公爵令嬢は結婚したくない!
否定されし存在(11)
カベル海将を連れてキッカさんの酒場に到着すると何人もの屈強な男性が酒場の中に入っていくのが見えた。
「ここでいいのか?」
「はい……そのはずですけど――」
私は首を傾げる。
店の壁には穴が開いていて、しばらくは休業ということだったから休憩場所として選んだというのに、何人もの人間が出入りをしていると、疫病か病気に関しての問題についての話し合いが難しくなる。
「どうして建築ギルドの人間が出入りしているんだ?」
「建築ギルド?」
私は、カベル海将の言葉に首を傾げながらも、彼の後を追って店の中へと足を踏み入れる。
すると、そこには冒険者ギルドマスターのグランカスさんと、酒場の主人であり女将でもあるキッカさんがドワーフらしき人と話しをしていた。
店の中に入ってきたことに気がついたグランカスさんは、私とカベル海将を見ながら「どうやら、話し合いは上手くいかなかったようだな」と、語りかけてきた。
まぁ本来ならホテルの方で話し合いが済む予定だったから、私とカベル海将が、ここに居る時点でお察しというのは見ての通り。
考えるまでもないという事だと思う。
「はい……」
「グランカス、手間をかけさせたな」
「いいや、問題ないといいたいが……」
そう言うと、グランカスさんが私のほうへ視線を向けてきた。
「総督府を破壊したことか?」
「ああ、このお嬢さんは、とんでもない魔法師のようだぞ? 話に聞いていた通りというか、それ以上だな」
グランカスさんの言葉に、カベル海将は「それほどなのか?」と私を見てくる。
それと同時に小さく溜息をつきながら、「それは、この店を破壊したことも含めてか?」と、問いかけてきた。
グランカスさんは彼の言葉に首を縦に振るうと、それを見ていたカベル海将は肩を竦めながら近くの椅子に座りこむと私にも座るように視線で訴えかけてきた。
彼の勧めに私は無言で頷くと椅子に座る。
「さて、何から話をしたらいいのだろうな」
「……とりあえずです私の話を聞くというのはどうでしょうか?」
「貴女の話からか? 君は現在、ミトンの町と、総督府エルノの町で起きている共通の病について聞きたいのだろう?」
「はい!」
「そうだな。まずは病のことに関してだがミトンの町で疫病が発生したのは何時からなんだ?」
「――えっと……疫病というか病が確認できたのはここ一ヶ月以内です」
「ふむ……」
私の話を聞いたカベル海将は、顎に手を当てながら酒場の天井を見上げるようにして考えに耽る。
「潜伏期間などを含めると一概には言えないな、問題は同じ症状が、この町でも起きていることだ」
「つまり感染経路が存在していると?」
一体、誰が感染経路なのか私には想像もつかない。
もしかしたら、総督府スメラギが関与してきている可能性も……。
「感染経路は、君がスメラギ総督府のエメラスと戦ったときに集まった民衆経由か……それとも君と、警護をしていた冒険者どれかと言うことになるが……」
「はっきりとは分からないと?」
「そうなるな、これが船の上でなら絞り込めるんだが……君の魔法で治療などは出来ないのか?」
「私の魔法で……、それは難しいと思います」
「リースノット王国には貴族学院で魔法を教えているはずだが?」
「たしかに教えていましたが……それよりもカベル海将は、ずいぶんと他国の教育に精通しているのですね?」
私の問いかけにカベル海将は「一応、私も国王選定からは外れてしまったが王族の一人だからな」と答えてきた。
「なるほど……、つまり他国の情報収集はしていらっしゃるということですか……」
「そうなるな。……そういえば、グランカス。以前、報告を受けていたエルノのダンジョンでのモンスター数の増加についてはどうなった?」
「そこは、お前の前に座っているお嬢さんが迷宮攻略をしてくれたから解決してくれたぞ?」
「なに?」
カベル海将は、驚きの声と同時に「それは本当なのか?」と私に問いかけてきた。
「はい、一応……話の流れというか、そんな流れで――偶然、攻略したというかなんと言うか……」
「そ、そうか――」
「攻略したら不味かったですか?」
「本来なら攻略をされるとダンジョンとして機能するまで数週間から数ヶ月かかるが、今回は君が攻略してくれたからダンジョン外に異物として私や息子が外に輩出されたのだろう。だから、攻略したことに関しては何も言うつもりはないし、感謝している」
「それは良かったです」
私は、カベル海将に言葉を返す。
その後に、グランカスさんのほうを見る。
「そういえば、建築ギルドの方が来ているということは――」
「ああ、こちらの依頼をきちんとこなしてくれたからな、店の修理費は冒険者ギルドで引き受けることになった」
「そうですか……」
そうすると、とりあえずキッカさんの酒場については問題ないということになる。
あとは――。
「さて、まずは病気に関してユウティーシア嬢、君が対応できないなら私が治めている町でも、ミトンの町と同じことが発生している以上、調べる必要が出てくるだろうな」
「そうですね……」
「グランカス、冒険者ギルドに依頼をしたい」
「別に依頼はいいが、金はもらえるんだろうな?」
「ああ、総督府の方については後で建物を建築する費用をお嬢さんに請求することにして、依頼料は屋敷にあるはずだからな」
カベル海将は、自信満々言っていたけど、フラグぽいなと私は見ていた。
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