公爵令嬢は結婚したくない!
否定されし存在(6)
「本当ですよ? ね? メリッサさん……」
私は、メリッサさんの方へ会話を振る。
すると、ギルドマスターであるグランカスさんは、メリッサさんの方へと視線を向ける。
その目には、嘘は許さないという確固たる意志が宿っているように感じられる。
まぁ、私が感じているだけで、実際は違うかもしれないけど……。
そんな私の思惑は言いとして、グランカスさんは、メリッサさんを見ながら「本当なのか?」と問い詰めている。
メリッサさんは、グランカスさんの問いかけに「はい、たしかに……」と、答えていた。
「信じられん……、ダンジョン探索を依頼していたが……その日のうちに探索ではなく攻略をしてしまうとは――」
どうやら、迷宮もといダンジョン攻略は、グランカスさんにはショックだったみたい。
これは、チャンスかも知れない。
「グランカスさん」
「何だ?」
彼の言葉に私は、ニコリと微笑み返す。
「ダンジョン攻略は大変でした……」
私は盛大に溜息をつきながら、体をふらつかせる。
そして近くに立っていたメリッサさんに抱きついた。
「ごめんなさい、ダンジョン攻略で疲れてしまって……」
私は額に手を当てながら大げさに周囲に、私がダンジョンを攻略したんですよ! と宣伝する。
すると、グランカスさんは額に青筋を立てながら「立ち話もあれだ。詳しく話を聞きたい」と言って、私達をキッカさんのお店の中へと誘ってきた。
「――で! お前の望みは何だ?」
私達がテーブル席に座ると同時にグランカスさんは話かけてくる。
どうやら、ダンジョンを攻略したという情報を無意味に流していない、何か理由があるのでは? と思ってくれたようで安心した。
「そうですね、お願いがあります」
「お願い?」
私は、キッカさんが主である酒場の修理が終わっていないことに小さく溜息をつく。
おそらくだけど、グランカスさんはキッカさんに、まだお金を払っていない。
それ自体は別に、どうでもいい。
問題は、彼が約束を違える可能性があるということ。
今回、お願いしたいことは、その約束を違えられたら困るのだ。
「はい。こちらでカベル海将を保護いたしました」
「本当か!?」
性急なグランカスさんの問いかけに対して、私は首肯する。
「そうか……、それは、よかった。ご無事で、本当に……」
「それでお願いなのですが……」
「何でも言え。衛星都市エルノを救ってくれたんだ。冒険者ギルドマスターとして、君の要求には、できるだけ答えよう」
「本当ですか!」
「ああ、男に二言はない!」
「別に男に二言はどうでもいいので! 冒険者ギルドマスターとしてお約束いただけますか?」
「――ん? あ、ああ……、別に構わないが……」
「よかったです……本当に、よかったです……」
「何かあるのか?」
私の様子に、グランカスさんが眉を痙攣させて語りかけてくる。
「はい、総督府を破壊したのは私ではなくカーネルということで口裏を合わせて頂けませんか?」
「――何?」
私のお願いにグランカスさんが、眉を顰める。
「どうして、そのようなことを?」
「いま、ミトンの町では疫病が流行っています。その治療法や対処法についてカベル海将の知識が必要なのです」
「なるほど……。つまり、総督府を君が壊したのが露呈した場合、協力を得られなくなる可能性があると……、そう考えているわけだな?」
「そうです。お願いできますか?」
グランカスさんは、少し考え込んだあと「それは難しいな」と、答えてきた。
「どうしてですか?」
「総督府は、神代文明時代の遺物と言われているんだ。どんな魔法でも衝撃でも破壊することができない。そう言われていた。もし、破壊できる方法があるなら、それは帝政国と戦うときの力として使われるだろうし、追求も激しくなり隠し通せないだろう」
「なるほど……、つまり強い力を手にいれるために、非人道的な行為で情報を得る可能性も捨てきれないと――。……そういうことですか?」
「そうなる」
「……」
彼の言葉に私は無言になる。
エルノの町――そこに蔓延する疫病対策にはカベル海将の力が必要不可欠。
