公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

出張手当はつきますか?(7)

「まぶしい……」

 私は、口元に手を当てながら欠伸する。
 昨日は、一日、帆馬車に揺られていて何もすることが無かった私は、妖精さんを召還して弄って遊んでいた。
 おかげで、帆馬車の中は妖精さんでいっぱい。

「――って!? いっぱい? どうして、こんなにいるの?」

 私は、帆馬車の床で寝ている40匹近い妖精さんに思わず突っ込みを入れてしまう。
 昨日の呼んだのは一匹だけのはずだったのに、何時の間に、こんなに増殖したのか突っ込みどころが多すぎて困る。

「とりあえず、床に転がっている分は、端っこに寄せておこっと」

 私は、帆馬車の中に置かれていた箒を手に持つと床を掃いていく。
 すると、妖精さん達が床の上をコロコロと転がっていき、一角に纏まったところで箒を片付ける。

「ユウティーシア様、起きられましたか?」
「――えっ? あ、はい……」

 箒を片付けたところで、外から声が聞こえてくる。
 私が返事を返すと、外から2人の女性が顔を見せた。

 一人は、褐色の肌を持つ女性で、茶色い髪色に青い瞳と、ラテン系を思わせる表情をしていてメリッサという名前の戦士さん。
 もう一人は、透き通るような白い肌と青い海のような髪色に灰色の目の色をした20歳くらいの女性であるアクアリードさんで、狩人らしい。
 二人とも、元は衛星都市エルノの冒険者ギルドで働いていたらしいけど、私が巻き起こしたゴタゴタで、ミトンの町から中々出られず、困り果てていたらしい。
 何せ、滞在してるだけで手持ちの路銀が尽きてしまったらしいから。
 町から町に移動するには、基本的に乗り合い馬車を使う。
 ただ、高位の冒険者だと自前の馬車で行動したりするらしい。、
 彼女達は、冒険者になって、まだ1年ということもあり、まだ駆け出しらしい。
 それでも、衣食住が、ほぼ完備されていた私とは違う。

 彼女達は、衛星都市エルノから、ミトンの町までの商人を護衛するだけの力はある冒険者であって、旅の基礎知識も持っているのだ。
 極めつけは同じ女性であるということ。
 この世界では、護衛が男であった場合、護衛対象とあんなことやこんなことになることもあるらしく、そうことを危惧したレイルさんが気を使って彼女達を選んだと、メリッサさんは言っていた。
 この世界の、守秘義務はどうなっているんだろう? と心の中で突っ込みを入れていたけど……まぁ、それは仕方ない。
 何せ異世界だもの。 
 日本の企業と同じ守秘義務を求めてもしかないし。

 私は、彼女らに案内されて帆馬車から降りる。
 昨日は、夜ということもあって気がつかなかったけど、辺りは見渡す限りの草原。
 草原と言っても、草の長さは数センチしかない。
 それに、なんと言っても、とても寒い。

「思ったより冷えますね……」

 私の言葉に、彼女らは頷くと、一人は火に薪を放って火の回りの地面に木の棒を刺していた。
 よく見ると、木には白いモノが巻きつけられている。
 おそらくだけど、あれはパンな気が……。

 アクアリードさんは、串を刺し終わったみたい、
 そんな彼女に、「アクア、馬に水をやっておいてくれないか?」と、メリッサさんは語りかけていた。「――う、うん……」とメリッサさんの声が聞こえてきたけど、何かあまり乗り気じゃなさそう?

「そういえば、付近に水場は見当たりませんが?」

 私は近づいてアクアリードさんに話しかける。

「――は、はい! この付近には川や湖はありませんから……。魔法で水を出して与えないと……」
「そうなんですか?」
「はい……ですけど……」

 アクアリードさんは、言いにくそうにしている。
 私は首を傾げていると。

「私、村では一番の魔法使いって言われていたんですけど……」
「そうなんですか?」

 彼女は、自分で狩人と言っていたからレンジャーか何かだと思っていたけど、まさか魔法師だとは思わなかった。
 魔法師って杖を使って魔法を使うもの! とウラヌス公爵が言っていたから。
 そこまで思ったところでようやく気がつく。
 彼女の腰に小ぶりの杖が括りつけられていることを。
 注意してみないと気がつかないなんて……。

「あ、あの……はずかしいので離れていてくれませんか?」
「大丈夫です! 私も魔術には興味がありますので!」
「――そういう意味ではないんですけど……」

 怯えた様子でアクアリードさんが、腰の杖を手に取りながら私に話しかけてきた。
 そして、諦めたかのように小さく溜息をつくと魔法を発動させるために、詠唱を始める。
 空中に魔法陣が展開されていく。

 私は、魔法陣を見ながら首を捻る。

「あの、アクアリードさん。その魔法陣の組み方少しおかしいですよ?」
「――え? あ、はい? ……で、でも……これって魔法帝国ジールの偉い学者さんが作った魔法陣ですし……」
「そうなんですか?」
「はい……」

 私がウラヌス公爵と作り出した水を作り出す魔法。
 それは私の超大な魔力を抑えて現実的に使えるように加工する魔法公式であり魔法陣。
 少しでも破綻しているなら、私の魔力に耐え切れず魔法陣が崩壊。
 ウラヌス公爵邸を80回くらい水没させた結果できた魔法陣であり実績は確かなんだけど……。
 魔法帝国ジールと言えば、この世界アガルタに置いて先進的な魔法技術をもつ大国。
 そんな国が作った魔法陣が、おかしいとは思えないんだけど……。

「私も、少し魔法を習っていますので良かったら試してみたらどうですか?」
「――え!? いいんですか?」
「もちろんですよ!」

 私も、ウラヌス公爵が作った魔法陣と詠唱が、どのくらいの効果があるのか気になるし……。


 

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