公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

否定されし存在(13)




「原因が分かったのですか?」
「ああ、推測の域は出ないが……」
「それでも、分かるだけで十分です。それで、原因というのは――?」

 私の問いかけに、彼は周りを見渡す。
 連れて来られた患者は子供が多いことから、その親と思われる人の姿が多く見受けられる。

「どうかしたのですか?」
「……まだ憶測にしか過ぎないからな。患者に関しては時間経過で病が治ることはミトンの町で判明しているから、憶測をこの場で語るのも混乱を招くだろう?」
「――?」

 私は首を傾げる。
 別に憶測であっても親や冒険者が病に伏した子供たちを連れてきたのだ。
 少しでも情報を知りたいと思うのは人間の性だろうに。
 それなのに問題が無いからと、憶測を語るのはマズイと態々、大きな声でこれ見よがしに言う必要性が私には理解できない。

「そうだな……。とりあえず屋敷の方にある資料を見れば裏づけは出来るだろう。グランカス、この場を任せてもいいか?」
「――ん? ああ、構わないが?」
「え!? グランカスさん!?」

 冒険者ギルドのギルドマスターであるグランカスさんが近づいてきていることに私は気がついていなかった。
  
「よう! 手配は済んだからな。現場の様子を確認するために、俺も冒険者ギルドから来ていたんだよ」
「そうなのですか……」

 現場にトップの人間が来るとは、ずいぶんとフットワークが軽い責任者だと思ってしまう。
 まぁ、それでも組織のトップに立つ人間が来ているのだ。
 100人近い人間がいるけど、そのくらいは対応できるはず。

「ユウティーシア嬢、資料は膨大だ。君は文字の読み書きは出来るのだろう? すぐに来てくれ!」
「え!?」

 彼は、私の手を掴むと有無も言わさず歩きだしてしまう。
 仕方なく、私も彼の歩幅に合わせて着いていくことにする。
 まったく人使いが荒いにも程がある。
 でも、原因不明の病である解決方法の糸口を見つけられるなら、今後、同じようなことが起きることがなくなるようなら手伝うことも吝かではない。

「引いてくれなくても歩けます。急ぎましょう」

 ――でも……、無理に引かなくても理由があるのなら私は手伝うことは厭わない。

 彼は、「わかった……」と、言うと掴んでいた私の手を離すと歩き出してしまう。
 どうしてだが分からないけどカベル海将は急いでいるように見える。
 それに、どうしてだが違和感を覚えてしまう。

 彼のあとを着いていく。
 どうやら、北のほうへと向かっている。
 10分ほど歩くと、大きな屋敷が多く見受けられるようになってきた。
 一軒ずつの間隔が広く高級住宅地という感じで――。」

「ここが私の家だ」

 目の前には鉄製の高さ2メートルほどの門があり、兵士が2人立っていた。
 彼らはカベル海将の手振りに頷くと扉を開けていく。
 人が2人ほど並んで入れるほど扉が開いたところで、カベル海将が敷地内に入ってしまう。
 兵士たちから怪訝な目で見られたけど、私はあとを着いていく。
 門を入ると、道は右側へカーブを描いている。
 ただ、植えられている木々が多いこともあり先を見通すことが出来ない。
 体感的には1分ほどだと思う。
 カベル海将の背中を見ながら歩いていると、2階立ての西洋風の洋館が視界の中に入ってきた。

 西洋風の洋館は、リースノット王国内では、シュトロハイム公爵家の屋敷がある貴族街では普通に存在していた。
 でもルグニカ王国内に入ってからは、石を切り出して作り出した古代オリエント文明を色濃く反映させた建物ばかりだったので少し新鮮に思えてしまう。

「それにしても、ずいぶんと広い屋敷ですね――」
「これでも一応、海洋国家ルグニカの王族だぞ?」
「……そういえば――」

 とても王族とは思えない振る舞いをしていたから、失念していたけど彼も海洋国家ルグニカの王族の血を引いている支配者だった。
 屋敷の扉を彼が開ける前に、扉が開くと黒い燕尾服を着た男性が姿を現した。

「カベル様、よくぞご無事で――」
「マルス、息子は?」
「カーネル様は、数名の……カベル様を襲った兵士を連れて南へと向かったと報告がありました」
「なるほど……、おそらくだがスメラギに向かったのだろうな」
「おそらくは、そうかと――」
「あの……」

 とりあえず身内のゴタゴタは私が居ない所で話し合ってほしい。
 巻き込まれそうな予感しかしないから。
 私の言葉に、マルスと呼ばれた執事が私をつま先から頭のてっぺんまで見てくると「カベル様、奥方様が亡くなられてから久しいですが、若くはないですか?」と、カベル海将に語りかけていた。

「そういった仲ではありませんから!」

 考えるよりも先に私は否定していた。

 



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