どうしたらいいものか……。
「ただ――」
「ただ?」
グランカスさんは、私が迷い考え込んでいると代案とばかりに語りかけてきた。
「ここの総督府を破壊した謎の人物が居たということにすればどうだ? 君は、その人物を追ってきたということにすれば……」
「それだと、少し動機が薄いような……」
「問題ない。君は小麦の女神様という名前で有名だろう? だったら――、世界を混沌に陥れる魔王を倒すために追い詰めたが、後一歩のところで逃げられたということにすれば……」
「そういうことですか……。木を隠すなら森の中と言うことですね?」
「ああ、神代文明時代の遺跡を破壊したのは魔王ということにして、女神である君が対処したということにすれば……」
「つまり、たくさんの町の人が総督府崩壊を見ていた場面を、小麦の女神が町を救った場面ということで話を摩り替えればいいということですか?」
私の言葉に、グランカスさんは頷いてきた。
たしかに、一時の恥を耐え忍べば、それで上手くいきそうな気がしないでもない。
むしろ最善な策なような気がする。
私が女神ということにすれば、積極的にカベル海将も協力してくれるはず。
「分かりました。それでお願いします」
「分かった。すぐに手配しよう」
グランカスさんは立ち上がると、建物の裏手から出ていった。
おそらく話を通してくれるために出ていったのだろう。
「これで、なんとかなりますね」
「本当に良かったのでしょうか?」
「私達に悩んでいる余裕はありません」
そう、今でも病に苦しんでいる人がいるのだ。
早く対応しないといけない。
そんな時、キッカさんと目があった。
彼女は、疫病神でも見るような嫌悪した目で見てくる。
私は、何かしたのだろうか?
胸に手を当てても、自分がキッカさんに迷惑を掛けたことを思い出せない。
「メリッサさん、何か良く分かりませんが、私達はキッカさんに嫌われてしまっているようですね」
「色々とありましたから……」
私の言葉にメリッサさんは、溜息をつきながら同意してきてくれた。
私は、メリッサさんの方へ会話を振る。
すると、ギルドマスターであるグランカスさんは、メリッサさんの方へと視線を向ける。
その目には、嘘は許さないという確固たる意志が宿っているように感じられる。
まぁ、私が感じているだけで、実際は違うかもしれないけど……。
そんな私の思惑は言いとして、グランカスさんは、メリッサさんを見ながら「本当なのか?」と問い詰めている。
メリッサさんは、グランカスさんの問いかけに「はい、たしかに……」と、答えていた。
「信じられん……、ダンジョン探索を依頼していたが……その日のうちに探索ではなく攻略をしてしまうとは――」
どうやら、迷宮もといダンジョン攻略は、グランカスさんにはショックだったみたい。
これは、チャンスかも知れない。
「グランカスさん」
「何だ?」
彼の言葉に私は、ニコリと微笑み返す。
「ダンジョン攻略は大変でした……」
私は盛大に溜息をつきながら、体をふらつかせる。
そして近くに立っていたメリッサさんに抱きついた。
「ごめんなさい、ダンジョン攻略で疲れてしまって……」
私は額に手を当てながら大げさに周囲に、私がダンジョンを攻略したんですよ! と宣伝する。
すると、グランカスさんは額に青筋を立てながら「立ち話もあれだ。詳しく話を聞きたい」と言って、私達をキッカさんのお店の中へと誘ってきた。
「――で! お前の望みは何だ?」
私達がテーブル席に座ると同時にグランカスさんは話かけてくる。
どうやら、ダンジョンを攻略したという情報を無意味に流していない、何か理由があるのでは? と思ってくれたようで安心した。
「そうですね、お願いがあります」
「お願い?」
私は、キッカさんが主である酒場の修理が終わっていないことに小さく溜息をつく。
おそらくだけど、グランカスさんはキッカさんに、まだお金を払っていない。
それ自体は別に、どうでもいい。
問題は、彼が約束を違える可能性があるということ。
今回、お願いしたいことは、その約束を違えられたら困るのだ。
「はい。こちらでカベル海将を保護いたしました」
