公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

否定されし存在(2)

「ううっ……」

 私が膝の上に乗せている男性が意識を取り戻したみたいで、ゆっくりと瞼を開けていく。

「君は……?」

 見た目が50歳近くの男性は、私を見ると話かけてきた。

「私は、エルノの冒険者ギルドマスターから依頼を受けて、ダンジョンの調査に来たユウティーシア・フォン・シュトロハイムと申します」
「そうか……」

 彼は、小さく溜息をつく。

「私は、カベル・ド・ルグニカだ。エルノ総督府を取り仕切っていたが、バカ息子カーネルに迷宮に幽閉され――!? ここは……外……なのか?」
「はい、迷宮内で、倒れている姿を発見致しまして――」
「それで迷宮の外まで運んでくれたというのか?」

 私はカベルさんの言葉に頷く。
 下手に嘘をつくよりは、真実見のある嘘をついたほうがいい。
 あとで、メリッサさんとアクアリードさんには話を合わせてもらうように伝えておきましょう。

 私と話をしていたところで、帆馬車が近づいてくる。
 目の前で停まったところで、御者席からメリッサさんが降りると近づいてくる。

「ユウティーシアさま、カーネル・ド・ルグニカ以下、加担した男達を縛り上げて帆馬車の後ろに括り付けておきます!」
「後ろ? それでは引き摺ることにならないのか?」

 メリッサさんの言葉にカベルさんは、疑問を投げかけてくる。
 きっと盗賊も同じ対応をしたから、メリッサさんはカーネルや部下に対しても、それでいいと考えているのでしょう。
 それは非常に不味いです。
 一応、良家のお嬢様と言った感じで行こうとプランを考えているのですから、そんなことをしたら私の信頼度が駄々落ちになってしまいます。

「メリッサさん?」
「はい、何でしょうか?」
「カーネル様や、その部下の方達はいけない事をされましたが、荷馬車で引いていけば王族の方ですから、必ずあとで問題になります。私は、そんな酷い仕打ちを、したいとは思いませんので、縄で縛って帆馬車に乗せておくだけでいいです」

 私の言葉に、メリッサさんが「――え!?」と言いながら動きを止めていた。
 そして私のほうをみると「ユウティーシア様で、間違いないですよね?」と、何のための確認なのだろうか問いかけてきた。

 目の前の私が何に見えるのだろうか?
 私は、普段から、こんな感じの人ですけど……。
 少しだけ、王族の人前では博愛精神を見せただけ。

 そう、よくある例の奴である。

 家にゴキブリとか出たら、彼氏にゴキブリが出て台所にいけない! など、虫が苦手アピール。つまり、清純な可愛い女の子アピールをしているに過ぎない。

「何を仰られているのか分かりかねますが、ユウティーシアですわ。悪人と言えど、同じ人間ですので、敬意を持って対応してくださいね」
「「ええー……」」

 私の説明にアクアリードさんとメリッサさんが驚きの声を上げてきた。

「あのユウティーシア様が? 悪人に人権は無い! を地で行くユウティーシア様が?」

 アクアリードさんが、何故か知りませんけど私のことを悪魔か何かのように言っている。
 まったく、そんな言い方をされるといつも私が悪いことをしているように聞こえるので、本当にやめてほしいですね。

「――なん……だと!?」

 メリッサさんと言えば驚きのあまりに武器を落としていた。
 まったく、少しは物を大事にしてほしいものです、
その魔法剣いらないようでしたら、私に譲ってくれてもいいのですよ?

「エルノの兵士を全員……ふがふが」

 私は、膝枕していたカベルさんの頭を丁寧に編んだ草枕の上に乗せると、メリッサさんが不謹慎なことを言おうする目に後ろに回りこんで口元を手のひらで押さえた。

「メリッサさん、少し黙っていてください。黙ってないと大変なことになりますよ?」
「あ、はい……」
「どうかしたのかね?」

私がメリッサさんとアクアリードさんと会話をしていると、カベルさんが話かけてくる。

「いえ、何でもありません」
「そうか……。すまないが肩を貸してはもらえないだろうか?」
「はい!」

 私はカベルさんに肩を貸すと彼が立ち上がるために手伝った。





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