公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

波乱万丈の王位簒奪レース(16)




 レイルさんの言葉に、私は何と答えていいか迷ってしまう。
 そんな私を見て彼は顔を顰める。

「ユウティーシア、俺に何か隠していることがあるんじゃないのか?」
「何か隠していること?」
「王位簒奪レースの事と言い性急に物事を運ぼうとし過ぎじゃないのか?」
「……そんな風に見えますか?」

 私の問いかけに彼は頷いてみせる。
 そんな彼の様子に私は小さく息を吐きながら伸ばしている髪を指先で弄りながら考える。
 正直、私は自分の特異体質についてレイルさんに伝えていいのか迷っていた。
 でも、レイルさんに伝えておかないと私の力に頼った方針で国の運営を取りかねない。

「レイルさん……」
「話す気になったのか?」

 彼の言葉に私は頷く。

「ミトンの町で起きていた原因不明の病気に関してですが――」
「それは、もう解決したんじゃないのか?」

 私は否定の動作を見せながら言葉を選ぶ。

「解決はしていません」
「――それは……、どういうことだ?」
「それは……、病の発生の原因は私だったからです」
「お前が病の原因?」
「はい。私の膨大な魔力が周囲に放たれていて、それが人の体内に蓄積されたことで病が発生しているようなのです」
「ということは……、お前が居る限り病は再発するということか?」
「そうなります。ですから……」

 彼は私の言葉を聞きながら深く溜息をつくと額に手を当てていた。

「つまり自分が居たら町の人間に迷惑が掛かるから町を出て行こうと考えているのか? ――で、お前が居なくなると抑止力が無くなるから権力側に周り身を守ろうと考えていた訳か?」
「それもあります。それに元々、私は他国の人間が他所の国の政に関わるのは好しとは考えていませんでした。それに元々、商工会議を作ったのは、そこで暮らしている人々が自分達で町の運営をしてもらおうと考えていたからです」
「つまり議決権を作ったのは――」
「はい。レイルさんにミトンの方々、それに私が持つ議決権を合わせればアルドーラ公国も自分達の意見を無理に押し通すことは出来ないでしょう。実質、町の経営はミトンの町の方々という訳です」
「なるほどな。――で、話は戻すが」

 彼の言葉に私は頭を振りながら「それは、分かりません」と、呟きながらスカートの裾を両手で握り閉める。
 私を見ていた彼は、頭を搔く。

「分かってきたぞ。病の原因がお前だとしたら、リースノット王国に帰ることは自分の国に病を発生させることに成りかねないと考えているんだな? だから、帰りたくても帰れないと?」
「はい……」
「……そうか」

 彼は溜息をつきながら

「そもそも王位簒奪レースは、不確定要素であるお前がいることで現在は開始時期を引き延ばしているんだろう?」
「それですが……」
「何か心辺りがあるのか?」
「はい。気になっていたことがあるのですが、そもそも国の威信である王位簒奪レースを引き伸ばす事こそ他国に対して自国の威信を貶めることに繋がっているのではないでしょうか?」
「どういうことだ?」
「元々、王位簒奪レースの時期は決まっていたのでは無いかと言うことです。ただし、その時期と日程は対外的な物とは違うと言う点です」
「つまり、国内向けの日程と国外向けの日程は異なっていると?」
「はい。おそらく不測な事態に備えてだと思います。それに……、これは私の予測に過ぎませんが……」
「何を言いたいんだ?」
「レイルさんも言いましたよね? 王位簒奪レースは出来レースであると。そして王位簒奪レースは、船とお金を用意すれば誰でも参加することが出来ます。つまり開催時期が、きちんと分かれば――」
「そういうことか!」

 椅子からレイルさんは立ち上がると興奮気味に私へ視線を向けてくると部屋の中をゆっくりと歩きだす。

「つまり明確な時期を決めると資金を集めて船を用意した人間が王族になろうと王位簒奪レースに参加してくる可能性がある。そして、王位簒奪レースに勝てば支配者になることができる。だが、そうすると今の王族達が失脚する。だから……」
「はい。用意をさせないように国内向けと国外向けの王位簒奪レースの開始時期は異なっている可能性があるという事です」
「そうなると……」
「はい。王位簒奪レースを遅らせているとありますが……、元々からそのつもりだったのかも知れません。それに国の威信をかけてのレースでしたら、不確定要素である私の存在を無視してでもレース開催を強行したと思いますし……、そうでなかったら国の威信をかけて大規模な討伐隊が組まれている可能性もあったでしょう」
「だが、リースノット王国がお前の身柄を確保しようと海洋国家ルグニカの王族に接触している可能性だってあるんだぞ?」
「それなら、全ての予測が崩れてしまうのですけどね」

 

 


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