公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

波乱万丈の王位簒奪レース(13)




 答えに困窮していると、レイルさんが扉の方へ視線を向けた後に椅子から立ち上がった。
 
「レイルさん?」
「静かにしていろ」

 彼の言葉に、私は心の中で首を傾げながら頷く。
 商工会議に出席していたメンバー達に視線を向けられている間にレイルさんは扉に近づくと通路に繋がる扉を開けた。

「お、お母様。どうして、こんなところに……」

「――え、えっと……。偶然、通り掛かっただけなのよ」

 私の問いかけに、お母様は焦った様子で答えてきたけど私は溜息交じりに言葉を紡ぐ。

「お母様。私の後を着いてきたのですね」
「そ、そんな事ないわよ?」
「嘘をつかなくてもいいです。だって私の部屋から商工会議室が行われております部屋は、帰り道に通り掛かるような場所にはありませんから」
「……」
「それで、お母様は会議室で行われている話を聞いていたのですね?」
「そ、そうよ。娘が何をしているのか気にならない親が居ると思っているの?」

 逆切れ気味に、お母様が答えてくるけど本当、そういうのは止めてほしい。

「お母様。今は大事な話の最中ですので」
「分かっているわよ?」
「それなら、後で時間を作りますのでお父様のところへ戻っていてくれませんか?」
「わかったわ」

 お母様は、ニコリと微笑む身を翻して階段がある方へと通路を戻っていった。
 
「よかったのか?」
「仕方ありません。さすがに両親と仲が悪い所を商工会議の方々へ見せるわけにはいきませんので……」
「そうだな」
 
 私の言葉にレイルさんも頷いてきてくれる。
 技術革新に高位の魔法師を揃えたことで10年足らずで大国と肩を並べるまでに急成長したリースノット王国。
 その王国の公爵家の一つ。
 シュトロハイム公爵家と、私との仲が悪いとなったら要らぬ問題が置きかねない。
 本当に困った案件になってしまった。

「ところでシュトロハイム公爵婦人が、こんな所にどうしていたのだ?」

 物資などを担当するギルドの長が懐疑的な視線を私に向けてくる。
 すると鍛冶師を取り纏め役が「やはりユウティーシア殿を連れ戻しにきたのではないのか?」と呟いているのが聞こえてきた。

「だが、ユウティーシア殿はミトンの町の防衛力の要でもあるし……」
「そうであるな。それに、アルドーラ公国との交易もあるからな」

 どうやら他の商工会議の出席者も思うところがあるみたい。

「お母様は、私に会いに来たのです」
「やはりそうであったか」
「――ですが、ご安心してください。私がリースノット王国に戻る可能性はありませんので」

 私の言葉に、商工会議のメンバー達は怪訝そうな表情を見せてくる。
 彼らにしてみれば大国の公爵家令嬢と言う肩書きを持つ私が、この場に居るのだけでもおかしい事なのに、国元に戻らないとなれば不思議以外のナニモノでもないのかもしれない。
 それでも、お母様が姿を現して助かったのも事実であった。
 何せ色町の問題解決の案なんて私には出せないのだから。

「コホン。それでは別の議題を上げたいと思います」
「ユウティーシア?」

 レイルさんとは打ち合わせしていない内容の話であった。

「海洋国家ルグニカの問題についてですが、王位簒奪レースというのが存在していると言うのは皆様、ご存知かと思います」

 私の言葉に、皆さんが頷いてくる。
 
「正直なところ、アルドーラ公国からの物資輸入は一時凌ぎの物であるものは皆様ならご存知かと思います。そこで、王位簒奪レースに参加して優勝しようと思っています」
「ユウティーシア!?」

 レイルさんどころか全員が驚きの声を上げてきた。


 

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