「本当か!?」
性急なグランカスさんの問いかけに対して、私は首肯する。
「そうか……、それは、よかった。ご無事で、本当に……」
「それでお願いなのですが……」
「何でも言え。衛星都市エルノを救ってくれたんだ。冒険者ギルドマスターとして、君の要求には、できるだけ答えよう」
「本当ですか!」
「ああ、男に二言はない!」
「別に男に二言はどうでもいいので! 冒険者ギルドマスターとしてお約束いただけますか?」
「――ん? あ、ああ……、別に構わないが……」
「よかったです……本当に、よかったです……」
「何かあるのか?」
私の様子に、グランカスさんが眉を痙攣させて語りかけてくる。
「はい、総督府を破壊したのは私ではなくカーネルということで口裏を合わせて頂けませんか?」
「――何?」
私のお願いにグランカスさんが、眉を顰める。
「どうして、そのようなことを?」
「いま、ミトンの町では疫病が流行っています。その治療法や対処法についてカベル海将の知識が必要なのです」
「なるほど……。つまり、総督府を君が壊したのが露呈した場合、協力を得られなくなる可能性があると……、そう考えているわけだな?」
「そうです。お願いできますか?」
グランカスさんは、少し考え込んだあと「それは難しいな」と、答えてきた。
「どうしてですか?」
「総督府は、神代文明時代の遺物と言われているんだ。どんな魔法でも衝撃でも破壊することができない。そう言われていた。もし、破壊できる方法があるなら、それは帝政国と戦うときの力として使われるだろうし、追求も激しくなり隠し通せないだろう」
「なるほど……、つまり強い力を手にいれるために、非人道的な行為で情報を得る可能性も捨てきれないと――。……そういうことですか?」
「そうなる」
「……」
彼の言葉に私は無言になる。
エルノの町――そこに蔓延する疫病対策にはカベル海将の力が必要不可欠。
どうしたらいいものか……。
「ただ――」
「ただ?」
グランカスさんは、私が迷い考え込んでいると代案とばかりに語りかけてきた。
「ここの総督府を破壊した謎の人物が居たということにすればどうだ? 君は、その人物を追ってきたということにすれば……」
「それだと、少し動機が薄いような……」
「問題ない。君は小麦の女神様という名前で有名だろう? だったら――、世界を混沌に陥れる魔王を倒すために追い詰めたが、後一歩のところで逃げられたということにすれば……」
「そういうことですか……。木を隠すなら森の中と言うことですね?」
「ああ、神代文明時代の遺跡を破壊したのは魔王ということにして、女神である君が対処したということにすれば……」
「つまり、たくさんの町の人が総督府崩壊を見ていた場面を、小麦の女神が町を救った場面ということで話を摩り替えればいいということですか?」
私の言葉に、グランカスさんは頷いてきた。
たしかに、一時の恥を耐え忍べば、それで上手くいきそうな気がしないでもない。
むしろ最善な策なような気がする。
私が女神ということにすれば、積極的にカベル海将も協力してくれるはず。
「分かりました。それでお願いします」
「分かった。すぐに手配しよう」
グランカスさんは立ち上がると、建物の裏手から出ていった。
おそらく話を通してくれるために出ていったのだろう。
「これで、なんとかなりますね」
「本当に良かったのでしょうか?」
「私達に悩んでいる余裕はありません」
そう、今でも病に苦しんでいる人がいるのだ。
早く対応しないといけない。
そんな時、キッカさんと目があった。
彼女は、疫病神でも見るような嫌悪した目で見てくる。
私は、何かしたのだろうか?
胸に手を当てても、自分がキッカさんに迷惑を掛けたことを思い出せない。
「メリッサさん、何か良く分かりませんが、私達はキッカさんに嫌われてしまっているようですね」
「色々とありましたから……」
私の言葉にメリッサさんは、溜息をつきながら同意してきてくれた。
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