公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

在り得るべきモノ

「やれやれ……仕方ないですね――」

 私は小さく息を吐きながら、頭の中で細胞単位で強化していくように
魔法式をくみ上げていく。
 そして膨大な魔力にものを言わせて身体強化の魔法を発動。

 腰から剣――形状からしてブロードソードを抜き放ち、走りよってきた兵士の刃を素手で掴む。
 手のひらから血が滴り落ちると、兵士は一瞬だけ愉悦な表情を見せるけど――。

「な!? 刃が――」
「どうした!」
「びくともしません!」

 兵士が、どんなに柄に力を入れても、刀身の部分は私の皮膚を一枚切り裂いただけで、それ以上切り裂くことは出来ない。
 何故なら、私は身体強化魔法を発動すると同時に、自身の肉体に細胞増殖を促すように回復魔法を展開しているから。
 常時、肉体というか細胞が高速で修復している以上、どんなに切れ味のいい武器であっても、細胞増殖速度を越えることが出来なければ、防御を突破することは理論上不可能。

 ただし――。
 それは普通の人間では不可能な方法。
 何故なら人の細胞増殖限界数は、テロメアにて決められているから。
 私は、そのテロメアを魔力で無理矢理補充しながら、回復魔法という細胞増殖を発動させている。
 つまり、私の魔力が尽き無い限り私の守りを突破できない。

「さて――。正当防衛ということで――」

 私は、素手で掴んでいた兵士の刀身を握り砕くと、砕かれた破片は、床の上に散らばった。

「ば、ばけもの!」
「化け物って――」

 私は、反論しようと一瞬、考えたけど……。
 たしかに彼らから見たら化け物かも知れないと思い直し口を閉じた。

「戦力の差はご理解いただけたと思いますが、まだ私と戦われますか?」
「――くっ!? 覚えておれ!」

 カーネル・ド・ルグニカと告げてきた青年は、そのまま建物から兵士を連れて出て行ってしまった。
 しばらくして外から笛の音が聞こえてくる。

「……カベル海将の居場所を言ってから逃げてくれればよかったのに……」

 まったく、少しはこっちの身にもなってもらいたいものです。
 仕方なく建物の中を見ていく
 いくつもの部屋があるのは分かる。
 1階から5階までは階段、廊下、通路と日本のオフィスビルと変わらない作りになっていて、やはりというか、壊れた様子や掛けた場所などは見当たらない。
 問題は――。

「これは、どういうことなの?」

 私は、パーテーションのように区切られている部屋を見て眉を潜める。
 使われているパーテーションは木材で作られているのが理解できた。
 そして、何よりも年季が入っているからか、ところどころ凹みや摺り傷が見当たるのだ。

「もしかして、この部屋だけでなく建物全体で使われているパーテーションは、この建物とは違う技術……いまの時代に生きている人間が作ったものなの?」

 私は一人呟きながら考える。
 この世界では明らかにオーパーツとも言える、エルノの総督府として使われている建物。
 そして、年季を感じさせる部屋の敷居パーテーション。

 あとの時代の人間が手を加えたと思うのが妥当だと思う。

「そうなると……、私は頭を振るう」

 一瞬、地球の未来かと考えてしまったけど、あまりにも突拍子すぎる。
 何故なら、シュトロハイム公爵家で暮らしていたとき、あまり鮮明ではないと言っても世界地図を見せてもらったことがあったから。
 地図を見ても、それは明らかに地球の地図とは異なっていた。
 それに、もし大陸が移動した後の事とは言っても、この世界アガルタの世界地図に描かれている大陸図と現代地球の地図では、まったく大陸配置が違う。
 いま、私が存在しているアガルタの世界は一つの大陸として存在している。

 もし、地球の大陸が全て一箇所に集まり過去に存在していたパンゲアと同じ超大陸を形成したとしても、それは何億年も後の話だ。

「たしか、地球の医学会発表では、男性が生まれる遜色体の数が、近年へっていると聞いたきがする。たしか数百万年後には男は生まれてこないと、発表があったはず……。そう考えると――」

 唇に人差し指を当てながら考える。
 どう考えても、地動説と地質学から考えても現在の私が住まうアガルタのような大陸形成には数億年かかる。数百万年で遺伝子の限界を超える人間が生きている可能性は非常に低い。
 それでも……。

「明らかに、地球の文明の影響を受けた建築様式にしか見えない――」

 考えれば考えるほど分からない。
 無理矢理にでもカーネルを捕まえて話を聞いたほうが良かったのかも。

「今更言っても始まらないですか――」

 次々と部屋の中を見ていくけど、めぼしい物は何もない。
 際どい服装をした若いメイドさんしか見当たらず、まったく収穫といったものは無かった。
 建物から出たときには、すでに日は沈みかけていて――。
「思ったより時間が掛かってしまいましたね」

 とりあえずカーネルが命令を下していたみたいだし彼が逃げ出したのなら、しばらく指揮系統も崩れるはずだし、警備が無い宿屋でもゆっくり休めるかも知れない。

 


 
 

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