彼女は意外そうな表情で私を見てくる。
「驚いたよ。まさか、そんなに正直に答えられるとはね。商工会議で話している時とは別物じゃないかい」
「別物というか、隠す必要が無いことを隠しても仕方ないと思っただけなのですけど」
「ふーん」
娼館ギルドの長は、私の言葉に興味深そうな表情をすると階段を上がっていく。
私も彼女の後を追って階段を上がっていくと何人もの男性と擦れ違う。
その都度、好色な視線を向けられる。
殿方の瞳には、私を完全に女性を見てきていた。
性的な感情が含まれているのが直感的に分かってしまい何となく居心地が悪い。
「アンタ、男の人が苦手なのかい?」
「――え?」
顔を上げると、私を案内していた女性と目が合った。
彼女は足を止めて私をジッと見てくると小さく溜息をつく。
「殿方が苦手というか……、好色な目で異性の方から見られるのは少し……」
「少し?」
「……」
「なるどね。アンタ、今までロクな男と出会ったことが無いだろう?」
「――!? そ、それは!?」
「なるほどね。リースノット王国の王家が2度に渡って公爵家長女相手に問題を起こしたと噂を聞いたことがあったけど本当だったんだね」
彼女の言葉に、クラウス王子やエイル王子にされた事が思い出される。
「ごめんよ、何か辛いことがあったんだね? 大丈夫かい?」
「あ、あの――」
気が付けば、シェリーさんに抱きしめられていて。
「こんなに体を震わせて――」
彼女の言葉に私は自分がようやく体を震わせていたことに気が付いた。
私の頬に彼女の指が添えられる。
涙も流していたみたいで――、まるで私の反応が男性に酷い目に合わされた女性そのものように感じられてしまう。
戸惑っていた私を見ながら彼女は「すぐに合わせようと思ったけど、少し落ち着いてからじゃないとダメみたいだね」と、語り掛けてきた。
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